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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ 大道芸人編  作者: トモサン


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35歳のシンデレラ 大道芸人編 10

が、


 私は、答えんかった…


 「…」


 と、返事をしなかった…


 すると、


 「…どうしました? …矢田さん?…」


 と、アムンゼンが、聞いた…


 が、


 それでも、私は、答えんかった…


 「…矢田さん?…」


 アムンゼンが、聞く…


 が、


 私は、


 「…誰のことだ?…」


 と、言った…


 「…どうしたんですか? …矢田さん?

 今朝、なにか、悪いものでも、食べたんですか?…」


 「…なんだと? …悪いものだと? …オマエ、どうして、そう思うんだ?…」


 「…だって、ボクが、こうして、矢田さんの名前を呼んで、挨拶しても、返事をしないし、なにか、今朝、悪いものでも、食べたのか? と…」


 アムンゼンが、熱心に聞く…


 が、


 私は、そのアムンゼンを相手にしなかった…


 「…知らんな? …誰だ? …オマエは?…」


 「…そんな矢田さん、ボクです、アムンゼンです…」


 「…そんなヤツは、知らんさ…第一、私は、矢田さんじゃないさ…」


 「…そんな…」


 「…サングラスをした、私が、どうして、矢田さんだと、思うのさ?…」


 私が、自信たっぷりに言うと、なぜか、この保育園に通う園児たちが、私とアムンゼンの周りに、集まって来た…


 「…矢田ちゃん…矢田ちゃん…」


 と、私の名前を呼びながら、集まって来た…


 「…矢田ちゃん…今日は、なに? どうして、アムンゼンと、ここで、漫才をしているの?…」


 私の周りに、集まった園児のひとりが、言った…


 私は、なぜ、私だと、バレるのか?


 正直、不思議だった…


 なぜ、サングラスを、かけているにも、かかわらず、私だとバレるのか?


