363【ヴァルカーン王国国立製鉄所】
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血の池地獄ダンジョンを制覇してすぐ、工場長のボーデンさんに連れられてベゼットと一緒に製鉄所を訪問した。一緒に付き合ってくれているのは、ランガディア・フォン・ヴァルカーン設計製図教授にして王子殿下。
「おう!シュンスケ。今日も来たのか?なんだ?また鉄を取ってきたのか?
そして隣のガキはガゼットのせがれだな。
ランガディア…お前もきたのか」
「そうだ、俺はおまけだ」
「はっきり言いすぎだ」
前から来たのはいかにもなでっかいドワーフ。
手首でさえ俺の太腿以上に太いと思う。
ランガディア王子殿下をお前呼ばわりできるこの方は、この製鉄所の所長にして学長の父さん、つまり先代国王陛下にして建国王の、フォルゲン・フォン・ヴァルカーン陛下。約四百余歳。
そう、隣にいる教授のお祖父さまである。
「こんにちは太上王陛下」
「お邪魔しております陛下」
「よせやい、今はただの製鉄所の親父だ」
もともと、この地で製鉄ひとすじのラージドワーフだ。ドワーフ達にとってはものづくりの中心地のさらに真中の炉を動かすその存在が大事。
今日の大きな炉の前で汗だくになって作業されている。
地底都市のど真ん中に広がる大きなエリア。
トロッコでぐるりと囲われていて、その中に用途に分けた工場がさらに分けられている。
ここで精錬された鉄や鉄を含む様々な材料が、この国の金属製品を支えている。
その一角にシュバイツ印商会と書かれた大小二つの倉庫があって、大きな広場も借りている。それは今年になって設置された場所だ。ここに奇しくも製鉄所内を走るトロッコのレールが刺さっている。
この倉庫には今まで俺が手に入れた各種鉄鉱石類がある。
Feを指定して取り出した塊でも、そんな純度では鉄材としては良くないらしくて、ここから使える鉄を作ってもらうのだ。
トロッコに乗せて、製鉄の炉に運ばれていく。
倉庫に隙間が出来たと言われたのもあって手持ちの物を入れたかったのだ。
そう、ここに置く以上にまだ所持しているんだよね。
そして隣の倉庫に生成された鉄が詰め込まれている。
そっちは魔法の倉庫になっていて、まだまだ入るそうだ。
「で、今日は何だ?」
「血の池地獄ダンジョンに行って来て」
「あのトルネキの端っこのか」
「はい。血の池の血の色って、鉄錆の色だったんですよ」
「なんと…では」
「それで、しこたま鉄材をゲットしてきたわけで…」
「知らなかったなぁ…キタプレール領でなぁ。
ほうほう…で?」
「例えば…あ、天井支えるから外に出しますね
よいしょっと」
そうっと置いたつもりなのに
ドーンンンン
「何じゃこの大きさは!」
以前はストーンヘンジだ~!ってアンシェジャミンで並べて遊んだ鉄の塊のひとつより大きい…。
「〈レッドドラゴンの心臓〉と言われていた岩石で…
ようは表面が錆びて血の色だっただけで、鉄の塊だったんですよね」
「なんと…」
「うむ、すごい大きさじゃ」
「これでも鉄だけを錬金術で持ち出したので。元の岩よりかなり嵩が減ってるんですけどね」
「そうなのか」
「とりあえず、これをトロッコに乗せられる大きさに細かくカットしますね」
「たのむ…後の製鉄は任せとけ」
「お願いします!」
そして他の鉄鉱石もどかどか置いていく。
鉄の塊は黄色ちゃんの協力のもと、一辺が八十センチほどの立方体に細切れにカットしていく。
「すげえ風魔法だな」
「それにシュンスケの空間魔法程羨ましいものはないな」
「ああ」
二人のドワーフと一人のハーフドワーフがぶつぶつ呟いている。
途中から五本指ゴーレムとアッシュに作ってもらった大型フォークリフト型ゴーレム、そしてそれ用にガゼットに作ってもらった沢山のパレットを出す。
操縦する妖精のおっさん達も数人ずつで乗ってもらって、さっさかさっさかとシュバイツ印専用倉庫内の鉄材を整理していってもらう。
交代要員のおっさんはゴーレムのアクリルで囲まれた胴の中でちょこちょこと動いている。
ガゼットが作ったパレットを見たおっさんが自主的にアナザーワールドでも作っているからまだまだある。
ガコンガコンガコン
ミュイーン ガラガラガラガラ ガコン
さっきまで俺がカットしていただけの乱雑な鉄の山がパレットを挟みながら整頓されていく。
「また便利なものを…おまえさん、こいつらここに何セットか派遣しておいてくれぬか?」
「良いですけど、時々魔素の補充が必要なんですよね…」
ヴァルカーンの魔素は意外と薄いから。
「そうか…」
すると五本指ゴーレムに入り込んでいたアッシュがやってくる。
≪あたしが管理しとくから大丈夫だ≫
ようはローテションを組んで魔力たっぷりのアナザーワールドを行ったり来たりすれば大丈夫なのだ。
「ありがたい」
「報酬は?アッシュ殿」
≪時々工作に参加させてくれたら≫
「それは報酬と言えるのかどうか…」
「妖精たちはものづくりが好きだからな。あとは肉料理やエールをちょっと分けてくれたら喜ぶはずだ」
「そりゃもちろんさ。
ドワーフの酒はうまいぞ」
するとアッシュの表情がきらきらする。
≪酒!≫
年中さんの見た目でそれはだめだ!
