↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第二章 運がなかった私は皇女になったけど、戦闘系で行きますっ
62/109

<K22> 私はアイツを知っている

※ 4/23 ジュンヤ編(第一章)とアリス編(第二章)を再構成しています


††


 昼食タイム。

 

 折角のお父様と一緒にお食事だというのに、私の腸《はらわた》は溶鉱炉のように煮えたぎっていた。

 

 クリフ君が負けたからではない。あれは仕方ない、力量に差がありすぎた。怒っているのは、ザックの態度があまりにも失礼だったからだ。

 

 騎士としての彼は強い、それは認める。練武場で大公の子息であろうと、遠慮無く打ちのめすのも構わない。

 

 だが、奴のクリフ君に対するあの態度は許せぬ。さらに日々聞かされる蛮行、そして騎士にあるまじき態度が許せない。まして私にはあの少女の声が耳から離れない。自分が死ぬかもしれないのに、なのに……


 パキッ


 手の中で銀製のフォークが折れてしまった。


「アリス様……」


 マリアが慌てて寄ってくる。

 

「ご、ごめんなさい……」


 慌てる私はお父様をみると、お父様は厳しい表情で、私を見ていた。

 

「落ち着きなさい。アリス。」


 お父様が静かにおっしゃられた。

 そうだいっそお父様に言いつけてしまえば、いい。

 

 お父様だって見ていたはず。クリフ君へのザックの無礼な態度を。そもそもクリフ君もクリフ君だ、ザックに何を云われたか知らないけど、頭に血を上らせて斬りかかって返り討ちにあうとか、バカですか。


「お父様!私は──」「戦場に於いて、将として立つものは、常に冷静であらねばならぬ。」

「……あ、えと、はい、お父様」


 将……お父様は何を言いたいの?

 

「クリフも何を煽られたのか知らぬが、言葉如きで熱り立つとは、まだまだ青い。アリスはその辺り、どうかな?」


 お父様が優しく微笑んで見ている。私はなんと返したら良いのかな。確かにクリフ君は戦闘の最中に、ザックとの会話で我を失ってしまった。


 敵の術中にハマるなんて、まだまだ青いとしか言えない。でもどんな無礼な事を云われたんだろう、歓声が煩く良く聞きとれなかったけど、クリフ君があそこまで熱り立つなんて……


 怒りでザックの動きが見えていなかったのだろう。では自分ならどうなのか。怒りを内に押し殺し、冷静に対処できるのだろうか。


「……はい、まだまだ未熟者かと……」


 私は頭を垂れて応えた。


「そうか、アリス。自分の未熟さが解っていれば良い。」


 お父様……

 

「私からは何も言うことはない。勝ち抜いたお前の姿を見せておくれ。」


 私……涙腺崩壊!ぶわっ!


 どーもお父様にお声を掛けられると、ほんと駄目だ。

 

 考えてみると前の人生でもこんな感じだったかも。お父さんはいつもお仕事で居なかった。朝起きた時には居なくて、夜寝てから帰ってきてた。


 顔を見れたのは、陸上部の朝練があるときだけだった。


 だからお父さんと少しでも会話したくて、頑張って朝は早起きして自主練してた。


 そんな私にお父さんはいつも優しく励ましてくれた。


 そっか、私ってファザコンだったんだ。

 

 それじゃファザコンらしく、お父様に私の実力見せてあげよう。

 本当の実力を……

 

 

◇◇

 

 

 午後から始まった試合を淡々とこなし、次は第一練武場での決勝となる。ここで勝てば第二練武場のトップと、優勝争いとなる。


 前の試合は時間を掛けなかった。闘気を最大限に放ち、ザックの手駒が反則じみた攻撃を仕掛けるも、あっさりと跳ね除けた。


 そしてザックの試合。


 彼はこの試合を勝ち抜くと、私との決勝になる。


 しかし彼は解っているかのように、私をにやにやと見ていた。まるで全身を舐めるように見つめてくる。


 そうだ、いつも気が付くと見ていた時のように。


 そして当たり前のように平民クラスの対戦相手を、やり過ぎな位に打ちのめした。いや元から対戦相手はビビっていたのだ。


 常日頃から奴に暴力を振るわれてきたのだから、戦う前から勝敗は決して居るようなものだ。


 次は私だと言わんばかりに、剣を向けてニタリと笑った。


 こいつはいったい何を考えているのか。いくら練武場では無礼講とは言え、私は皇女であり、そしてさっきお前が蔑んだのは大公なのだ。


 奴の親はいったいどんな教育をしてきたのか。練武場でのこととは言え、大公閣下のさじ加減次第で家を取り潰しにされることだって有る。


 貴様の暴言や不遜な態度に大公閣下がお怒りになり、お父様に進言するかもしれないのだ。




 あのあとクリフ君とは話していないから、試合中にザックが何を言ったか、何故クリフ君が激昂したのかは解らない。


 ただ今は冷静に……そう、お父様の言うとおりに、冷静に試合を進める……


 お父様にはそう云われた。だが奴と対峙したとき、私は冷静さを保てるのだろうか。


「アリス様」


 センセが私を呼ぶ。

 

