92.転生者
その後も治療のためにバタバタと走り回っていた。ベットに寝ている人は全員お腹に穴が空いていたようで触手が飛び出ていた。
落ち着いたのを確認し治療を終えるとその後は冒険者ギルドにいた軽症の人達の治療をすることになった。
「エリアヒール」
ニアの回復魔法に今度はローガンだけではなく、ロビン……いや冒険者達みんなが驚いていた。
「ニアちゃんエリアヒールも使えたの!?」
「あっ……そうみたいです」
「すごいだろ」
「ふふふ、お兄ちゃんが褒められてるわけでないのに嬉しそうだね」
兄としては妹の活躍が嬉しくついつい自慢したくなってしまう。
一通り回復魔法をかけ終えるとスタンピードについての話となった。
「前回のスタンピードはネクロマンサーによるアンデットの侵略だったから夜に攻撃してきたけど今回は逆なのよね」
「ああ、しかも魔物の種類がバラバラだしいつ襲ってくるかもわからないからな」
「そこが問題なのよね! アンデットなら光属性魔法に弱いけど対策の仕様がないのよ」
ローガンとロビンはスタンピードを引き起こしてる原因を探っているようだった。
「ウォーレンちゃんはどう思う?」
「どうって……」
俺は気になっていることを2人に話すことにした。
「さっきロビンさんが魔物の種類がバラバラって言ってましたけど、大元はスライムですよね?」
「……」
俺の発言に2人は固まっていた。俺は何かおかしなことを言ったのだろうか。
「おい、ウォーレンそれはどういうことだ?」
「えっ、だってガロルさんも魔物も鑑定すると出てくるのはスライムですよ? あとはベッドに寝ている人達もスライムに侵攻されてました」
俺は基本的に魔物と戦う時は鑑定するようにしているが、今回どの魔物にも共通してスライムと表示されていた。また、ガロルを見た時にも同様な表示がされていた。
「多分触手が出てる人はスライムになっているんだと思いま――」
「ウォーレンちゃんよくやったわ!」
「おい、それぐらいにしておけよ」
「あら、ごめんなさいね」
勢いよく抱きついたローガンに俺は絞め殺されそうになっていた。若干意識が失いかけたよ。
「それでそのスライム情報を教えてもらってもいいか?」
「ガロルさんと冒険者についてた触手でいいですか」
俺は鑑定で見たスライムのステータスを紙に書いた。
《ステータス》
[名前] スライム
[種族] 魔物/転生者
[能力値] 力C/A 魔力C/S 速度C/A
[スキル] 吸収、分離、擬態
[状態] 本体から分離した個体
《ステータス》
[名前] スライム
[種族] 魔物/転生者
[能力値] 力E/A 魔力E/S 速度E/A
[スキル] 吸収、分離、擬態
[状態] 本体から分離した個体。現在吸収中。
スキルは同じだが能力値は宿主に入っている個体で変化があった。また、ベットに縛られている冒険者のみ冒険者とスライムどちらともステータスが表示されていたのだ。
「こいつ#も__・__#転生者なのか」
ロビンは紙を見るとどこか頭を抱え込んでいた。
「転生者ってそんなに問題なんですか?」
「いや、転生者はスキルを多く持ってるから人格によっては優秀なんだ。 ただ、それが犯罪者や魔物にいるとなれば……」
近場にいる転生者といえば一緒に王都に来たルースがそうだった。彼女は俺に秘密にしておいてと言ったのはそういう理由なんだろう。彼女も変わり者だが悪い人ではない。
「前のスタンピードを起こしたネクロマンサーも1人で起こしたものなのよ」
「しかも"魔王"になるとかわけのわからないことを言っていたな。 転生者の多くは"俺TUEEE"って言う奴が多くて自身の力に自惚れるやつばかりだ」
俺に言うようにローガンとロビンは話していた。転生者にしかわからない言葉があるのだろう。
ルースもいつも"壁になりたい"ってわけのわからないことを言うのも納得できる。転生者特有の何かなんだろう。
「でも転生者を倒すのにどうすればいいんですか?」
「そこが問題よね。 普通のスライムには剣も打撃も通用しないから魔法で対処する……ここに最強の魔法使いが居たわ!」
ゴードンは何かに気づいたのかニアを見ていた。
「私ですか?」
「ええ、さっきの回復魔法もすごかったけど、ここに来るまでの氷属性魔法の威力はすごかったわ」
「たしかにニアのアイスシールドとダイヤモンドダストだっけ? 敵を凍りつけにはできなかったけど強かったもんな」
「へへへ、これでお兄ちゃんを守れるね」
「そうだな」
俺はニアを撫でていると隣で拗ねている子がいた。
「オラは魔法使えないからさ……」
椅子に小さく座り込んでロンはこちらをチラチラと見ていた。
「そんなことないぞ? ロンも俺より強い……そうだよな……この中で俺が1番弱いもんな」
正直言って俺がこの中で1番弱いだろう。
「もう、お兄ちゃんが落ち込んじゃったじゃんか!」
「オラはそんなつもりなかったよ?」
「どうせ俺なんて……」
俺は次第に憂鬱な気持ちになっていた。
「あらあら、1番めんどくさいのは兄ってことね」
「ああ、そうだな」
「お兄ちゃんは強いよ!」
「そうだよ。 採取はにいちゃが1番だよ!」
「どうせ採取しかできないですよ……」
気分が落ち込んだ俺はその後もしばらくは2人に慰められることとなった。
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