43【絵は二次元(ツーディー)だけど、インダストリアルはスリーディー?】
奥深い樹脂の話、詳しい方は目をつぶってください~。お願いします!
インダストリアルデザインとは工業製品の形を考える仕事だそうだ。工業製品なんて、世の中の目に入る自然ではない物すべてって事だよな。
母さんはそんな中でも、インテリア寄りに仕事をしていた。建築とかそういう資格ももって、多角的にモノづくりをしていた。
時々オフィスにお邪魔して、ランプシェードとか椅子とかの完成品とか、建築模型とかを見せてもらったことがある。子供って模型好きだよね。
そんな大学生(休学中)の俺は、母さんのノートパソコンに見つけたいくつかのCADソフトに夢中だ!チュートリアルで根をあげそうな奴もあるけど、一戸建てのプランを考えるソフトもあって、キッチンとかお風呂とかの設備の図とか、屋根に置くソーラーパネルとかもあるんだよな。
「黄色ちゃんの家はどんなのがいいかな。キッチンがあって、リビングがあって、寝室があって、お風呂とか。もちろん広いお庭も必要だな」
“きゃっきゃっ あたしねー ふうしゃのあるおうちがいい!”
「ふ、風車?それは黄色ちゃん向きだね。・・・一応あるみたいだけど、背景用だなー」
お正月が明けた。
ガスマニア帝国をはじめ、この大陸の年末年始は、年末一週間、年明けは三日は、労働をやめて、家庭のことをするようになっているそうだ。
ウリアゴとしては、年明け四日目から帝都の討伐した森で最後の魔獣駆除に出ていた。しかし、俺だけは、同行を禁じられているのだ。
年末に頑張りすぎたってことと、本来仮免には労働の上限があるのが理由だ。子供の働きすぎを抑制するためだとか。
ただ、ガスマニア帝国国立学園は、遠方に里帰りをしている学生のために、学期の始まりが一月二十日になっている。まだまだ、授業は始まらない。
しかし!訓練場や図書館などは開かれていて、職員も休みは終わっていて新学期の準備をしているので、暇な学生は学園に通う。
そんなわけで俺は図書館の地下の閲覧室に通っている。ここは、ちょっとした魔法も使えるし、何より真冬の地上と違って、ここは常春なのだ。
俺は、昨年のうちに見つけていた錬金術の本を引っ張り出し、熟読する。
「これこれ!この魔法陣!」
魔法陣は、魔法をイメージや詠唱だけでは組み切れない、複雑な現象を構築するためにある。
例えば、この魔法陣、
〈ナフサ抽出〉
そして、〈エチレン〉〈プロピレン〉〈ベンゼン〉〈トルエン〉・・・・という素材の基礎製品を作る魔法陣。
それを経て〈ポリエチレン〉〈ポリプロピレン〉・・・そして〈合成ゴム〉に進化させる魔法陣!
この魔法陣セットを作ってくれたのはいつのどこのどちら様だ!
〈RESIN〉ってタイトルの三つの箱にに入れられていて、一つ目がナフサ抽出。
この箱には本も入っていて、必要な材料が記されていた。
もしかして、地球の科学者が転移か転生していたのか。まあ楽器や楽譜、や文字の事でも、そういうにおわせはあるけどね)
この世界で、プラスチックを作る素材が、魔獣だったなんて、とりわけ角からは不要なものが少なくゴミが出にくいとある!ないことはないそうだけど。
年末にこの〈ナフサ〉の本を読んだ俺は、冒険者ギルドで、ゴミにされている角をかき集めていたのだ。
たしかに、石油も化石燃料とも言われていたし、もとは動物だったらしいしね。
石油と違って、討伐して得るってところがあれだけど、人にとって脅威だし、ダンジョンにもいっぱいいるみたいし。
なんて、変な言い訳を心中でしつつも、錬金術の新しい素材に俺は興奮していたのだ。
いつものだだっ広い閲覧室に、ブルーシートを数枚敷く。
空の樽を一つと、カットして扱いやすいサイズにしたミノタウロスの角(水洗い済み)が入っている樽を置く。
王都の町の木材屋さんの隣にあった、木工屋さんで、大量に買ってある木樽。木樽は冒険者(仮でも)の表示を見せれば割安で買えるのだ。
ブルーシートの真ん中に、
錬金術の分解の魔法陣とナフサの魔法陣を重ねて置く。
どちらも複製しまくった方です。オリジナルは書架に返却済み。
そして、魔法陣の上に手桶に入れたミノタウロスのカットされた角を乗せて、土属性魔法を発動する。
土属性魔法があっても錬金術のスキルがないと使えないらしいけど、
角は熱を帯びて光り出す、そうして黄色っぽい液体になった。
「うわっ、灯油臭い」
“きゃははは~くちゃい~”
これは頭痛くなるね。
“かんきかんきー”
「換気お願いします!」
俺は急いで、次の魔法陣の上に液体ナフサの手桶を移動して、こんどはプロピレンに変化させる。
「おお、透明になった。臭いも少し和らいだか」
“やっぱりにおう~”
“かんきかんきー”
そして、次の魔法陣に移動して、やっと固形になった。まあ、ビーズみたいな粒粒状態だけどね。
鑑定〈ポリプロピレン〉
「やったー。プラスチック出来たー!」
“やった、やったー”
“れじん かんせー”
そして!次は黄色ちゃんのお家だ。
昨日、母さんのパソコンで完成した黄色ちゃんのお家のプラン。三階建てで、風車はないけど、五人ぐらいの精霊の部屋のまどり。
錬金術の組み立ての魔法陣の上に、
一階と二階、そして三階の平面図と立面図を紙に転写したものを重ねる。
人間のリアルなサイズから五十分の一で出しております。
その上に、ポリプロピレンのビーズの桶を乗せる。
そして、お家がスリーディーに立ち上がっていく動画を、ノートパソコンで十回は見た俺。イメージシュミレーションはばっちりですよ!
