120.幼少期
今はルーン街から俺の故郷であるジェラリー村に向かっている。規模は小さく田舎でどこか静かな村は俺の中では居心地が良い村だった。
「お兄ちゃんは故郷に家族はいるの?」
「今はいないかな?」
「今?」
「あー、おじいちゃんとおばあちゃんに育ててもらったけど、すでにおじいもおばあも亡くなってるよ」
「そっかー。 ならしっかりお参りしないと行かないとね」
「……」
移動続きで疲れているのか、俺は気づいたら馬車の中で眠っていた。
♢
――約十年以上前
「今日も早く帰ってくるんだよ」
「大丈夫だよ! おばあはすぐに心配すんだから」
俺の祖母はとにかく心配性だった。いつも早くに帰ってこないとすぐに怒るから、それならと朝早くに遊ぶことにしている。
「そりゃー、可愛い孫だからね」
「行ってくるよ」
俺はいつもの集合場所に向かった。
「おっ、ウォーレン今日も朝から早いな」
「今日は勇者になってきます」
「ははは、それは頼もしいな」
勇者と言っても単純に村の子ども達で剣の練習をしているだけだ。
「おっ、ウォーレン来たか!」
俺を一番に出迎えてくれたのは村長の息子であるアドルだ。
彼はこの村の子ども達をまとめる中心的な人物で俺も昔から慕っている。
「今日はなにやるの?」
「んー、ウォーレンは何――」
「勇者ごっこ!」
「またかよ!」
俺は勇者ごっこが大好きだった。何よりもアドルが勇者役として木剣で戦う姿が俺の心を惹きつけていた。
「うわー、やられたー!」
「ウォーレン相変わらず演技下手くそだな」
「そもそも魔物が話したらダメだろ」
「えっ? 魔物って話さないの?」
「そりゃー当たり前だろ」
どうやら俺は魔物を勘違いしていたらしい。一緒に遊んでる兄弟同然の子ども達が注意してきた。
「おーい、そろそろ暗くなるから帰らないと行けないぞ」
大人達の声に俺達は帰る準備を始めた。
「あっ、嫁が飯を作りすぎたって言ってたから後でウォーレン取りに来いよ」
「えっ、ミロさんのご飯美味しいから嬉しい!」
「ははは、嫁が聞いたら喜ぶぞ! 毎回ウォーレンみたいな子どもが欲しいって言ってたからな」
村の中で俺はなぜかみんなに優しくされていた。
「そういえば俺の母ちゃんも今度ウォーレンが来るの楽しみにしてたぞ?」
「そうなの? またおばあ達と相談してから考えるね」
仲良く話しながら自宅に帰るのが日課だ。だが、ここ最近アドルの調子がおかしい。
「アドルどうしたの?」
「お前ばかり親がいないからって……」
「アドルどうしたの?」
まだ立ち止まっているアドルに声をかけた。アドルは俺の顔を見て冷たい視線を向けていた。
「何かあった?」
「お前ばかり……」
「俺が何かしたの? そうだったらごめんね。 俺はアドルが好きだから喧嘩したくないよ」
俺はアドルの手を握ると彼はいつも通りの表情に戻った。
「ああ、すまん」
「アドルも早く帰ろう」
アドルの手を握ると彼は優しく微笑み返した。
「やっぱりアドルみたいな兄ちゃんが居てくれてよかったよ」
「俺はお前みたいな弟いらないけどな」
「またまたそんなこと言ってー!」
振り返ったアドルの顔は夕日に隠れて見えなかった。その言葉が彼の中の本心だとは俺はずっと思ってもみなかった。
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