「アルコールはほどほどで!」
≪がーん≫
「ははは、他にも旨いものはあるさ」
こっくり
持ち込んだ材料の製鉄代や倉庫のレンタル料は商会から払っております。
なんか学割料金とか言って割り引いてもらってるけど…
「ふう、これでちょっと減ったな」
「まだあるのか…」
「はい。でもまだまだ足りないかもしれないですしね」
「うむ、あんな広い所に鉄道をひくなんてありえないが…うまく行けば我がヴァルカーン王国の交通にも使えるからな、ぜひ協力させてくれ」
ヴァルカーン王国はアンシェジャミン王国ぐらいの広い国土を持つ。
ただ、北の国で極寒なので、地方の村や町にいけるのが夏だけだそうだ。
夏の間に、雪や氷に閉ざされた冬には得られない必要な物資を届ける行商人が彼らの生活を守っている。
だがそれは馬車をつかった商隊だ。
だからこそ魔導飛行船に夢を見ていたのだろう。いつかそれも手伝いたいよね。
「そこに鉄道を敷けばどれだけ楽になるか」
「しかも地下鉄なんていう技術もあるのだからな」
「はい」
「我らもそれに備えて、鉄を確保しているのだ」
「そうなんですね」
「ではトロッコのレールだな。こっちだ」
「はい」
レールは摩耗するものなので、定期的に取り換えることが必要なのだ。
だから常に余剰のレールをつくって保管しているそうだ。
取り換えるレールはいつも枕木のそばに控えていて取り換えたら、また枕木の横に新しいレールをスタンバイするそうだ。
そういえば地下鉄はみえないけど、JRの線路で脇に錆びたレールがすっと置いてあるのは何故だろうと思ってたら、あれは古いレールじゃなくて、取り換えるためのスタンバってるレールだったんだね。
ヴァルカーンに来てから知ったよ。
一本十メートルの細いレール。
でも、横から見たら上が小さい〈エ〉の形。
「好きなだけ持っていけ」
「とりあえず王宮の庭園に繋げるんだろ?」
「そこしかないですよね」
「ああ、うまくいくまではそこでやると良い」
「枕木はあっちだ、それとこの袋は犬釘」
「はい」
もとここの職員だったわが工場長が勝手知ったるという感じで案内してくれる。
枕木はここでは木で出来ていて、犬釘という本当に犬の頭みたいな形の釘で打ち込んで固定する。
だけどこの工場ではコンクリートブロックも作られているんだよね。
鉄鉱石から鉄を取り出した残りがスラグとしてセメントとして利用されていると聞いて、コンクリートの枕木の相談もしてあるんだ。
最終的にはコンクリートの枕木にレールクリップやボルトナットで固定していく方向に持って行きたい。
「シュンスケ、前に言ってた六〇キロレールの図面はあるのか?」
教授に呼び止められる。
「はい描きだしてきました(ネットから)」
「うむ…最終的にこの形状が良いのだろうがどうしてこれが良いのが実験したいところではある」
「じゃが、シュンスケは待っておれんのだろ」
「はい」
「我らも早い方が良いし、まあもう形が分かっているなら最終このサイズのレールが出来るようにこっちも部材を作っていくでな」
俺が出した図面を叩きながら、先王陛下が微笑んでいる。
「お願いします」
ヴァルカーンの人たちは俺以上に鉄道に対しての熱気がすごいかもしれない。
広い国土があって、その端々を繋げる手段が出来そうだということで鉄道計画にすごく前向きだ。
「これまでのトロッコ用のレールの工場をさらに拡充してそっちに鉄道レール工場を作ってしまおうと思っているのだ」
「はい」
「シュンスケみたいなすごい魔力があっても、鉄の鍛造だけは物理的な力技が必要だ」
「そうなんですね」
