第三話「第二の家族Ⅰ」
「うう~ん……。…………ん……んんっ??」
目を開ける。
装飾が施された天井、見慣れない窓、壁、そして天蓋つきのベッド。
ここはどこなのだろうか?少なくとも僕の部屋ではない。やたらと凝った装飾といい、天蓋付きのベッドといい、これじゃまるで中世の貴族の使う豪邸のようだ。
「僕は……」
状況を把握すべく記憶をたどるが、目の前のこの状況が何なのか全くわからない。
(たしか……女に襲われて……いつの間にか森にいて、そして怪我をして倒れて……)
(それから…………。んーーーー。だめだ。思い出せない。でも……、なんか聞き覚えのある声を聞いたような……)
「僕はどうなったんだ?ここはどこだ?」
ガチャ。
ドアが開く。するとーーー。
「おねえぇちやゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーん!!」
どどどどっ……だきっ。
ぎゅっ。
知らない女の子か部屋入ってきたと思ったら、僕に気づくとすさまじい速さでこちらへ走って来て、そして抱きつかれる。
「う、うわっ」
「お姉ちゃんっ!シーナお姉ちゃんっ!本当に本当のシーナお姉ちゃんだよね!」
いきなりかわいい女の子に抱きつかれ、かるくパニくる。きっと頬は熟したリンゴのように真っ赤っかになっていることだろう。
「お姉ちゃんっ!会いたかった!ずっと会いたかったんだからねっ」
少女はより強く僕を抱きつく。うっっ……ちょっと苦しい…………。
「ちょっ、ちょっと待って!苦しい……。離してお願い」
「どうしたの?お姉ちゃん?」
少女は抱きつく力を弱めるが、まだ抱きついたままだ。
「君はだれ?」
「?」
「お姉ちゃん私のこと忘れちゃったの?」
「いや、多分人違いだから」
僕は少なくともこんなかわいい女の子には見覚えがないし、それにぼくに妹はいない。仮にそうだとしてもお姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんだ。
「んーー人違い?そんなはずないよ。わたしがお姉ちゃんを見間違えるはずないよ。それにこのサラサラの髪、この匂い、抱き心地は間違えなくシーナお姉ちゃんだよ」
「僕は三谷海人だ。シーナじゃない」
「僕?何言ってるの?シーナお姉ちゃんはシーナお姉ちゃんだよ。間違いなくわたしのお姉ちゃんのシーナ・ウィンドル・ソフィネットだよ」
「だから違うって。それに僕は女の子じゃない。列記とした男だ」
「何言ってるの?お姉ちゃんは女の子だよ。誰がどう見ても男の子何かには見えないよ。ほらっ鏡」
その鏡に映るのは十歳?くらいの可憐な少女。
………………………………。
…………思い出した。
そう、僕は女の子になったのだった。小さい頃夢の中で会ったあの女の子。
僕の初恋の相手に。
「ほら、どこからどう見てもかわいい女の子。わたしの大好きなお姉ちゃん」
「…………………………」
ガチャ。
ドアの音がすると同時にメイド服を着た若い女性が部屋に入って来る。
「お嬢様どうかなさいました?何やら騒がしいようですが」
「リフィア!ちょうどいいところに来たわ。おねえちゃんが起きたんだけど、なんだか様子がおかしいの」
「様子がおかしいといいますと?」
「シーナおねえちゃんじゃないとか、男だとか、何だかよく分かんないこと言ってるの」
「でも、間違えなくシーナお嬢様にしか見えませんが…………。確かに最後にお会いになったときからあまり成長してように見えますが」
「だから違うって」
二人は僕の話に全く聞く耳を持たない。
「わたしもそう思ってたのよ。あれから三年も経ったのに、私より身長高かったのに、今じゃほとんど同じくらいだし…………。でもどうみてもシーナお姉さまに見えないでしょ」
「たしかにそうですわよね。……ちょっと記憶が混乱しているでしょうか?…………あっ!そうでした。お嬢様、シーナお嬢様の杖でお確かめになれば、はっきりするのでは?」
「だから……、僕は今はそのシーナていう女の子だけど本当は違うの」
「……あっ!……そうね。あれは決して本人以外には反応しない。所有者の姿かたちではなく、魂の波動を記憶していてそれに反応するから、所有者のシーナお姉ちゃん以外には絶対使用できないはず。リフィア、持ってきて」
「はい、お嬢様、わかりました。今、お持ちします」
リフィアというメイドの姿をした女性は部屋から出て行くと、二、三分後、なぜか宝石のようなものが収まったブレスレットを手に持ち帰ってきた。
「これがシーナお嬢様の杖です」
「……懐かしい……。シーナお姉ちゃんの…………」
「それが杖?ただのブレスレットにしか見えないけど……」
「それはまだ顕現してないからよ。さあお姉さま、それを利き手につけて、意識を集中して魔力を込めて。そうすれば杖が反応するから」
魔力?魔法が使えるってことか。僕はただの平凡な中学生で……そんなものは……
「なんだかよくわかんないけど、そうすれば僕は君のお姉さんのシーナ・ウィンドル・ソフィネットじゃないと証明されるんだな」
「反応しなければね。でもお姉ちゃんはシーナお姉ちゃんなんだから反応するはずよ」
言われた通りブレスレットを僕の利き手、左手につける。そうすると、体の奥底を不思議な力で満ちているような、何だか懐かしいような感覚がする。
「まさかな……」
これが魔力というやつか?仮にそうだとしても身体はシーナという少女のものでも、魂?は僕だし……。
「早く。お姉ちゃん」
「わかったよ……。意識を集中して……集中……」
なんだかさっきよりこの妙な感じが強くなってる?
