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ドジな女神に不死にされました  作者: 無職の狸
第二章 運がなかった私は皇女になったけど、戦闘系で行きますっ
61/109

<K21> ザックとクリフとアリス

三者三様というのでしょうか?


※ 4/23 ジュンヤ編(第一章)とアリス編(第二章)を再構成しています


††

 

 試合は順当に進んでいく。


 第2練武場に視線を向けると、次はクリフ君の順番だ。

 

 きっと順当にクリフが勝ち上がるはず、私はそう予想していた。

 

 しかし────


「はぁっはっはっはっはっはっ、待ちかねたぜぇクリフよぉ!」


 そいつは練武場で高笑いした。

 

 クリフ君の対戦相手、ウルフスタン子爵の嫡子ザック。

 

 12歳にして身長170センチを超える巨漢だ。かと言って太っているわけではないが、まるで大人のような体つきをしている。


 嫌悪感が込上げてくる。この場で飛び出し、私が奴を打ちのめしてやりたい衝動を抑えこんだ。


「ザック、貴様の噂は耳に挟んでいる。ここで貴様の性根を叩きなおしてくれる。」


 やはりクリフ君の耳にも届いていたのか、彼は鋭い目つきでザックを睨みつけた。

 

「へへへ、こりゃまた大公様のご子息だぁ、正義感があるねえ。だけどいいのかぁ?遠慮はしないぜ、なんせ皇女様が身分に関係なく、全力で戦う事を許可してくれてるからなぁ。」


 金色の髪をかき上げ、顔を歪ませ笑みを浮かべるザック。

 

「望むとろこ、我が全力で貴様を叩き潰す。」


 クリフ君が闘気を放ち両手に剣を構えると、ザックも両手剣を構えた。


「せいぜい気張りな?遊んでやるからよぉ!」


 奴の憎々しい言葉にセンセも眉間に皺を寄せ、早々に試合を開始した。


「はじめっ!」


 クリフ君が素早く奔り攻める。

 

 両手に左手の剣がザックの両手剣を跳ね上げ、隙をつくったところを右手の剣が斬りつける。

 

 しかしザックはその大柄の身体からは、信じられない程に軽やかに動いた。

 

 バックステップからの横薙ぎ、さらに袈裟懸けにと自在に両手剣を操り、クリフ君を翻弄する。

 

 しかしクリフ君も負けては居ない。両手剣の剣戟の合間をぬって攻め立てた。

 

 だがザックは次々に繰り出されるクリフ君の剣戟を躱し、さらに両手剣を片手にもって、ショートソードでも使っているかのように攻めてくる。


 早い斬撃を受け止めるクリフ君、その都度顔が歪んだ。


「ほらどうしたどうしたぁ、大公様ぁ?こちらへおいでよ、アンヨは上手かなぁ?」


 クリフ君を愚弄する言葉を吐き、嘲笑い、クリフ君を翻弄した。


 クリフ君がバランスを崩したところを、ザックは上段から打ち下ろす。クリフ君は重い斬撃を、剣をクロスさせて受け止めた。


 ぎりぎりと剣が噛みあう音を発し、ザックは嘲笑う様にクリフ君を見下ろす。


「へっっへっへ、悪いけどよ、俺があのお転婆皇女を頂いてやるから、安心しな?」

「な、なにっ!」

「あの女を組み敷いて、ひぃひぃ鳴かせてやるって言ってんだよ、アイツはどんな鳴き声を出すか楽しみだぜ!ぎゃははははっ!」


 ザックの暴言にクリフ君の心が揺れた。そして信じられない事が起きた。

 

 クリフ君を突き放したザックは、両手剣を両手で握ると、ツェザーリ君以上の膂力で振り回し、クリフ君を吹き飛ばしたのだ。

 

「うそっ。」


 私は思わず声を上げた。


 凄まじい膂力から繰り出された両手剣、空気を切り裂き、斬りこんだクリフ君に向かったのだ。

 

 クリフ君は辛うじて2本の剣で受け止めたが、奴の両手剣を停めることができず、剣もろとも弾き飛ばされてしまったのだ。

 

「うわぁぁっ!」


 弾き飛ばされた剣が練武場に転がり、クリフ君は床に転がった。

 

「はっはっはっはっ、だらしねぇなぁ。上級貴族クラスのNo.2というからもっとやるかと思ったが、大したこたぁねえな。クリフさまぁあ?」


 ザックの傲岸不遜な態度にクリフ君はぎりっと歯を噛み鳴らし、両手剣を肩にのせてニヤつくザックを睨みつけた。

 

「ほれほれ、待っててやるからよ~~、とっとと剣をとりな。」


 ニヤニヤと笑うザックを睨みつけ、クリフ君は剣を取り構えた。

 

 ザックは強い、確かに強いと認める。だが──


 奴の言う通り、私は今回の試合は、身分は関係がないと告げた。だが貴族として、騎士として品性も嗜みも無いザックに、腸が煮えくり返る思いだった。いやもう我慢できない。


 私はゆらりと立ち上がり、腰の得物に手をかけた。


「そこまでだ。」


 センセが2人の間に割って入った。ちょセンセ、なんで止めるの。クリフ君まだ戦えるのに。

 

「先生!俺はまだっ!」


 クリフ君も食って掛かった。確かに怪我をしたわけじゃない。

 センセは何故停めるのか。停める意味が解らない。


「この試合、クリフ様の負けです。」


 センセはクリフ君へ視線を向け、毅然とした態度で言葉を放つ。


「何故です!私は傷ついておりません。」

「はい、ですが仮にこの場が戦場であれば、剣を離し地に這った所で、貴方は止めを刺されていたでしょう。」


 センセが言うとクリフ君は何かを言い返そうとするけど、二の句が出ないのか、顔を伏せた。

 

 確かにそうだけど、納得出来ない。いや納得したくない。


「ざ~んねん、もうちょっと甚振ってやりたかったのになぁ。」


 ザックは悪びれた様子もなく、ゲラゲラと笑っている。あああ、ムカつく。

 

「ザック様、言葉をお改め下さい。試合は終わっています。これ以上はクリフ様は大公のご子息、言葉遣い一つ貴方の首が跳びますことをお忘れなく。」


 センセがザックへと顔を向けて、それもかなり厳しい顔つきで告げた。先程からの振る舞いに、相当頭に来ているようだ。

 

「へーへー、わかりましたよ、せ・ん・せ」


 ぐぬぬぬぬ、この場で強権発動して~~お父様の手前では難しいか。でもムカつく、まじで殺してやりたい。

 

 でも、センセが止めたのは、正直に見れば正しかったと思う。

 

 クリフ君は剣を飛ばされ地面に這いつくばり、剰え罵声で頭に血が登っていた。

 

 クリフ君には悪いけど、ザックは強い。クリフ君との実力差を考えれば、正解だったかもしれない。

 

 あのまま続いたら、本当に嬲られていたかも知れないのだから。


 実力は認める。でも、ザック。

 

 貴様は私が──ぶっ飛ばす。


††

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