表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/29

 ミアはお金を稼ぐために、人間界に来た。

 人間界に、夢や希望なんて持っていなかった。


 でも、今のミアは人間界が好きだった。

 生きるのがとても楽なのだ。

 仕事をしてお金を稼いで。

 その積み重ねが、ミアの自信となっていた。


 ――「探していないだけだろう? 世界は、ここだけじゃない。君が生きやすい場所だってあるはずだ」


 あの日のジャスティンの言葉は、今やミアの言葉でもあった。


 自分が生きやすい場所を、ミアは探していないだけだった。

 探すなんて考えさえなかった。

 生まれた場所に一生いなくてはならない。

 誰に言われたわけでもないのに、そう思っていた。


 選択肢はあるのだ。

 それに、気が付かなかっただけなのだ。


 ミアはリックをまっすぐに見た。

 初恋のリック。

 ずっと好きだった人。

 少女時代のミアの心の支えだった人。


「あのね、リック。私はゆるさないよ」

 リックが驚いた顔でミアを見つめる。

「ゆるしたって言葉も言いたくない。そんなことしたら、わたしの心が死んじゃう」

「……ミア、しかし、それではイレインやエディがかわいそうだ」


 傲慢な優しさで、ミアを責めるリック。

 彼の苦しそうな顔を見ても、ミアは悪いなんて思わなかった。


 ただ、残念だなと思った。


 ミアはリックとは違う場所に立っていた。

 見ている景色が違った。

 その事実をミアは、そのままを受け入れた。







 リュクが帰った部屋の窓を、ミアは全開にする。

 風が入る。

 心が洗われる。


 さて、お仕事だ。

 また今日も、ミアの客がお金を持ってやって来る。

 そして、そのあとには、ジャスティンも来るだろう。


 フルーツケーキを焼こう。

 レーズンをたくさん入れた。

 たまには、彼にミアが作ったケーキを出してもいいかもしれない。



 あの夜、ジャスティンから頭にキスをされたミアは、自分でも驚くほど顔が真っ赤になった。

 ちゃんとしたキスをしたときよりも、恥ずかしかった。

 それに、また、もぞもぞとした気持ちになった。


 ミアは自分の気持ちの変化も感じていた。

 ジャスティンが来るのが楽しみなのだ。

 彼の顔を見たいと思ってしまうのだ。

 そして、そんな自分が嫌じゃなかった。



 ミアはジャスティンがフルーツケーキを前にしたときの表情を想像した。

 どんな顔で彼はケーキを食べるだろう。



 それを想像すると、ミアの心は躍った。




◇ おしまい ◇





きりがいいので、一旦ここでエンドマークに。

ミアの成長が描けてよかったです。

ではでは。

また、お会いしましょう!


仲町鹿乃子


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
web拍手 by FC2
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