 不思議だった…


 だから、


 「…どうして、私を矢田だと、思う?…」


 と、その園児に聞いた…


 途端に、


 「…だって、矢田ちゃん…胸が大きいし、なにより、アムンゼンと、朝から、漫才をしているのは、矢田ちゃんぐらいしか、いないもの…」


 「…なんだと?…」


 「…それとも、コント?…」


 別の園児が、言った…


 私は、わけがわからんかった…


 そして、そんなことを、話している間にも、大勢のひとたちが、私たちの周りに集まって来た…


 まるで、芸能人か、なにかが、やって来たようだった…


 が、


 その中心は、私だった…


 この矢田トモコだった…


 大勢の園児たちが、


 「…矢田ちゃん…矢田ちゃん…」


 と、私の名前を呼びながら、私の周りに、集まった…


 そして、その中には、このセレブの保育園の関係者たちもいた…


 「…矢田さん…おはようございます…今日は、一体?…」


 私は、もはや、この状況では、矢田トモコではないと、言えない状況に追い込まれていた…


 だから、仕方なく、自分から、サングラスを外して、


 「…今日は、マリアの保護者として、やって来たのさ…」


 と、告げた…


 「…マリアちゃんの?…」


 「…そうさ…マリアの母親は、忙しいから、今日、動物園に行くことが、できんのさ…だから、私が、頼まれて、来たのさ…」


 私は、言って、これまで、私が、乗って来た黒いベンツを見た…


 運転席に座って、ハンドルを握るバニラは、すでに、私同様、黒いサングラスをかけて、無表情だった…


 そして、私に続いて、いつのまにか、マリアも、クルマから、降りていた…


 「…今日は、矢田ちゃんが、ママの代わりなの…」


 と、私の隣に来て、告げた…


 途端に、なぜか、歓声が、上がった…


 「…ウソ? …今日、矢田ちゃんが、来るの?…」


 とか、


 「…ホント、今日、矢田ちゃんと、遊べるんだ?…」


 とか、


 「…動物園に行くより、矢田ちゃんと、ここで、遊びたい…」


 とか、言う声が、聞こえてきた…


 正直、私には、わけがわからんかった…


 なぜか、私は、この保育園の園児たちに、人気がある…


 だが、なぜ、こんなにも、人気があるのか、わからんかった…


 いくら考えても、さっぱり、わからんかった…


 すると、この目の前のアムンゼンが、


 「…そうですか…」


 と、したり顔で、言った…


 「…今日は、矢田さんが、マリアの保護者ですか?…」


 と、いかにも、わかったような表情で、言った…


 私は、頭に来たが、なにも、言わんかった…


 なにしろ、相手は、サウジの王族…


 サウジアラビアの実力者だ…


 外見は、誰が、見ても、ただの3歳児だが、それは、小人症だから…


 本当は、30歳…


 しかも、頭も抜群に切れる…


 陰では、アラブの至宝と呼ばれるアラブ世界の実力者だ…


 が、


 誰が、どう見ても、ただの3歳児にしか、見えない(笑)…


 だから、アムンゼンの、言い方に、私同様、マリアも反感を持ったのだろう…


 「…アムンゼン…アンタ…そんな偉そうな言い方は、止めなさいと、いつも、言っているでしょ?…」


 と、マリアが、アムンゼンに怒った…


 「…ちょっとぐらい、偉いからって、そんな言い方をしちゃ、ダメ!…」


 マリアがアムンゼンを叱った…


 途端に、アムンゼンが、


 「…わかったよ…マリア…」


 と、まるで、マリアのご機嫌を取るように、言った…


 傍から見ていて、思わず、吹き出しそうだった…


 実は、このアムンゼンは、マリアに首ったけ…


 ホントは、30歳の大人のくせに、3歳のマリアに首ったけだ…


 だから、ホントは、ただのロリコンオヤジかも、しれん(爆笑)…


 が、


 それを、知るのは。この矢田と、この矢田を含めた数人のみ…


 が、


 普段は、口が軽い、この矢田も、この件に関しては、誰にも、話していない…


 なぜなら、このアムンゼンが、怖いからだ…


 こんな3歳児の外見にしか、見えないが、本当は、アラブ世界の実力者…


 このアムンゼンが、本気になれば、この矢田など、簡単に、この世から、オサラバだろう…


 それが、わかっているから、このアムンゼンには、逆らえん…


 逆らえんのだ…


 が、


 そうは、言いながらも、実は、結構、このアムンゼンを軽く、見ていたというか…


 結構、上から目線で、接していた…


 しかし、このアムンゼンは、決して、怒らなかった…


 それは、おそらく、この矢田が、変に、このアムンゼンに、丁重に接すれば、実は、このアムンゼンが、大人であることが、周囲にバレてしまう…


 それを、恐れているのかも、しれんかった…


 だから、この矢田が、アムンゼンに大きな態度をとっても、アムンゼンは、なにも、言わなかった…


 それよりなにより、このアムンゼンが、一番恐れること…


 それは、このアムンゼンが、本当は、子供でないことが、バレることに違いなかった…


 このアムンゼンは、何度も言うように、ホントは、30歳にも、かかわらず、外見は、3歳にしか、見えない…


 小人症だからだ…


 が、


 アムンゼンは、その外見を、デメリットではなく、メリットとして、使っている…


 3歳児になりすまして、このセレブの保育園に通っている…


 それは、セレブの保護者の情報を得るため…


 この保育園に通うセレブの子供たちは、皆、この日本に在住する、世界中のセレブの子弟たち…


 つまり、このセレブの子弟の親たちが、おおげさに言えば、世界を動かしている連中のひとりというか…


 ハッキリ言えば、権力者だ…


 だから、この保育園に通うことで、その権力者たちと、知己を得ることができる…


 知己を得る=仲良くなることができる…


 それが、3歳児にしか、見えない外見を使ったメリット…


 そして、同時に、このセレブの子弟たちを、有事の際には、アムンゼンの盾にできる…


 これは、どういうことかと、言えば、例えば、このアムンゼン目当てに、どこかのスパイが、このセレブの保育園にやって来ても、他のセレブの子供たちに紛れて、逃げることが、できるからだ…


