121.荒野
俺が住んでいたジェラリー村に近づいてきた。時折馬車乗り継いで移動したり歩いたりと道のりは大変だ。
「お兄ちゃんおはよう!」
「ああ」
「最近悪い夢ばかり見てる?」
「疲れが溜まっているんだな」
ここ最近故郷に近づいてきているからなのか、妙に昔のことを思い出す。
あいつと遊んだ日々やスキルを授かった日、勇者として諦めた日、ポーターとして誘われた日など全ての記憶が蘇るようにリアルな夢を見る。
いつになってもあいつに縛られてばかりなんだと俺は思った。
「ねえ、にいちゃ……あの先何にもないけど……」
ロンは俺の肩を叩き、どこかを指差していた。
急に何もない荒野が現れた。ああ、俺が拾われた馬車だとすぐに実感した。
「ここは昔魔王が山を吹き飛ばしたって言われているところなんだ」
「魔物!?」
「そう、魔王は実在していたらしいよ」
魔王と勇者は物語でも語られるほど有名な話だ。そもそも冒険者ギルドの勇者という称号は功績を残したという意味だけではない。
魔王に対抗する手段がある人と国も認めた人にもらえる意味合いも含まれている。
「魔王はそんなに現れるものなの?」
「あー、どうなんだろうね。 最近現れたのは俺が小さい時でその前はずっといなかったらしいからね」
俺は生まれたばかりの時に魔王の襲撃に巻き込まれたらしい。その時近くにいた勇者が魔王を倒したと聞いている。
「でも山を吹き飛ばした魔王にお兄ちゃん戦える?」
うん、どう考えても山を吹き飛ばすやつに会ったら即死だろう。
「無理だな」
できても山を削るぐらいだ。金属なら俺の出番だしな。
「じゃあ、なるべく魔王には出会わないように気をつけないとね」
「そんなにポンポン出てきたら生きていけないだろ」
「確かにそうだね」
何もない荒野はどこか怖いほど虚しい風が吹いていた。
♢
荒野から一日馬車を進めると俺の故郷であるジェラリー村が見えてきた。
「にいちゃ、村が見えてきたよ」
「懐かしいな」
村は特に変わった様子もなく、昔と変わらない静かな雰囲気を出していた。
俺達は馬車から降りるとやけに視線が集まっていた。そういえばこの村に来る人は商人ぐらいだった。
「おい、そこの男と獣人止まれ!」
男は肉屋なのか大きな包丁を持っている。無愛想な顔だが面倒見が良く、奥さんの手料理が美味しかった……。
「ダンデさぁーん!」
俺は男に飛びつくと困惑していた。
「おい、お前……」
「あら、ウォーレンちゃんじゃないの」
奥からはいつも俺に手料理を作ってくれた奥さんとその隣には子どもが立っていた。
「ヘレンさん!? 子どもが出来てる」
「それはこっちのセリフよ? いつのまにかお父さんになったの?」
きっとロンとニアのことを言っているのだろう。
「ロンとニアは――」
「ウォーレンの彼女です」
「えっ!?」
ニアの発言に俺とロンは驚いて時が止まった。まさか"彼女"という言葉聞こえるとは思わなかった。
「ふふふ、ウォーレンちゃんも大人になったのね? そんなところでむさ苦しいおっさんに抱きついてないでこちらにおいで」
しばらく会わないうちにヘレンは変わっていた。あの当時は結婚したばかりだったが、数年経ってしまえばこんなに変わるのだろう。
ダンデも少し気まずそうにしている。
「ダンデさんも大変でしたね」
「ウォーレン……こんなに大きくなって――」
「あなた達早く来なさい?」
エレンの冷たい視線はダンデに向けられていた。
「女の人を怒らせたらだめですよ?」
ロンの一言にダンデは胸を押さえていた。やはり家族を作るって大変なんだと改めて勉強になった。
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