3話 再会
月一ぐらいではちゃんと更新したかったのに先月は書けなかったっていう後悔。
その少年は常に狙われていた――――。
「えーと……家族がいたり大切な人が居てまだ死ぬたくない人は先に言ってね、見逃してあげるから」
その少年は容赦がなかった――――。
「一匹の蟻を殺すのに一頭の象が全力で踏みつけるがの如し!」
その少年は強かった――――。
「あーあ、服が汚れちゃったや、また母さ……師匠にどやされるなぁ、そんで自分だったらとか自慢話になってドヤァされるんだよな……」
少年にはギャグセンスはなかった。
これがリアという暗殺者が集めたゼロという少年の情報、及び発言だった。
少年はすぐに見つかった、まさか自分の住む街の隣町にいるとは思っていなかったのだ、何せ出現情報はまばらで神出鬼没だからだ。
「ゼロ……」
尾行中の少年を物陰から見つめるリア、その目には懐かしき幼少時代の思い出が写っていた。
「ん? なんか用?」
リアは背後から聞こえる声に驚き振り返った、そこには先ほど……いや数秒前まで前方に居た少年が立っていた。
「あー驚いちゃってる? そりゃそうだよね、尾行してたら背後に居ましたとか洒落になんないよね……説明しよう! この僕、ゼロにはたくさんのトラウマがある! その一つに『見えない足音』ってのがあってだね、昔その道のプロから尾行されて、そのまま誘拐されたことがあってねその時のトラウマが音もなく相手の背後に立つっていう魔法になっちゃったんだけど……聞いてる?」
リアは呆然としていた、今の今まで過酷な訓練を積んできた自分の背後をこの少年は難なく取ったのである。
「あー、心ここにあらずって感じだね、今までの研鑽が水の泡って感じ? ごめんね、ここ数年ずっとこんな感じだったから流石にそういう気配とかわかっちゃうようになってね……それで君の雇い主は誰なのかな? 教えてくれるなら見逃してあげてもいいんだけど」
十年ぶりの再会である、ゼロはリアだとは気づいていない、リアは主を言えと言われて正気に戻る、今のリアはスティルの物だそれを簡単に言うわけにもいかない。
「言えないわ、そして私は貴方を殺すわ、ゼロ……」
「どうして僕の名前を? 外じゃ一度も名乗ったことないのに……ああ、後君じゃ僕は殺せないよ」
威圧、突如ゼロから放たれる圧倒的な威圧感にリアは格の違いを実感した……しかしそれでもやらねばならない、リアは意を決して『肉刻むナイフ』を発動させる。
『肉刻むナイフ』とはリアが受けた訓練の結果得たトラウマだ、抵抗できないように両手両足を縛られ、ナイフで切り刻まれるという訓練をリアは受けていた。
死なない程度に、傷が残らない程度ではあったが幼いリアには十分すぎる恐怖だった、トラウマはそういう幼いうちが植え付けやすいのだ。
『肉刻むナイフ』の斬撃がゼロに達しようとしたその時――――斬撃は何かにかき消され、ゼロには届かなかった。
「へぇ、君同族なのか……まさかあの日のアレから生き残れた子が居たなんてね、でも残念……同系統のトラウマを持つ相手にはそのトラウマは効かないんだ斬撃系のトラウマなら僕にだってあるから」
それならばとリアは自分が持てる全てのトラウマを発現させる……だが、全てがかき消された。
「無駄だよ……僕だって師匠に結構色々されたからね、ある程度のものなら効かないんだ、悪いね」
余裕のゼロに対してリアは戦慄し、涙を流した――――この十年の内に涙など枯れ果てたと思っていたがリアは自分がここで終わると気づくと自然と泣いていた。
そしてリアの胸には一つの思い出が蘇る、幼少の頃のゼロとの思い出だ……それが魔法の力で具現化する。
二人の周囲を走り回る幼き日の幻影、それを見たゼロは……。
「リ……ア……なのか?」
少年と少女は再びであったのである。