「魔力を感じたらブレスレットに集まるようイメージして」
ブレスレットに…………。
さっきの感覚を高めて一か所に集まて、それを左手にはめたブレスレットのほうへ…………。
すると一瞬ブレスレットが光ったかと思うと、左手にずしりと重みを感じる。
「ん?…………えっ!?」
ブレスレットは違う重み。しかも自分の身長の三分の二ほどの長さを持つ金属製?の細長い棒状の物があった。
そして上のほうには大きな青い宝石がはめ込まれ、その周りには小さな同じく青い宝石がちりばめられ、金属?の部分に紋様が刻み込まれていた。
その宝石は独特だが人を魅了する美しい光り方をしていた。信じられないがエリスという少女の言っていた杖なんだろう。
「ほら、やっぱり反応したわ。これであなたはわたしのお姉ちゃん、シーナ・ソフィネットとに間違いない。そうでしょリフィア」
「はい、そうです。お譲さま。杖は所有者にしか出すことはできません。すなはちあなたはソフィネット家の長女シーナ・ウィンドル・ソフィネット本人です」
そっそんなはずは…………。この体は夢であったあの少女のもののはず。僕が本当にシーナという少女なのか……?
じゃあ三谷海人として記憶は何なんだ?この記憶は間違っているのか?
僕は誰なんだ?
「そんな、ぼくは…………。僕は三谷海人……。こんな杖知らない…………」
「杖が出現した以上、あなたは私のご主人さまシーナお嬢様に間違いありません」
「そうだよ。お姉ちゃん。きっと記憶ちょっとが混乱してるだけだよ」
「だから…………だから……。お姉ちゃんだよね。それとも……わたしのこと忘れちゃったの……?……うぐっ……」
」
少女は再び僕に強く抱きついてくる。少女のその天使のような可憐な顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら。
強く抱きつく。涙で濡らしたとても悲しそ顔を向けて、ギュッと手で掴み……。
既視感。
ずっと昔同じように誰かにこんな風に泣きながら抱きつかれたような…………。
「せっかくまた会えたのに……。……うぐっ……。あのとき死んじゃったと思って……でも……生きてるとわかって……、だから……うぐっ……」
「うっ……」
泣いちゃだめだ。
泣いている所なんか見たくない。
またあの天使のような笑顔を見せてほしい。
こんなに悲しんではいけない。この子は笑顔でいなくてはならない。
苦しい。胸がぎゅっと締め付けられる。
またこの子を悲しましたくない。
……お願いだ…………
「…………泣いちゃだめだ。……エ……リス……」
「…………えっ……今……わたしの……」
エリス?エリスって誰のことだ?この子の名前なのか?なら僕がそれを知っている?どうして…………。
「お姉ちゃっんっ!私の名前覚えててくれた。忘れてなかった。……うれしいっ」
「……君の名前?」
「そうだよ。私の名前。シーナお姉ちゃんの妹のエリス・ウィンドル・ソフィネットだよ。お姉ちゃん」
「ちっ違う。知っていたんじゃない。さっきリフィアっていう人がそう呼んでいたんだ」
「いえ、私は一度もエリスお嬢様のお名前を言っておりませんが」
「そんなはずは…………」
「好き。大好きお姉ちゃん……。会いたかった。ずっと……。今はちょっと忘れちゃってるかもしれないけど、いつかきっと思い出してくれる……」
「僕は…………」
わからない。だが、この少女のことは知っている気がする。それに彼女を見ていると胸の締め付けられ涙が出そうになる。
まるで、ずっと会いたかった大切な人に再び出会えたような。
なんかだんだん話が進むごとに文字数が多くなってるような……。
予定としては2000~3000文字ぐらいで週に1,2回ぐらい更新していくつもりです。
夏休みはもっと多くなるかも。
文章が下手ですが今後も読んでもらうと嬉しいです。