104話 死闘⑦
目が覚めた。
どうやらかなりの時間眠っていたらしい。
周囲は朝の気配が漂い、陽はすでに登りつつある。傍らには馬が寄り添うように立っていた。
体を起こして状態をチェックする。
痛みはあるが、かなり鈍いものになっていた。ストレッチを行うと裂傷部分が服にこすれて痛いが大したものではない。あれだけの剣撃を受けたので、両腕にはかなりの違和感があったが筋肉痛のようなものだろう。
改めて蒼龍とバスタードソードをチェックする。
共に刃こぼれもなく、問題はなさそうだ。
消毒用のアルコールで刀身を拭いた後に、手入れ用の油を薄く引いた。こうしておくことで錆を防止し、斬れ味が鈍らなくなる。
蒼龍を鞘に戻した後、バスタードソードを軽く振ってみた。
蒼龍よりも重量があり、長い。
かなりの硬度を持つ金属でできていた。試しに軽い一撃を近くの岩に打ち込んでみる。
岩は斬れるというよりも破砕するといった感じで2つに割れた。グリップが少し太いので一度ニーナに見せて調整をしてみようかと思い、木に立てかける。
朝食代わりのプラムケーキを食べて、このあとをどうするか考えた。体は大丈夫そうだが、馬に乗って街に戻るのが一番良いだろう。このまま周辺の調査を行っても何かがみつかるような気がしない。
ただ魔族と闘うためにここに来たようなものになってしまった···。
軽くため息をつくと、ソート·ジャッジメントが反応した。面倒だがすぐには帰路につけないようだ。
馬を逃がして魔族が近づいてくるのを待った。昨日と同じような状況にデジャヴ感がハンパない。
異なるのは相手が複数いること。
2体の邪気を捉えた。
昨日みたいな剣術に長けた奴は勘弁して欲しいが···。体はまだ万全ではないのだ。
やがて姿を現したのは俺の希望を汲んでくれたのか、武器を持たない魔法特化型と見える魔族1体と、半獣半人のような1体だった。
こんな容貌の奴もいるのか。
半獣半人の方は何となくケンタウルスのような風体だ。下半身は馬の代わりに狼のような感じだが。
「そのバスタードソードを持っているってことはウェルクを燃やしたのはお前か?」
人型の方が問いかけてきた。
「ウェルク?」
「お前が殺った奴の名前だよ。あの剣術バカを倒すってことは相当な魔法士なんだろうな?」
「武器を持ってはいるが、ウェルクに剣で勝てる者などいないだろう。当たり前のことを聞くでない。」
魔族同士で勝手に会話をして結論づけやがった。魔法士に勘違いをしてくれるならこっちには都合がいい。ほっておこう。
「傷だらけだな。手負いが相手なら大しておもしろい勝負にもならんだろ。お前にくれてやるよ。」
人型はそんなことを言っている。
一体ずつと闘えるのなら尚更都合が良い。
魔族は強者だ。
上から目線で相手を卑下するのは共通のようだ。俺から言わせると、バカばっかしだがな。
「よかろう。我が瞬殺して食らってやろう。」
半獣半人がそんなことを言っている。
ええ~、人を食うのかコイツら。
勘弁して欲しいぞ。




