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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第三章 巻き込んだ男と巻き込まれた少女
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<C14> お風呂で洗いっこです

††


 フライの街での滞在4日目。

 

 食事の後、いつもどおりに繁華街に繰り出すというニトロ達を見送り、俺はルミを連れて部屋に戻った。

 

 奴らの酒に付き合うのはゴメンだ。レヴィが名残惜しそうな顔をしていたが、お前が一番酒癖が悪い。なんど襲われかけたことか。

 

 で、部屋に戻りさっさと風呂に入っていた。


 もちろんルミも一緒だ。コッペルもいたりする。

 

 ルミはコッペルを泡だらけにして遊んでいるが、コッペルはそれがお気に入りのようだ。気持ちよさそうな顔をして、ルミの手に身を委ねている。


 コッペルの泡を落としてやったら、ここからが大変。


「クゥーーッ」


 体を思い切り震わせながら回転させ、風呂場全体に水が飛ぶ飛ぶ。まるで脱水機だ。


「きゃーーあはははぁぁ」


 ルミが喜んでるし。俺は背を向けて知らんぷり。


 そしてすっきりしたところで、コッペルだけ出してやる。

 

 さて次はルミの番だ。幼児体型そのもののルミの身体に石鹸で泡立てて洗ってやる。

 

 吸血鬼ってのはそもそも体を洗う必要があるのだろうか、と思うのだが。吸血鬼の出てくる映画では、あまり入浴シーンを見たことが無いし。


 まあ本物を見たのはこの世界が初めてなんだから、とりあえず洗ってやる。


 肩まで伸びた髪を石鹸で洗ってやり、体も石鹸をつけて洗ってやる。


 全身泡だらけにしたルミを洗ってやると、やたらジタバタくねくねとしている。


「くちゅぐったぁぁぁ」

「だーめ、ちゃんと洗わないと体が臭いから、ね。」


 何せタオルもスポンジもないから、たっぷりと泡立てて手で直接洗うもんだから、かなりくすぐったいようだ。

 

 暴れるルミを抱きしめて、2人して泡だらけになって………ほんとこんなときって昔を思い出す。アマンダとも一緒に風呂に入って、洗いっこした。


 ダメだな~、目に石鹸が入ったのかな、ぽろぽろ涙が出てくる。



 ちゃんと隅々まで洗ったあと、シャワーで石鹸を落としてから、ルミを湯船にいれてやる。


 最後に俺も身体を洗い、ルミと湯船に浸かって、のんびりとしたひと時だ。


 風呂から出るころには、すっかり眠くなって、ふらふらとしてるルミを拭いてやる。


 流石に血も吸ってるし、風呂で温まったしで、眠気が最高潮のようだ。


 コッペルはすでにベッドの上で丸くなってる。

 

 服を着せたルミにベッドまで行こうかと誘い、コッペルの横に寝かせ、頭を優しく撫でてやる。

 

「うふ~~」


 可愛らしい顔をして、気持ちよさそうにしているので、鼻歌を歌いながら背中をとんとんとしてやると、瞼が閉じていき、口が少し開いて寝息を立ててしまった。

 

 うん、幼児は容易いぞ。


「コッペル、頼むぞ」

「……クゥ。」


 こいつもほとんど寝てるが、まあ大丈夫だろう。


 俺はルミを起こさぬように、そぉっと部屋を出て、階段を降りていった。


「何処に行くの?」


 ふと視線を向けると、宿のロビーに設けられたカフェテリアでアリスがくつろいでいる。向かいにはクリフも座っており、2人で食後のお茶を楽しんでいたようだ。


 いつも一緒に居るはずのマリアの姿が見えないが、部屋で片付けでもしているのかもしれない。または風呂の用意だろうか。


「このあいだ話したドワーフの店にいくんだ。」

「ルミちゃんは?」

「もう寝かしつけた。コッペルもいるから平気だよ。」

「そう……」


 アリスは思い出した様に頷くと、席を立った。


「クリフ、ちょっと所用を思い出しました。」

「……ジュンヤについていくのかい?」


 ちょっとクリフが不服そうな顔をしている。なんか気まずいなぁ。


「良ければご一緒に参りますか?」


 アリスはあっさりと言うと、クリフがちょっと気まずそうな顔をした。


 俺と良からぬことを、等と疑ったのかもしれないが、それをあっさり同行を許したアリスに、どうにも気まずいようだ。


 確かにここのところ、互いに転生者とわかってからは、会話の頻度も増えているしな。わりと砕けた物言いをしてるからな。余計に親密に見えるんだろう。

 

 疑われるようなことも、多少は否めないところだ。アリスも俺に対して気やすいのもあるか。


 俺もアリスのことは言えないかな。


「行き先だけ教えてくれるか、何かあったら……」

「それもそうですね。ドワーフが経営している武具の店です。そのドワーフに興味がありまして、ジュンヤが今日約束しているので、同行させてもらおうかと。」

「ドワーフの店か、なるほど、アリスが興味を持ちそうな店だね。気をつけて行っておいで。」


 クリフが快諾し、アリスはにっこりと微笑んだ。


「ジュンヤ、お待たせしました。参りましょう。」


 俺は首肯し、クリフに軽く一礼してからアリスを連れ立って宿を出て行った。


「なんか気まずかったぞ。」

「なーにいってんの、構わないわよ。」


 店を出るなり、アリスがいきなりぶっちゃける。俺と2人の時は現代的というか日本的な話し方に戻ってる。


「それに1人じゃないしね。」

「え?」


 俺は意味がわからずに聞き返すが、アリスはくすっと笑ってそれ以上答えてはくれなかった。なんか隠してるのか?

 

 まあいいや。別にやましいことは無いんだしな。




 流石に大きな街だけ有り、街路には街灯が照らし、それほど暗いことはない。

 

 治安も悪くないのか、人通りもあり、また時折街の警備兵の巡回も見受けられた。

 

 やがて特に何事もなく、ドワーフの店に到着する。


「こんばんわ。」


 俺は店に入ると、受付に座っているランバートに向かって手を上げた。

 

「おっと約束通り来てくれたか、オヤジが待っているぜ……とその人は?」


 ランバートが笑顔で迎えてくれた。だが、俺の後ろに立つ仮面の少女を見て不思議そうな顔をする。やはり仮面は珍しいよな。


「ああ、この人は俺の知り合いでね。ちょっと訳ありで仮面を被ってるが、変な奴じゃないから」

「アリスと申します。」


 アリスが軽く頭を下げて挨拶する。


「ああ、そうか。まあいいや、来てくれ。」


 ランバートはちょっと変な顔をしているが、とりあえず俺とアリスを通してくれた。


 案内されて奥の間へ行くと、ランスがまっていたが、やはりアリスの仮面を見てぎょっとした。当然なように何だこいつは、みたいな顔をしている。

 

 例の和室に通されたアリスは、ランスに挨拶をしたあと、部屋の中を見て、呆気に取られたかのように、ぼーっとしていた。

 

 俺も少し伝えはしたが、やはり自分の目で見るとそうなるだろうな。こんな異世界で現代日本でも滅多にお目にかかれない、純和風の室内だ。流石に驚いているようだ。

 

 

──まるで昔の日本の和室見たい……


 

††

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