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それを言うかにゃーん

 

「えっちぃ、にゃーにゃ」


 つんつんつん。

 ルクレツィアが始終黒猫、もといアガーテと名乗る人?猫?獣人?を突付いている。


「にゃは、にゃあっ、にゃはははははははっお嬢ちゃんそこ、にゃはははは」


 ルクレツィアに突かれてどうやら痒くて仕方がないらしい。

 珍しくアルフォンソまでルクレツィアに便乗し、何処から出したのか小枝でつんつん突付いて居る。その度に上がる悲鳴にも似た笑い声。


「マスターが嫌がる事しないで下さい!」


「えっちぃ、の、め。ね?」


「にゃ、はは、うにゃーーっすまんかったのにゃー、あまりにも艷やかな肌でつい吸い付けられてしまったのにゃ、綺麗なおにゃのこは堪ら、にゃ、にゃはははははっ」


「はんせ、い、無い。め!」


「はにゃ、ははははひにゃーはははは!」


 手足を蜘蛛の糸で拘束されたまま、今度はアルフォンソが鼻を蜘蛛に頼んで紙縒りの様なモノを作って貰って擽っており、盛大にクシャミをしている。


 何だろ、これって拷問?

 しかも擽りの。


 あの後。

 温泉から出てから私達はアデルに連れられ、温泉からすぐ隣の部屋に通された。

 其処には沢山の真っ白なクッションと、真っ白なもこもこした何かが…あ、よく見たら蜘蛛だった。しかも1メートル程の大きさの。その蜘蛛が大慌てで壁に激突しながらも逃げるように退出して行った。

 …ううん、私達が入って来たドアの反対側にあるドアから身を隠す様にしている。もしかしてアレは隠れているつもりなのかな?

 足。蜘蛛の足が出ているけど。

 しかも真っ白なもこもこした毛がビッシリ生えている足が。


 …蜘蛛だけど、体毛がもっふもふ。

 でも蜘蛛。

 でもちょっと惹かれる。


 しかも体毛が真っ白で、目だけが黒みがかっていて可愛く見えた。

 これは大分アデルに毒されたなぁ。慣れたとも言うのだろうけど。

 ただアデルの蜘蛛の足は少しばかり怖いと思う。




 そう思って呆然としていると、アデルはアガーテと呼ぶ黒猫に反省を促すためと言いながら中々酷かった。


 先程から私の背後でゴソゴソと大きな袋、この黒猫が背負っていたリュックらしき袋から幾つもの鞄やら袋やらを取り出し、次から次へと中身を周囲に山の様に積み上げている。

 うん、そう。山だ。山が私の背後に出来ている。

 という事は、この鞄やら袋はソレ一つがアイテムボックスと同じ様な機能が備え付けられているのかな?


「ほぅ、これは中々高価な物だな。どれ、幾つかレーベルの詫びの品として没収だな」


 あれ。アデルって人間の(猫?)高価な品ってわかるの?と一瞬思ってしまったけど、このアガーテの知り合いみたいだから普段見慣れていて分かるのかな?

 と言うか何でこのアガーテは普通にアデルのダンジョンに入って来てるんだろう?

 正規のダンジョンの入り口を通過して来たのかなぁ?だとしたら冒険者って奴?この子一人で入って来たの?


「はぅ!アーデルベルトの旦那~!それはとある貴族殿への頼まれものも含まれてでして!『高価な幾つかの商品』は次入荷するのは来月にならないと無理なんですにゃー!下手すると来年になっちゃうものも…あうあうあう、困るにぁあ~!」


「へぇ、なら丁度いいな。レーベルにぴったりだ」


 いや、私要らないよ?

 と口を挟みそうに為ると、何時の間にか来たのか先程の真っ白なもこもこ蜘蛛が足元で【ダメダメ、反省させないとまたやられますよ?】と布地に炭で書かれた文字を掲げて見せて来る。


 うん、また?

 それに気になる言葉を喋ったよね?

【貴族】の頼まれ物。それに『高価な幾つかの商品』。

 貴族と言う言葉から連想できるのってコレしかないよねぇ~。

 この黒猫が、アデルが言っていた"商人"なのかな?


