106.勇者の思い
王都の復興が進むにつれ今回の被害で出た遺体は一斉に焼却され、王都の中心には献花台が建てられた。
今回のスタンビートが起きた際に一目散に逃げた教会の人達が弔うのを市民が嫌がり、モーリンが魔法で遺体に火をつけた。
「人ってこんな簡単に亡くなるんだな」
炎は少しずつ遺体に燃え広がり、家族を失った者達は静かに泣いていた。
実際に大量の死体を見るまでは被害の深刻さを感じなかったが、山になった遺体を見ると胸が苦しくなる。
「それも定めというものだ」
台の前にいるメジストも亡くなった人達を追悼していた。
次第に炎が大きくなると火の粉はどこか光り輝いていた。
「綺麗だね」
火の粉は天を突くようにどんどんと空に舞い上がっている。死者が天に登っているようだ。
「あやつも粋な計らいをしよって」
メジストはどこか呟いていたが俺達は炎
ただただ眺めていた。
♢
弔いが終わると俺に気づき声をかけてきた女性がいた。
「#勇者様__・__#あの時はありがとうございました」
「じいじなんか言われてるよ?」
俺はメジストを見ると胸を張って得意げな顔をしていた。
「いや、錬金術師様ではなくて……」
声をかけてきた女性はどこか気まずそうにしているとモーリンが戻ってきた。
「あんたじゃなくてウォーレンに言ってるんだよ」
「僕ですか?」
「はい!」
女性は俺の顔を見て頷いていた。俺はいつのまに勇者と呼ばれるようになったのだろうか。
「あなたがいなかったら永遠に主人は縛り上げられたままでした。 本当にずっと辛い思いで見てたので感謝しています」
俺は感謝を伝えられているはずが、感謝される存在ではない。
「すみません。 ご主人を助けられなくてすみません」
俺は必死に頭を下げた。スライムと感情が共鳴された影響もあり俺の中では複雑だ。
「いえ、勇者様は謝らないでください。 私達はみんな感謝してるんです」
「そうだぞ! 俺は家内を助けてもらったし娘達は死なずに済んだ」
「僕もお母さんを助けてもらったよ」
「俺も!」
俺は顔をあげると沢山の人がこちらを見ていた。家族を失って悲しいはずがみんな笑顔だ。
「何があったかは分からんけど自分がやったことに誇りを持ちなさい。 これだけあなたに感謝している人がいるのよ」
たくさん聞こえる感謝の声に俺の目から涙が溢れた。
「お前がやったことは間違えじゃないから気にすんな。 俺なんて――」
「あなたは黙ってなさい」
モーリンに思いっきり叩かれるとメジストはその場で倒れていた。
「ははは、さすが大賢者様!」
「あんたも静かにしなさい! こんな老婆を見て笑うんじゃないの!」
「はははは!」
献花台の回りは沢山の笑い声で包まれていた。
「じいじ、ばあば……それにロンとニアにも聞いて貰いたいんだ」
俺の言葉に家族の視線が集まった。
「みんなに迷惑をかけると思うけど俺はもっともっと強くなりたい。 ここにいる人達が笑顔のまま過ごせるように守れるように強くなりたい。 だから心配かけるけどこれからもよろしくお願いします」
俺の言葉に家族は笑っていた。
「スキル玉ならいくらでも作ってあげるぞ?」
「魔法もポーションも私がいるから大丈夫よ」
本当に頼りなる家族だ。実際に俺の強さは家族の力で支えられている。
「じいじ、ばあばありがとう」
俺の言葉にメジストとモーリンも少し涙ぐんでいた。
「じゃあ、にいちゃを守るのがオラの役割だね。 オラももっと強くなってにいちゃが傷つかないように守るよ」
「私だって他の人をお兄ちゃんに指一本触れさせないよ」
ちょっとニアの言葉は意味が違うかもしれないが二人とも頼りになる俺の大事な家族だ。
「みんな本当にありがとう」
俺はみんなを強く抱きしめた。この日、俺は初めて勇者になることを決意した。
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