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第13話

ミズリーが帰ってから、僕とピィは夕食の買い物をするために外に出た。


元の世界に帰るのはしばらく後になりそうだな。

本当は一刻も早く戻りたいのだが…。


水色の丈の長いワンピースを着ているピィは軽やかな足取りで今にも止まりそうな動きでゆっくりと回っている水車の周りをぐるぐると廻りながら草むらに僅かな葉音がすると、一転して小さな虫がいないか探し始めていた。

そんな様子を木で作られたベンチに腰掛けながら見ていてこれまでの事を頭の中で整理してみた。


学校から帰った僕は先に帰っていた父親と些細な言い争いから激しい口論になり、父親に夕飯に食べようと買ってきたトマトを投げつけてしまい父親を殺してしまった。

あわてふためく僕に、『貴方が殺したのは父親では無くて魔王なのです』と言ったのは、ずっと鳥篭で飼われていた鳥でありその姿は魔王によって封印されていた姿らしく、今は本来の幼女の姿で僕の目の前にいる。

魔王を倒した僕はこの国では勇者であり、女王から恩恵を与えられると言うもの城に行ってみたら、魔王の持っていた玉を探さない限り勇者として認められないとか言われる始末。

何だよ、それ…。

玉とか知んねーし。


『アイト、お母さんはちょっと遠いとこに行かなくてはならなくなったの。すぐに帰ってくるからそれまで父さんの事を…父さんの側にいてあげてね、あの人は一人では何にもできない人だから』


小さな頃そう言っていなくなってしまった母親。

母親の後ろに何か大きな人影が一瞬見えた。

その影に飲み込まれるように消えてしまった母親。

小さな僕はただただその恐怖に立ち竦む事しかできなかった。


今は顔さえも思い出す事ができなくなってしまったからこの記憶の存在自体も危うくなっている。

もしかしたら、この言葉も僕が造り上げた幻想なのではないか?

そもそも、母親は何故まだ手のかかる小さな僕の目の間から消えてしまったのか?

母親がいなくなった後の父親は生きているのか死んでいるのか分からないほど生気を失っていた。

大柄だった父親がとてもとても小さく見えた事それははっきりと覚えている。


『アイト、お前はオレから離れるなよ』

初めて見た父親の涙。

父親が泣くなんて想像すらしたこと無かったから僕は何かを言うことも何かを聞く事もできなかった。

だから、今だに母親の事を聞けないまま月日は流れていた。


魔王の持っている玉って何だよ!

それを持っている者には何のスキルも無いとか、第三者にスキルを習得させるとか全く意味が分からない。

今僕が欲しいスキルは何だろう?

父親を生き返らせるスキルか?

母親を呼び戻せるスキルか?


いや。

早く元の世界に戻りたい!

だな。

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