66【むかーしむかしから始まる異世界の真実】
大地の女神は白檀の香しい檜扇をすこし開いたり閉じたりしながら話し出す。
「お前さんは最近、この子らをはじめ、精霊たちとの付き合いが広がっておろうの」
「はい、ちっちゃい子たちはもちろん、ムーさんやクインビーも、皆さん仲良くしてくれます」
「うむ、そうして、もっと広げていってくりゃれ」
「精霊たちは、この世界そのものでもあるのだ。精霊をまとめて、この世界をうまく回すのは、神には出来ぬことゆえの」
「そうなんですか?よくこの子たちとも会話されていますよね」
「会話をしているだけじゃ。仕事を与えたりはできぬ」
「精霊たちが勝手にすることはあるがの」
二柱の女神がそう言いながら精霊ちゃんを指先で撫でている。
「精霊たちのネットワークを使いこなして、自然の様子を整えるのが元来、精霊王の務めだったのじゃ」
「それは、大変な仕事では」
「いや、そうでもない。精霊達は精霊王の頼みには素直に聞くものだから、彼が沢山をうまく纏める事に長けていると思っていたのじゃ。精霊たちには人のような醜い欲は無いからの。ほとんど。お主みたいなものじゃ」
今度は大地の女神さまが、俺の頬を撫でる。
おれは、欲はありますよ?美味しいものを食べるためには、暴走しちゃうもん。
「ほほほ」
今日のアティママ様は袖のない襦袢に透けるような薄絹を重ねた、涼しそうだが、腕や体のラインが分かるような、色っぽい平安風の装いだ。
「ある時から、この大地の人々が、つまり人間族や獣人族、エルフとかじゃな、が、同族同士で争ったり、他種族ともめたりし出したのじゃ。ある時というより、あ奴らが猿より高い知恵を付けたころからずっとじゃな」
「ふむふむ」
「それで、大勢を纏めることが得意そうに見えていた、お主の父を、エルフに変えて、まずはエルフの里がまとまるように押さえてみよと頼んだのじゃ」
なんと、母さんとイチャイチャしたから怒られたわけじゃなかったんだ。
「まあ、人たちが自然を壊す勢いで争っているときに、何をやっとんのじゃと切れかけた勢いはあったがの」
やっぱり怒られてんじゃん。
「ほほほ」
「じゃが、可愛そうなことをしたと今は思っておる」
「人々の争いを仲裁するのは、あの子が精霊王と片手間に御せるほど素直にはいかなくて、とうとう、精霊王の称号を捨てて、一国の王として、世の平定のために奔走していたのじゃ」
お父さんは大変だったんだな。
「しかし、じわじわと精霊王のいない事に綻びが生じてきているのじゃ」
さっきの麦畑の様子は、戦争だけが問題じゃなかったのか。
女神さま達は、時折俺の心の声に答えながら話す。
「いつか、父王とゆっくり話すときに、そのことを相談されるじゃろ」
「いま、精霊王に近いのは、ブランネージュではなくて、お主じゃからのう」
「はい?」
「その翅をもっと使いこなすようになりや」
「飛ぶだけに使うには勿体ないえ」
「お前さんには風の力も授かってるしの」
「正式に八枚になってからで良いがの」
「?」
「難しすぎたか?」
「はい、すみません」
正直ぽかーんです。
「難しく考えることはない、先ほど大地を実らせたように、お前さんが思いついたことをやって行けばいいのじゃ」
「この子らも使ってのう」
今度は俺が黄色ちゃんを撫でている。いつも俺の肩に乗っている子だ。
「あたし、おうじをてつだう!」
「はい、ありがと。俺も頑張る」なにを頑張るのかはまだわかんないけど。
ふと、前を見るとカーリンとミアが凭れ合うようにして可愛らしく眠っていた。
眠たくなるほど緊張したんだろうな。
この二柱の前では、人間の中での貴族とか平民の違いなど無きに等しい。
「人間の中にも協力者を増やしなさい。ブランネージュには沢山いるぞ」
「そうですね」
「とりあえず、このカーリンと、お前さんの身近な冒険者三人には我らからも加護を授けておくからの」
「はい!有難うございます。きっと喜びますよ」
「ほんに、かわいらしいの」
「他人の幸せに喜ぶこの顔が可愛いのう」
いやあ、そんなこと言われても、照れるね。
向かいの女子が寝てしまっているので、叔母様たちは俺を撫でまくっている。
ゴダのおむすびでお腹が膨れていた俺は、暖かい叔母様(女神)達に撫でられて、気が付けば眠ってしまっていた。
お星さまありがとうございます。もっと頂けたら♪
ブックマークして頂くと励みになります!
それからそれから、感想とかって もらえると嬉しいです。