 第1練武場の決勝。


 相手は大商人の息子。ザックの取り巻きの1人だ。どこか厭らしい下卑た顔。ザックのおこぼれにでも預かっているのか。


 奴に隷属して満足しているのか。


 苛々としむかむかとしてくる。


 冷静になれ。


 私は殊更に冷静になろうとした。


 怒りそのままに対戦相手を傷つけてはいけない。


 だから───



 無理っ



「はじめっ!」

 

 センセが合図する。


「縮地」


 開始早々に縮地のスキルを発動させ、剣を振った。


 ズバーーーンッ


 剣は大商人の息子の身体を袈裟懸けに斬り、ふっ飛ばす。肥った身体は転がることもなく、練武場の端まで飛び、転げ落ちた。


 きっと彼には何が起きたかすら解らない。


 センセには見えていたようだけど、突然の事に呆然としている。


 私は剣をザックに向ける。

 

「休む暇など不要っ!ザック、練武場に上げってこいっ!キサマの性根を叩き治してくれるっ!」

 

 私の怒鳴り声が響き渡った。

 

 ようやく何が起きたか解ったのか、会場がざわめきだした。

 

 ザックは不敵に笑みを浮かべると、両手剣を担いで立ち上がり、私へ厭らしい視線を絡めると、ゆっくりと練武場へと脚を進めた。

 

 ごめんなさい、お父様。冷静に成れません。

 

 

◇◇

 

 

 第一練武場には私とザックが対峙している。

 

 センセはちょっとオロオロしているが、当のザックはにやにやと私に睨めつく視線を絡めてくる。


 この視線、ゾッとする。

 

 まるで性犯罪者のオヤジのような視線。

 

 だけどこれ、何処かで見たような視線だ。そうだずっとそう思っていた。

 

 どこかで──私はこいつを知っている。

 

「へっへっへ、やっと皇女様とごたいめ~んか。なかなか潰し甲斐がありそうだ。どーせなら別の場所でやっちまいてぇけどな。」


 この恥知らずな言葉、態度。私の中で怒気が闘気となって、湧き上がり立ち上ってくる。


「皇女に対しての無礼な言葉、地獄で悔いるが良い。」


 長剣をぶらりと垂らしたまま、奴を睨みつける。

 

「ったくつれねーな。そんなに俺が気にくわねーなら、この命くれてやるぜ、どうよ、俺と賭けをしねーか?皇女様。」

「命を賭けるとでもいうか?」

「そうだよ、まああるわけないが、俺が負けたらこの命をくれてやる。だが俺が勝ったら、あんた俺のものになれよ。」

「………貴様……」

「へっへっへ」


 ザックの顔が厭らしく歪み、私は……切れた。


「貴様の命──この場で刈り取ってくれよう。」


 途端にセンセが慌てだした。

 

「アリス様、ザック様、ここは武器術の試合の場、そのような決め事をされる場ではありません。」


 焦りながらセンセが言うのだが、ザックはまるで聞いていない。当然私もだが。

 

「い~目をしてやがる。嬲り甲斐があるってもんだ。なんなら真剣でやるか?と言いてぇがあんた殺しちゃったら、嬲れないからなぁ、ここはこいつでいいか。」

「私は構わぬぞ、貴様のそっ首、叩き落してくれる」

「気の強い女は好物だぜ、女は侍女も町娘も抱いてきたが、まだ貴族の女は子爵までしか抱いてねーんだわ。だからよ、上級貴族の皇女様を抱いてみてーんだわ、まだ餓鬼っぽいけどな。俺ので突かれたら、どんな顔するか楽しみだぜ!ぎゃはははははっ!」


 何だこいつ。ほんとに最低だな。しかし身長は170センチを超えているだろうし、大人と体格は変わらない。私とは20センチ以上も身長差はある。

 

 こいつ、マジか?

 

「てかったくよ~。よりによって子爵だからな、最下級より増し位の貴族だぜぇ?王子とかならやり放題できたってのに、あのくそったれ女神のせいでしょぼいしょぼい。」


 なんと言った?


††

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。