第12話
巨乳…、いやもとい、ミズリーと呼ばれた少女は赤い頭巾の被った見た目は子供、中身は…中身は分からないが…。
女性的シンボルは爆乳である。
やば、さっき止まったばかりの鼻血がまた出てしまうのではないかと思い、鼻を抑えてしまった。
「アイトさま、さっきからキョロキョロと、挙動不審過ぎますよ?」
ピィは大きな藍色の瞳を数回パチクリとして僕を写した。
僕の鼻血の原因をピィには知られたくなくて、話を反らした。
「あ、いや、そのピンクの布って一体何なんだ?」
先程、僕の鼻血を一瞬で止めた魔法のようなピンクの布。
ミズリーは持ってきた籠の中からもう一枚ピンク色の布を取り出した。
「これを作るために随分時間がかかってしまいました、来る日も来る日もこの布の事で頭がいっぱいだったし、材料を集めるのも一苦労だったわ。秘境の地まで足を運んで幻の幽鼻草を取りに行って、またこの崖山を降りるのかと思ったら、あー、エレンのように飛べればどんなに楽なんだろう?ってあなたを思い出したわ。この布ができたらあなたに自慢したくて頑張ったの。まだ試作段階だったから本当に治るなんて思わなかったけど」
ピィのここでの名前はエレンらしい。
と言うかエレンが本名らしいのだが、何せ物心ついた時から、家に飼われていた小鳥ピィの名前を今さらエレンなんて呼べない。
「確かに私は鳥になって飛べるけど、鳥になるのはもうコリゴリです。気の遠くなる程の時間を籠の中で暮らしていたのですもの」
ピィの言い方に皮肉は込められていないと分かっていたけど、僕の胸に鋭く突き刺さる物があった。
確かに、僕はピィがただの小鳥であると疑わなかった。
そもそも、ペットの存在を疑う飼い主などこの世にいないだろう。
だが…。
仮にもし自分がピィと同じ立場だったら…。
そう考えると胸が痛くなる。
「ごめん」
突然頭を下げた僕をピィは驚いた顔で『え?』と声を出した。
「どうしてアイトさまが謝るのですか?アイトさまは私を救ってくれた勇者なのですよ」
純真無垢な瞳はピィの時のままで…。
目の前にいるこの少女は本当にピィなのだろうと間がう事なき事実を教えてくれている。
「勇者?この人が勇者なのですかっ?」
ミズリーが僕たち二人の間に割り込んできたので、ベッドがキシキシと音を立てた。
「そうよ、ミズリー。彼こそが魔王を倒した勇者なのよ」
「ほぇー。そんな偉大な方だとは知らずに失礼いたしました」
そして、まるで神でも崇めるようなキラキラとした目で見てきた。
こっちを見るのはいいのだが…。
両肘をベッドに起き、こちらを見てくるから、また…胸が強調されて。
やばい…。鼻が、鼻が…。
「アイトさまーーーーーー」
耐えきれずについに鼻血が吹き出した。