「それに大陸横断用なんて長いレールを作るなら専用の工場じゃなきゃ無理だしな」
「はい」
「シュンスケの今の工場では狭いからな。気にせず我らを頼ってくれ」
「ありがとうございます」
レールを鍛造して作り出すノウハウはもうこの国にあったのだ。
夏休み最終日、ベゼットはガゼットさんと学園の大型試作室に来ている。
そこの端には枕木が並び、レールが犬釘に抑えられてセットされている。
その一方で、五分の一サイズの魔導列車の車台が組み立てられている。
二本の車軸に繋がれた四つの車輪のあいだに二つのモーターがぶら下がるように台に固定されていてそこから魔導線が伸びている。
車輪にはもちろん、古代鮫の油で作ったグリースを仕込んだベアリングが仕込んである。
その上にサスペンションを置いた。
その四つの車輪の物が二つ車台に繋げられていた。
「わーこれこれ!なんかだんだん形になってきたよな!」
「よくわからんが、お前の玩具に近付いたよ」
「でしょ」
青いレールの玩具も見せたけど、もっとリアルな小さい方も皆に見せていたんだよね。
「最終的にこれが目標だから!」ってね。
今回先頭車輛の形はまだ曲線の硝子が難しいということで、横から見たら流線型に見えるけれど前から見たら下に向かって湾曲している卵っぽいアウトライン。窓ガラスは魔導車のフロントガラス程度の緩やかな曲線ですみそうだ。
まっ平よりは強いからね。
「かなりカッコイイな」
五分の一でもテンション上がる!
「だな、この形なら高速でも空気抵抗が少なそうだ」
大型試作室のレールはまっすぐ王宮の庭に伸びている。
二学期が始まっても、俺達は宿題の成果を高めつつまとめ上げていく。
ウリサは商業科の〈仮想都市の経済計画 〉の宿題を提出していた。
「おれのレポートが一番分厚かったぜ。
何しろ図や地図やグラフを盛り込んだのも評価されたしな」
「それはよかった」
てテンション高めだったのに次の日はどんよりしていた。
「今朝ホーテー助教授から戻されてきて…」
「合格しなかったのか?」
「いやパスはしたんだけど」
「これは完成ではないでしょう?」
「はあ、完成するのは何十年も先になりますけど」
「では、途中経過で良いから時々見せてください」
「それは良いですけど、この内容についてアドバイスは無いですかねぇ」
「…アドバイスではなくて、こちらが聞きたいです。
このような素晴らしい都市計画は誰が考えたのですか?ウリサなのですか?」
「う…それはシュンスケがメインで、おれも参加して…」
「なるほど。ではまた続きが増えたら見せてください」
「ってな感じで…」
「そりゃあね、ヴァルカーン並みの国を一から作ろうとしているんだからさ」
「だな」
今日はクリスが進級のためにガスマニアの学園に行っている。
俺の送り迎えが無くても空間魔法の扉をいくつか潜れば行けるんだよね。
それで、彼は時々レポートを提出したりしていて、三年生を納めていた。新年度は四年生だ。
ガスマニアでは普通科の商業コースのクリスも進級のための課題として提出したのはウリサの宿題と同じもの。
あの課題も帰ってこなければよいのに…っていうかアドバイスくださいね。先生方。
夜、クリスの進級祝いの晩飯をヴァルカーンの宿舎で作っていたら、どんよりした表情で制服のまま帰ってきた。
「どうした…あーお前の宿題も返されたのか」
「はい、続きを待ってると…」
大人たちは皆新しい国造りを見守ってくれている。
いや、俺達だって手探りなんだから、アドバイスください!
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