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66話 ユヌの魔術講義

「それじゃ、そろそろ休憩にしましょうか」


 パーティリーダーのフィリーさんが皆にそう声をかける。その声に真っ先に反応したのはフリッツ君だった。


「やったぁああああ、ぐへぇ」


 両手を勢いよくあげた後、草に覆われた道端にうつ伏せに倒れ込む。

 それ休憩になる度にやってるけど、痛くないのかな。結構勢いよくいっているように見えるんだけど。


「よっし、それじゃ降ろすよー」

「ん、ユヌお姉ちゃん、ありがとう、ございます」

「えっへへー、このくらいお安いご用だよー!」


 私は背負っていたニーナちゃんを地面に下ろしてあげてから、自分の腰にぶら下げていた水筒を手に取る。


 皇都を発ってから、もう3日経った。

 ひたすらに北へ続くみちを歩き、特に大きな事件もなく、旅路は実に順調と言えるだろう。

 まぁ、小さい事件ならいくつか起こったんだけど。




 最初は私が魔術使いだと露呈したとき。

 ……いや、露呈もなにも、私は隠すつもりもなかったし、ごく普通の事実として出発直前の昼食で述べたのだ。共有するべき情報だもんね。

 そうしたら、フリッツ君が大きな声で


「魔術!? 本当っすか!?」


 と言いながら立ち上がったのだ。と、その時手が食器に触れてしまったのだろう、真っ白いお皿が机から落ちて床に到達した途端に「ガシャン!」とけたたましい音をたてて割れた。


「あっ……」


 何事かと静かになったお店の中で、フリッツ君の呆気にとられた声だけが響いた。

 ともかくもその後、お店の人が出てきて弁償やらなんやらといった話になったため、魔術の話は一旦お流れになった。旅の開幕からよくないことが起こり、私は一人今後の旅程を案じた。


 その後、皇都から出発して道を歩いている最中に、フリッツ君に魔術を教えてほしいと頼まれた。

 うーん、教えると言っても、物心ついたときには使えてたしなぁ……正直に教えられそうにないと告げたのだが、何度も粘られたのでついに了承してしまった。


「やったぁ! よろしくお願いしまっす、師匠!」

「師匠って……まぁいいや。とりあえず私が魔術を使うときの事を教えるね」

「はい!」


 うっ、そんな期待のこもった目で見ないでくれ。というか自分よりも背の小さい女の私を師匠呼びでいいのか、一応歳自体は私の方が一つ上らしいけど。ちなみにニーナちゃんも私の一つ下らしい。

 ため息をはきつつ、改めて魔術を使う手順を思い出す。

 今はもうほとんど感覚ですぐにできるようになっている。村にいる頃はそんなに早く展開できなかったので、ちょっと成長を感じるね。


「えっと、まず血液を意識します」

「……?」

「んーとね、手をぎゅーって握りしめたあと、パッて開くと、指先まで血が届く感じがするでしょ? それを体全体で意識するの」

「??」


 フリッツ君は頭の上に疑問符を浮かべつつも、一生懸命に手を握ったり開いたりして感覚をつかもうとしている。

 ふと、そこで回りを見ると、皆も――エミィさんとフィリーさんとオスヴィンさんとニーナちゃんが――フリッツ君と同じ動作をしている。えぇ、皆して魔術を覚えたいの? まぁ使えれば便利だとは思うけど……

 まだ誰一人として感覚はつかめてなさそうだが、とりあえず次のステップに移る。


「感覚がつかめたら、血液の流れに干渉して、こう、無理矢理に流れを加速させます」

「……は?」


 エミィさんが思わず声をあげた。

 うん、昔私がルカや村の大人たちに教えたときも、ここで皆脱落した。「出来るわけがない」と言って皆諦めていくのだ。私としては普通にできることだけど、皆にとってはできないことらしい。

 ちょうど私が魔法を使えないのと真逆だね。皆にとってはできるけど、私にはできないこと。着火とか、水を産み出したりだとか、そんな事ができる人たちが羨ましいです、はい。

 結局、旅の初日はずっとそんな感じだったのだけど、魔術を習得した人は現れなかった。




 そして夕食の時にも事件が。

 初日はまだ皇都で買ってきた比較的新鮮な野菜を食べることができる。2,3日目になるとちょっと怪しい。

 という訳で初日限定でサラダを食べれるのだが、そこで私はシューユをサラダにちょびっとだけかけて食べようと思った。

 で、思い切りドバッと出てしまった。


「あああああ!!」


 シューユ、私のシューユが……

 一気に3分の1が流れ出てしまった。

 言い訳をするなら、瓶の口が大きすぎるのだ。先細りの瓶ならこんなことにはならなかっただろう。密閉できて保存に便利そうと思って貰ってきたものだが、使用にはあまり適していなかったようだ。


「……同調瓶?」

「へ?」


 私が複雑な気持ちで瓶を睨んでいると、ニーナちゃんがポツリと呟いた。ニーナちゃんを見ると、険しい顔(目元が髪で隠れているから、たぶんだけど)で私の手元にある瓶を見ている。

 その表情を見せたのは、私がニーナちゃんに振り向いた一瞬だけで、すぐに


「な、なんでもないです……」


 と萎縮してしまった。

 同調瓶、ね。ただの瓶に見えたけど、もしかしたら錬金術関係の道具なのかも? これを使ってたエトムントさんのお祖父さんは錬金術士だったって話だったし。

 まぁそんなことはどうでも良いのだ。私的には貴重なシューユが大幅に減ってしまったことが問題なのだ。サラダを食べ終わったら、器に残っているシューユを瓶に戻して……いや、一度サラダにかかったものだし、別にしておいた方がいいか、しかしそうなると何処に保存すれば……

 結局、エミィさんが使うつもりがないということで、エミィさんの同調瓶(?)を譲ってもらった。そこに使用済みシューユを流し入れる。汚いとか言う人もいるかもしれないけど、こんな美味しいものを一回こっきり使いきりだなんて勿体無いもん!


 こんな感じで、皇都を発った初日は過ぎていった。

冒頭部分までたどり着けなかった……久々だからね、思い付いたネタがいつもの文字数で収まらないのもしょうがない。一旦一区切り。

あ、いくら醤油に殺菌効果があると言っても、使用後の醤油の再利用は衛生的じゃないのでやめましょう(マジレス)


次回投稿は月曜予定

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