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強烈な一撃

「なんやねん。俺らの誘いを断るんか?」

「いや、だから僕は、その・・・」

「嬢ちゃん可愛い顔しとるやないか。どや? おっちゃん達と遊ばへんか?」

「えぇっ? いや、遊びませんよ!」

「まぁまぁ」

「ヒィッ!」

「あんたら何してんの!」


路地裏で僕を囲っていた怖そうなおじさん達に向かって、凛々しい女の人の声がぶつかってきた。

正確には『怖そうなおじさん達』じゃなくて『僕を含めたそのへんの人』だったんだけどね。

その女の人は、スラリと背が高くて、濃い茶色の髪を背中の真ん中辺りまで伸ばし、声とマッチしているような凛々しい顔つきで、セーラー服に身を包み、太陽を背中に受けて神々しく輝いていた。

そんな凛々しい女の人のおかげで、僕は今この瞬間だけ殴られずに済んだ。

しかし今度はその女の人が標的になってしまったようで、怖そうなおじさん達がそっちを向いた。


「なんや嬢ちゃん。この子の知り合いか?」

「違うけどさ、その子嫌がってんじゃん。離してあげなよ」

「ええやんか。なんなら嬢ちゃんも遊んでくかい?」

「嫌だ」


ハッキリと言う女の人に、少し苛立ちを覚えたのか、おじさん達はチッと舌打ちをして女の人に向かって睨みを利かせた。

助けてくれたのはありがたいけど、あの人まで巻き添えになっちゃう・・・

そう思った僕は、カバンを引き寄せて、そーっとそーっと女の人の方へと足を向けた。


「どさくさにまぎれて逃げようとしてるんか?」

「ギクッ!」

「おい! こっち来い!」


その声の大きさに驚いたおじさん達の隙を見て、僕は女の人が立っているところへと走った。

すると突然、女の人が一番近かったおじさんに向かって走り出した。僕は女の人とすれ違うように走り抜けると、慌ててブレーキをかけて振り返った。

そこで見たのは、女の人がおじさんに向かって勢いをつけたまま思いっきり振りかぶってビンタをしたところだった。

そのおじさんはその場に尻餅を付いてしまい、あまりの突拍子もない行動に他のおじさんは固まってしまっていた。

そして女の人は尻餅をついたおじさんに向かって言った。


「いい歳して女の子のナンパなんかするな!! これだから日本はダメになるんだ!!」


それだけ言うと、女の人はこちらに全力疾走で戻ってきて、僕の手を掴んで走り去った。

手を掴まれている僕は、逃げようにも逃げられず、自分の意思とは関係なく、女の人の後ろをただただ走った。

そして近くの公園へと入ると、二人で息をゼーハーゼーハーしながら、ベンチに座り込んだ。


「はぁはぁ・・・大丈夫か?」

「あ、はい。ありがとうございました」

「別に礼なんていいよ。困ってる女の子をほっとけないんだよ」

「あ、その・・・」

「おっと、いけね。これから買い物行かなきゃいけねぇんだ。じゃあまたな。もう知らない人にはついて行くなよ」

「あっ、ちょっと!」


手を振って駆けていく女の人に僕はお礼以外何も言うことができなかった。





次の日。


僕はいつものように制服に身を包み、学校へと向かった。

僕の通う高校は、男子は学ラン、女子はセーラー服という古き心を大切にした高校なのだが、築100年越えということで老朽化が進みすぎたために、去年丸1年を使って新築させたらしく、校舎自体はとても新しいものである。

僕の家からは、徒歩40分という距離で、交通機関を使っていったほうが遠回りになるという、なんとも不便な距離だった。

そんな高校へ通い始めてまだ2ヶ月しか経っていない1年生の僕は、昨日の学校帰りにあのおじさん達にナンパをされてしまったのだ。

今思ったんだけど、どうしてあのおじさん達は関西弁だったんだろう? 関西弁で迫られると怖いなぁ・・・

そんなことを考えているとあっという間に学校に到着した。

教室に入って自分の席に着くと、隣の席の山田(やまだ)くんが声をかけてきた。


「おはよ。紺野(こんの)。今日も可愛いな」

「やめてよね。こう見えても気にしてるんだからー」

「アハハハ。怒った顔も可愛いぞ」

「まったく・・・」


隣で楽しそうに笑うのは、高校に入ってから出来た友達の山田侑斗(やまだ ゆうと)くん。

いつも僕の容姿のことでバカにしてくるが、悪い人じゃないので邪険にはできない。


「そういえば、転校生が来るらしいぞ」

「転校生?」

「そうそう。噂によると可愛い子らしいぞ」

「女の子かぁ」

「紺野のライバル出現だな」

「いい加減にしないと怒るよ」

「アハハハ」


ホントに悪気ないのかなぁ?

そんなことよりも転校生かぁ。ちょっと楽しみだなぁ。

ってゆーかこんな時期に転校生ってなんなんだろう。まだ6月だよ?

少しワクワクしながら待っていたのだが、今日の朝のホームルームでは転校生は現れなかった。

なんでも緊張しすぎて貧血を起こしたんだとか。可哀想に。

結局、クラスに転校生が来ることはなく、その日は終わった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。


今回から新作となってます。

これからもよろしくお願いいたします。


次回もお楽しみに!

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