103話 死闘⑥
「あれ、今日もタイガは来てないの?」
ギルドのカフェにいたリルとフェリにパティが声をかけた。
タイガに弟子入り?をしたと言うシスとテスも一緒だ。軽く自己紹介をする。
「昨日からタイガの姿を見ないんだ。アッシュも知らないって言ってたし···。」
「タイガはあまり地理に詳しくないから一人で遠くに行ったとは考えにくいわね。」
「家にも行ってみたけど、昨日の朝に出かけてから姿を見てないってレストランの人も言ってた。」
リルとパティの会話を聞きながらフェリは胸騒ぎを感じた。
「受付の人にタイガのことを聞いてみるわ。」
そう言ってフェリは立ち上がり、ギルド職員の元に向う。
タイガの事だから身の危険にさらされている可能性は低いかもしれない。でも、どこかの女性に誘惑されて連れていかれたってことは考えられるかも···。
残念ながらそんなことを思われていた。
「えっ?昨日の朝に一人で馬を借りて出かけた!?」
ギルド職員からの返答は予想とは異なった。
ある意味ホッとしたが、違う心配が沸き起こる。
「行き先は···私達が初めて出会った場所だわ。予定では日帰りのはずね。」
「それって···。」
タイガなりに何か思うことがあったのかもしれない。
もしかして元の世界に帰りたいのだろうか?それがタイガの意思なら反対はできないが、いなくなるというのは嫌だ。
「すぐに探しに行きましょう。タイガさんの強さは知っていますが、一人というのは心配です。」
テスが提案をした。
ギルドでは基本的に1人での巡回や任務遂行は禁止している。万一の際に救援が遅れるからだ。
タイガの場合はギルマス補佐としての権限と言うよりも、「忘れ物を探しに行く」という目的による申請理由と、規格外の強さから許可が降りたようだ。
「すぐに準備をして現地に向かいましょう。フェリ、馬車を出してくれる?」
「うん、わかったわ。」
こうしてタイガ捜索隊が発足されることになった。
街を出てから馬車を最速で走らせた。
タイガの身に何が起こったのかわからない状況では早く姿を見なければ気が休まらない。
「ちょっと、あれ!」
パティが指差す方向を見ると、馬が一頭だけ街に向かって走って来ていた。
「あの鞍はギルドの物だわ!」
リルの指示で馬車を馬と並走させる。馬はこちらを知った顔だと思ったのか、スピードを落として足を止めた。
「やっぱり···タイガが借りた馬だわ。ギルドの識別番号も間違いない。」
馬の鞍にはスレイヤーギルドの紋章と識別番号が刻まれていた。
「まさか···タイガさんに何かあったんじゃ···。」
シスの言葉に全員が息を飲んだ。
「急ぎましょう!」
リルが切迫した声を出した。