「じゃあ行くよ。緑色ちゃんみてて」
“うん、しゅんすけ、がんばれ”
腕組みで仁王立ちの土属性の精霊ちゃんに見守られながら、魔法を発動する。
「うぉー、小さいのに結構魔力いるな」
そうして、ポリプロピレンの桶の上に、三階建ての建築模型が出来あがっていた。
“きゃー、あたしのいえー”
“すごいなー”
“どあも、まども、ひらく!”
喜んでるけどね、ポリプロピレンなので、全部透明です。丸見えのお家。へへへ。
“おうじ、おかおがへん”
“えがお?それって?”
“きもいぞ”
つい、変態おやじの思考がちらりとかすめたんだ。
現実にこんなお家作ったって実用的じゃないな。
それでも、魔法でスリーディプリントが出来たことに満足!
そうして、同じような作業を色々していて、
魔法陣を全部積み上げておけば、魔物素材が一気にプラスチックになることが分かった。
最初の悪臭で苦しんだのは何だったんだよ。
そうして、次は白い油絵の具を混ぜて、塩ビのお家を作りました。こっちは中が見えないので緑色ちゃんに探検してもらった。
“まどまでしろくて、みえない”
おおう!要改善です。
プラスチックは、燃やしたりして処分するときに有害になるから、あんまり広めるものではないけど、錬金術で分解するなら、有害なガスは出ないみたい。
ナフサの箱に一緒に入っていた説明書にそう書いてあった。
ただ、これは、魔力の多い錬金術がいなければ使えないので、お蔵(図書館の地下)入りになったと、教授が言ってた。
その後、アクリルが合成できた俺は、顔料と混ぜて、二つのお家に色を塗った。
「黄色ちゃんのお家に黄色いお屋根~」
「緑色ちゃんのお家に緑色のお屋根~」
黄色ちゃんのお家は、透明すぎるから、壁にも不透明な色を塗って~
俺は、屋敷の自室の窓辺に二つのお家を置く。
ウエストポーチに入っていたおもちゃのブロックで、花壇とか、フェンスとかで囲っていく。
“はじめからこれでいえを、つくったらよかったんじゃん”
“そんなことをしたら、おうじのまほうのれんしゅうに、ならないでしょう?”
赤色くんのお言葉もありがたいけど、緑色ちゃんは良くお分かりで。
「あら、シュンスケ、可愛いお家ねえ。遠目で見ていたら子供らしい遊びって思ったけど、リアルすぎて玩具には見せないわね」
窓辺で遊ぶ俺に、アリサが声を掛けてきた。
「そう?まあ、おもちゃだけどね。ちゃんと住人はいるよ。沢山」
精霊のお家の庭に苔を並べたり、ちっちゃい魔石を置き石代わりに並べたり。
箱庭遊びって楽しいよね。ドールハウスいや精霊ちゃんハウス。
そのうちたくさん作って、この部屋が精霊ちゃんの町になってもいいよね。
・・・この部屋はまずいか。将来俺が家を買ったらそうしよう!
「あ、そうそうこれを忘れちゃいけないよね」
折り紙と割り箸で作った風車をお庭の端っこにしっかり立てる。
「今はこれで我慢して」
でも、黄色ちゃんは不満を言うこともなくさっそく風車に風を当てだす。
“きゃはは~ まわる~”
“ぶーん”
カラカラカラ
「和むわー」
「シュンスケ、寒いから窓を閉め切ってるのに、なんでこんなに風車が回っているの?」
「うん?回してる子がいるからだよ」
「相変わらず、あたしには見えないけど。でも、こうしていると、精霊ちゃんの存在が分かっていいわね」
「でしょ?」
「あ、そうだ、昨日孤児院のお店で買ってきたサブレを持ってきましょ」
「ほんと?ありがとう。みんなも喜ぶよ」
“よろこぶー”
“ありさすきー”
“おやつー”
ね、喜んでるじゃん。
アリサが精霊たちだけのお菓子を持ってくるわけないよね。
では、と俺はお茶の準備をするべく立ち上がる。
駿介「正直、今までプラスチックと言えば捨てるときの分別用しかわかってなかった」
緑色ちゃん「ぴーぴーとか、ぺっととか」
駿介「お、よくしってんなー」
黄色ちゃん「あたしは、おうじのぺっとー きゃはは!」
駿介「それでいいのか?可愛いけどな確かに」
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