 このセレブの保育園に通う国の子供たちは、さまざま…


 人種は、さまざま…


 日本人は、ほとんどいない…


 だから、肌の色が、若干、日本人と違う、このアムンゼンも、この中では、目立たない…


 要するに、木を隠すのは、森の中と、いうヤツだ…


 だから、目立たない…


 だから、仮にアムンゼンを誘拐しようとしても、すぐに、アムンゼンに気付かない…


 似たような園児は、多数いるからだ…


 そして、このアムンゼンが、このセレブの保育園に身を隠す最大の理由…


 それは、有事の際に、この保育園の他の園児たちを、自分の盾に利用するためだ…


 これは、どういうことかと、言えば、仮にどこかの国のテロ組織が、このアムンゼン目当てに、このセレブの保育園に侵入したとする…


 が、


 何度も言うように、このセレブの保育園は、世界中のセレブの子弟が、集まっている保育園…


 仮に、テロ組織が、アムンゼン目当てに、侵入して、このセレブの保育園に立てこもったりすれば、当然、このセレブの保育園に通う、他のセレブの子弟の親たちが、怒り出す…


 自分の属する、組織…


 国であったり、著名な多国籍企業を動かして、このセレブの保育園にたてこもったテロ組織を排除しようとするだろう…


 つまりは、このアムンゼン一人の力ではなく、このセレブの保育園に通う子供たちの親たちの力を借りることができる…


 セレブの子弟の親たちを利用することができる…


 それが、このアムンゼンの最大の狙い…


 アラブの至宝と呼ばれた男が、この日本で、自分の身を守るために、考えだした、究極の方法だった…


 一言で、言えば、ずる賢い(笑)…


 狡猾…


 まさに、狡猾の極みだった…


 が、


 その3歳児にしか、見えない、その姿からは、とても、想像ができない…


 こんなにも、頭が、いいことが、想像もできない…


 そして、それが、このアムンゼンは、誰よりも、わかっている…


 だから、それを、利用している…


 だからこそ、このアムンゼンは、狡猾…


 実に狡猾だった…


 そして、私が、そんなことを、考えていると、


 「…そうですか? …今日は、矢田さんが、このマリアの保護者代わりですか?…」


 と、アムンゼンが、腕を組んで、したり顔で、言った…


 「…ということは、今日は、一日中、矢田さんと、いっしょに、いるわけですね…」


 「…そうさ…」


 「…これは、楽しみな一日になりそうです…」


 アムンゼンが、腕を組みながら、大人のように、言った…

 

 途端に、隣にいる、マリアから、


 「…アムンゼン…偉そうな真似をしちゃ、ダメ…さっきも、言ったでしょ!…」


 と、怒った…


 その言葉を聞いて、アムンゼンの態度が、まるで、青菜に塩のようになった…


 「…わかったよ…マリア…ゴメン…」


 すっかり、自信をなくした様子で、マリアに謝った…


 が、


 マリアは、許さんかった…


 「…いいえ、わかってない…わかっていれば、何度も、同じ態度を取らないはずよ…」


 マリアがキツイ口調で、言った…


 「…いい…今度、同じ真似をしたら、今日一日、口を利いてあげないから…」


 アリアが、宣言した…


 すると、アムンゼンが、


 「…わかったよ…マリア…マリアの言う通りにするよ…」


 と、必死になって、マリアのご機嫌を取っていた…


 その姿を見る限り、とても、アラブの至宝と呼ばれる男とは、思えんかった…


 アラブ世界のリーダーの一人とは、思えんかった…


 が、


 やがて、そのアラブの至宝と呼ばれた、このアムンゼンの真の実力を知るところになる…


 この矢田が、このアムンゼンといっしょに、大道芸人となり、水戸黄門ではないが、諸国漫遊の旅に出た中で、知ることになる…


 いかに、このアムンゼンが、この世界で、凄い権力を持っているか、知ることになる…


 ただの金色のロールスロイスから出てきた、成金に見間違う、男の姿ではない、真の姿を知ることになる…


 そして、それは、驚きだった…


 が、


 それ以上に、驚きだったのは、なぜ、この矢田が、猿の太郎と、このアムンゼンと、いっしょに、大道芸人への道を歩まなければ、ならんかったか、だ…


 世界中のセレブの子弟の集まった保育園に通うアムンゼンと、この矢田が、なぜ、猿回しにならねば、ならんかったか、だ…


 この世の中には、この矢田にも、わからんことがある…


 この矢田にも、解き明かせない謎がある…


 これも、また、その一つだった(涙)…


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