エピローグ:そして森の賢者の娘は。
二話連続投稿なので注意してください。
「じゃあ、お母さん、私、行ってくるね」
「ええ」
アレイシアは、結局の所、外の世界にまた飛び出す事を選んだ。ああいう目にあったとしてもやはり外の世界へのあこがれがアレイシアの中にはあった。
セイアーツ教に捕まるまでの間でも、アウグスヌスの森で一生を終えたらきっと経験が出来なかったような事を沢山経験した。見た事のない景色を沢山見た。
だけど、それだけではやっぱり足りないとアレイシアは思ってしまった。
アウグスヌスの森での生活は穏やかで、きっと脅威も何もない。
そこで永遠と、優しい暮らしを継続するという道もあった。そちらの道の方が、断然アレイシアにとって優しい。
なぜなら、そこは聖地で、人は足を踏み入れることを許されない地なのだから。
だけど、けれども———そんな穏やかなだけの暮らしを、アレイシアは良しとしなかった。
「お世話に、なりました!」
「アレイシアをよろしく頼むよ、ベスト」
ともに旅に出るベストに、アレイシアの父親のフランツはそういって優しく微笑む。
セイナは散々、アレイシアに人は面倒なのだと教えた。面倒だからこそ、セイアーツ教なんてややこしい宗教を作って、結果的にアレイシアが軟禁された。
セイナの娘だと露見したからこそ、そういうことが起こる可能性は低いだろう。だけれども、それでも絶対ではないから。世の中には、踏んではいけないとされるものを踏んでしまう存在は確かにいる。
そもそも、人は忘れる生き物だとセイナは思っている。
それを、長い時を生きてきて実感している。第一セイナを知っているのなら、理解していたのならばセイアーツ教なんていう宗教は生まれなかっただろう。
「アレイシア」
「なあに、お母さん」
「私の娘と公表したから動きやすいとは思うけど、ちゃんと、考えて行動しなさいね」
「うん」
「……面倒だから、貴方に何かあってもそうそう私は手出ししないから」
「うん」
「……でも、貴方は私の娘だから、時々はかえってきなさい」
「うん! 外で色々なこと見て、経験して、その話沢山お母さんにしてあげる。だから、楽しみにしてて」
「ええ、楽しみにしているわ。いってらっしゃい、アレイシア」
「いってきます!!」
さて、『森の賢者の娘』の二度目の旅立ちはそんな感じで行われた。
「さぁ、行くよ、ベス」
「うん、アレイシアさん」
『アレイシア、今度は捕まらないでねー』
森の賢者の娘の側には、弟子になった人間の少年と、母親につけられた精霊が居る。
『森の賢者の娘』が、外の世界で何を見るのか、何を経験するのか。
その弟子となった只の人間の少年がどんなふうに生きていくのか。
それはまだ、誰も知らない話。
「ベスはどこいきたい?」
「アレイシアさんがいきたいところでいいよ」
「本当? だったら私は——」
彼らの旅は、まだまだ続いていく。
『森の賢者の娘』end
あとがき
中途半端かもしれないけれど、ひとまずここでアレイシアのお話は終わりになります。
元々セイナの物語のあとに、何故か気まぐれでアレイシアという存在が生まれ、考えているうちにセイナが娘を叱りにいくというか、迎えに行く場面を書きたいなと思いました。
また、元々魔力が多い長寿の存在と、それ以外しか存在しなかった世界にエルフなどといった長命種が生まれた世界がどのように変化しているか、そういうのを書きたいなと思ってこんな感じになりました。
セイナが異世界に落ちて、色々大変な目にあってから数百年、世界は移り変わり、化け物と呼ばれていた彼らはハイエルフという種族として認識されるようになった。
個人的にとてもセイナというキャラクターを気に入っているので、セイナの後日談かけて楽しかったのです。
また気が向いたらというか、書けそうだったら、また未来の話をかけたらと思います。
ではここまで読んでくださりありがとうございました。感想などいただければ嬉しいです。
2017年7月17日 池中織奈