102話 死闘⑤
眠い···。
出血と疲れで目をつむるとすぐにでも眠れそうだった。
どうせなら美女のふくよかな胸に抱かれて寝たい。ついでに頭をなでてくれたら最高。
なんて事を考えながら眠気に抗った。
傷を確認したが、出血はほぼ止まっている。体中に鈍い痛みはあるがそこはがまんだ。
治療は後回しにしよう。
魔族の死体を引きずって土がむき出しになった平地まで行った。枯れ木を集めて魔族に被せ、火を着ける。マイク·ターナー事件の後だ。焼却処分はしておかなければならない。
火に勢いがついたのを見計らい、さらに木をくべていく。風上にいるので臭いはそれほど気にはならないが、自分で火葬をするのはあまり気分の良いものではなかった。
バスタードソードは戦利品としてもらっておくことにする。荷物にはなるが、今後の戦闘に役立つかもしれない。
馬を繋いだところまで足を進めるが、体が重い。ダメージは相当だ。
道中、何度か意識が遠のきそうになったが、パティのプリけつやニーナのグラマラスボディを思い浮かべて気を保つ。あれを堪能する前に死ぬ訳にはいかない。
時に煩悩は人を強くするのだ。
何とか馬のところまで行き、持って来たバックパックを開ける。中から治療用のセットを取り出して傷口の消毒を始めた。
アルコールで傷口を拭くと血がにじんではきたが、出血はほぼ止まっていた。驚いたことに斬られた傷のほとんどが癒合している。身体能力と同じで回復力も向上しているのかもしれない。
傷口の縫合用にバックパックには糸と針を入れていたが、今回は必要がなさそうだ。
傷口がじんじんと痛む。
だが、痛みを感じると言うことはまだ死にかけていない証拠だ。限界まで来ていたらそんなものは麻痺する。何度かそういう状態に陥ったこともあるから悪い方には考えないようにした。
人は気持ちをどう持っていくかで状態を左右する。これ重要。
水筒に入った水を口に含み、携行食として持ってきたプラムケーキをゆっくりと食べた。水分と糖分が体に染み渡る感じがした。内臓にはダメージがないので、回復力が増加するはずだ。
馬を繋いでいた紐をほどいて自由にする。
「俺はしばらくは動けない。もし敵が来たら逃げるんだぞ。」
目を見ながらそう言った。
馬をなでると労るような眼差しを返してくる。優しい表情に癒された気がした。
虫除けの効果がある植物で編んだというシートを広げてそこに横たわる。もし魔族や魔物に襲われたら今は対処が難しいが、体力を回復させることが重要だった。
そして···間もなく意識を失った。