「殺生な~!」


「そう言うなら二度とレーベルに馬鹿な事はするな。…俺だってまだ触れてないのに」


「おろ?アーデルベルトの旦那が?」


「うっせ」


 おろ、アデルの喋り方が何時もと違う?

 何時もはもっと取り繕った感じで、多少カッコつけて居る様な感じなのだけど、今は素なのかな?うーんどうなんだろう。つい何となく見詰めているとアデルはほんの少し目の下を染め、居心地が悪いのかそれとも不味いと思ったのか。軽く咳き込んで顔を引き締め、次の瞬間染まった頬が元に戻った。


「兎に角、反省の色がないアガーテは物品だけでもいいから詫びを入れろ。と言うか品物だけでいいから詫び入れろ。どうせお前は口が上手いから、そうでもしないと詫びにもならんだろ」


「酷いにゃー!恐喝にゃー!横暴にゃー!人非人にゃー!って蜘蛛さんでしたー!」


「酷いのはアガーテであって、横暴ではない。お前は過去も詫びろといっても口先三寸で煙に巻いて逃げて行ったし、俺はあの件は二度と忘れねぇぞ。まともに謝罪しろと言っても上辺だけ、心を込めて謝れと言っても言いくるめて逃げる。これでも長い付き合いだからな、お前の事は心底呆れ果てた意味で分かっている。文句を言うなら今後は慎め」


「はいにゃぁ~…トホホ。全くアーデルベルトの旦那は相変わらず手厳しいにゃぁ」


「そう思うなら二度とレーベルに振れるな、触るな、弄るな」


「はいはい、はふ~…で、何時拘束解いてくれるかにゃ?」


「はっ。お前の事だからとっくに自力で解いてるだろ」


「うわ~其処までバレてるにゃ~。流石アーデルベルトの旦那にゃ」


 すると、スルリとそれまでアデルの配下達の蜘蛛の糸に拘束されていたアガーテと呼ばれている黒猫はその場に立ち上がり、


「可愛いお嬢ちゃんに坊っちゃん、擽りの刑さんきゅー♪痒かったにゃ~ん」


「えっちぃ、にゃん、こ、縄抜け?」


 パチクリと言った形でルクレツィアが何度もシパパパパと瞬きを繰り返す。

 だがアルフォンソだけはルクレツィアの前に立ち、アガーテを警戒し始める。

 流石騎士として召喚されただけの事はある。

 だが背後。

 ルクレツィア、すっかり頬染めて両手を添えてイヤンイヤンと悶えている。


 更に…うん、センギョク落ち着け。

 そしてセンギョクが口を開く前にシユウがセンギョクを踏んだ。

 そんなセンギョクを引き摺って部屋の隅に置きに行くコウテイ。何だろう、すっかり妙な連携が出来上がっている。


「そう人を警戒しなくても良いにゃーん。私は悪い子じゃないにゃーよ」


「えっち、い、にゃん、こ」


 ビシッ!とルクレツィアが指を指す。


「それを言うかにゃーん」


 ガクーンッと肩を落とし、何だか小さな声で呟いている。

 その声を私の無駄に高性能らしい耳が拾ってしまったのだけど…


「(あああ、ロリ・ショタ属性所持してないけどこれはこれでまた…)」


 落ち着けアガーテ。

 そして目の前をよく見て欲しい。

 ナリは小さいけど結構腕あるぞ眼の前のアルフォンソは。

 そのアルフォンソがあきらかに敵意を醸し出しそうになって居て、懲らしめる為に放置して居ようかと思ったけれど、剣の柄に手を伸ばし始めた為に目が離せなくなる。

 どうしようかと思っていると、


「んじゃ、この針と糸も没収だな~」


「ひぃぃぃ!アーデルベルトの旦那ぁあああ!それだけはっそれだけは勘弁ッ!そのお裁縫道具は相方が拵えた世界に一つしかない品にゃあああ!ソレ取られたら相方に殺されるにゃあああああっ」



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