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気のせいだ

冬になると無性に中華まんが食べたくなる。


そう言うと学友に某コンビニのピザまんを勧められた。


コンビニとは安っぽい気もするがせっかくの勧めだ。


何でも、今はセール中で110円のところが20円引きで90円らしい。


生地が微妙にオレンジ色で僕は食べることを躊躇した。


「どうした? うまいぞ、それ」


付き人にも言われたがなんとなく食べる気が起きないのだ。


「良、食べていいよ。お金はいいからさ。食べたくないなら捨ててもいいし」


「食べ物を粗末にしちゃ駄目じゃないか。自分で買ったんだから責任持って食えよ」


そういわれても食べたくないものは食べたくない。


「いいだろ、別に。だって、なんだか奇抜な色だし……」


オレンジは嫌いだ。派手だし、目立つし。


「金持ちの言うことは違うね。オレは食べられれば何でもいいけどな」


良は僕が持っていたピザまんをぱくっと食べた。

よく食べられるものだ。


「チーズがとろとろでうまいのに―――好き嫌いしてると大きくなれないぞ」


「うるさいな、僕が何を好もうと好むまいと、良には関係ないだろう? 良は黙って僕の後ろにいればいいんだよ」


「はいはい、マイマスター。ご命令とあれば」


いつもは食い下がってくるくせに今日はやけに素直だ。


「それでいいんだよ」


良は僕の両親が心配してつけた僕のボディーガードだ。

武術の腕は立つし、気は利くし、話しやすいから、両親に感謝はしているが、なにぶんいろいろと口うるさい。

早く起きろだの、朝食は全部食べろだの、たまには車じゃなくて自分で歩かないと健康に悪いだとか。

とにかくうるさい。大きなお世話だ。


「お車が来ておりますよ。早く行きませんと、待たせてしまいます」


「分かってる」


この口調は嫌いだ。

丁寧に話しているように聞こえるけど、他人行儀で気に入らない。


「その話し方やめろ。気に障る」


「しかし……」


「僕の言うことが聞けないのか?」


「了解、マイマスター。これでいいんだろう?」


言い方がいちいち癪に障る。


「もういい、行くぞ」


「はーい」


良は僕の二歩後ろをついてくる。

僕はこの距離に良の壁を感じていた。

あんなに気さくなのに、軽いのに、僕には決して心を開いてはくれないのだ。


「香月お兄ちゃんお帰り、遅かったね~」


「ただいま、聖。いつもと変わらなよ」


可愛い弟の姿を見て微笑む。

ニッコリと笑う弟は本当に天使のように愛らしい。


「お兄ちゃんご機嫌悪いの?」


この弟は天使のようにほわほわしているくせに妙に鋭い。


「そんなことはないよ。さあ、お稽古に戻りなさい。華道の途中だろう?」


「はい、お兄様も後でおこしになるんですよね? 僕楽しみにしてます」


走り去っていく後ろ姿を見送って良に声をかける。


「下がっていいぞ、良」


「はい、マスター。また後で参ります」


イラッとして振り向くけどもうすでに良の姿はなかった。


僕の日常はつまらない。

朝から夕方までは進学校で学業に励み、夕方からは稽古が始まる。

華道、茶道、剣道、柔道。和から始まり、

乗馬、アーチェリー、語学、帝王学等々。


休み暇もなく稽古に明け暮れる。


「お疲れ様です、香月様。お夜食を用意しておりますよ」


「それやめろ、他人行儀でヤダ」


「はいはい、飯食うだろう? ついでやるから早く座れ。さめるぞ」


のそのそとベッドから這い出てイスに座る。


「どうぞ」


ほかほかと湯気が立ち上る器。


僕は箸を取って夜食を食べた。


「うまいか?」


「まあまあかな」


正直に美味しいとはプライドが邪魔して言えなかった。


「お前のまあまあはうまいって事だよな」


「なっ!!」


良の嬉しそうな顔に僕は―――


「いや、気のせいだ!」


胸が高鳴ったなんて、そんなこと……あるわけがない。

~続く~

初めての連載です。

あまり自身はありませんが、長い目で見守ってください。

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