第五話
温度差?いつか書き直す可能性アリ。
☆
「ああッ!やっと繋がりましたぁあああぁ!!!」
通信用の魔石に魔力を流して応えると、驚くほど早く繋がった。しかも、ご本人である。
……おかしいな、早すぎる。信号を送ってから反応返ってくるまで本人が待機してたのか。
副団長なのに?
元職場が大変気になるんだが。
「よがっだ…助かりまじだ……アーガイレウス様が居なくなってしまってがら、ほんとに、ほんどにぃ……っぐす」
あまりの涙声に人選誤ったかなぁと遠い目をしつつ、自分の名前ってそう言えばそんなんだったと妙な感慨を覚える。生まれの大陸ではありふれた名前だが、前世でた45年も山田太郎だった自分には37年経っても慣れない派手な名前である。
「リーノハイル、落ち着いて要件を話せ」
溜め息混じりに言えば感極まったように捲し立ててきた。
現在は隠密の陣を敷いてあるため、シイラが一人で集落に留まっている状態だ。それを長引かせるのは避けたい。なので手早く話してもらえるのはいいのだ。が、早口でも一向に話が終わらない。
中規模非人道的人体実験の未遂事件などの細々とした問題は諦めてもらい、どうしても彼には手に負えない重要な案件のみを口述してもらうことにした。
「はい、わかりました……ええと、では、まず、サジュレン団長とイジャール第二師団長らが暇を持て余してしまい盗賊の拠点が八つ、手を出してきたタイファウス連合国やヤネージュ共和国の小規模自治領が全部で三つ壊滅しました。また、いつものように理由をでっち上げできる人的被害はともかく、真龍種を意味もなく一匹討伐されてしまいました……魔素の循環量が狂って魔術師団の第二師団以降で全力を尽くしましたが回復の兆候が見られません。このままでは神殿の調停者が派遣されかねないです」
……お、おう、予想の範囲だ。問題ない。
弟分がやらかすのは予想していたからな。むしろ、イジャールの馬鹿と二人だけで良かった。どっちも近距離格闘メインだからな……
大陸はまだ無事だし大丈夫。
でもな、リーノハイル。
本題に入った途端涙声じゃなくなってるぞ。まさか、演技じゃないよな……?
それより、まだまだ喋る勢いが落ちないってどういうことだ。重要な案件は一体何個あるんだ。俺は引き留めたいけど邪魔しちゃ駄目だから頑張ってお留守番するの、ってして待ってるシイラを早く迎えに行きたいんだよ。
「次に、ガダリア魔術師団長がアーガイレウス様から聞いたという女子会なるものを開くと張り切ってしまいまして?マリアレイナ女王、イレルビーシャ皇帝など各国の交流ある女傑を次々と連れ去りました。最早、最大の拉致事件として各国の連盟が形成されそうです。ガダリア魔術師団長以下、女子会参加者の直通通信は全て不通です。一応、アーガイレウス様とサジュレン団長からのは試していませんが……まあ、連絡を取るのは絶望的でしょうね」
何やってんだよあのオカマ野郎は!!
しかも、間接的に俺のせいみたくなってないか。
どうせマリアレイナ陛下に女装って言い出せなくて暴走してるだけだろ。なんで大陸全土巻き込むんだよ。
なんなの、なんでうちの連中は加減ができないの。
ありし日の火の海やらゾンビや魔物の大群がさっと脳内を駆け抜ける。……よく生き残ってきたなって自分を誉めたくなってきた。
「最後に技術研究班所長のレイファルガー殿なんですが、あの伝説のミドリガメを飼育していることが発覚してしまいまして。200年前にミドリガメの緑毒により国土を砂漠化されたマイワナ帝国から苦情という体裁の脅迫が来ています。周辺諸国からの批判も大きく、このままでは各地の拠点の維持が難しくなります。
しかし、レイファルガー殿は
『我が盟友から預かりしゴサイとムスメを渡すことなど出来ぬ!それに漸く研究結果が出てきたのだぞ?!これは革命だぞ!敵国を完璧に不毛の地とすることができるのだ。しかも、期間や規模も自由自在で後々に悪影響が出ないッ。世界征服できるぞ!!!』
とのことで、我々説得側の話は一切受け付けてくださいません。その上、レイファルガー殿がしっかりとアーガイレウス様の名前を出しているので、サジュレン団長は完全に傍観の構えです。どうしようもありません」
なんだと、ゴサイとムスメは無事だったのか?!って違う!ミドリガメか……え、俺の回想で出番終わりじゃなかったのかというのは置いておいて、かなり厄介だな。
それにしても、レイファルガーなんかと仲良くなった覚えがないぞ。
というか、ミドリガメ発見騒動で「当然、ゴサイとムスメも処分するが……むしろ何故大丈夫だと思えたのかね?私に可動死体の研究を安全面という面白味のないことで阻止しておきながら都合よく自分のミドリガメは飼おうなど……正直、生まれて初めて腹が捩れるという現象を体感しそうなのだが(冷笑)」って言ったのは忘れないからな。
俺がどんな気持ちでゴサイとムスメに別れを告げたと……ッ!!!
この世界で初めての癒しだったのに!
大体にしてあの屑研究者は一々人の物を掠め取っていくような研究ばっかりするから手に負えないのだ。
出会った切欠自体が傭兵として違う研究者の為の素材を採集してる時に新種を発見して依頼主に持っていこうとしていた時だしな。その時は弟分にぶちのめされて完全降伏していたが。
「……アーガイレウス様、聞こえていらっしゃいますか」
少しばかり考えていたところ、リーノハイルが声をかけてきた。
「ああ、聞こえてはいる」
そう、聞こえてはいるのだ。
「で、どうしましょうか」
どうしましょうか、だな。
もう何も考えたくないのだが。
「……ああ、とりあえず、最初の馬鹿二人には『宿題終わったのか』と伝えてくれ。それで時間稼ぎが出来るはずだから、その間に俺の愛竜に頼んでおくから手伝ってもらえ」
「……あの規格外の腐食竜ですね、わかりました。そちらはともかく、宿題、ですか?」
「アイツらの暇潰し用と抑止力として幾つか魔方陣とナイトツアー辺りの問題を出しておいたんだ」
「なるほど、団長が後生大事に抱えてる紙束ってそれだったんですね……。その魔方陣とナイトツアーは確かアーガイレウス様の故郷の遊びでしたっけ……でも、それって、その、団長たちにでも解けるんですか?」
「ぎりぎり解ける、かもしれないな」
弟分は背中に羽が生えているのではないかと思うほど整った容姿をしているのだが、困ったことに脳にまで羽が生えているとしか思えない馬鹿なのだ。
なんというか、そう、知能的なものが足りない。
どうにかして幼少期から叩き込むことでマナーと丁寧語は身に付けさせたのだが、基本的には成長してくれなかった。今でも弟分は「天使の様な見た目で立ち振舞いは整っていて丁寧に喋るけれど、一桁の掛け算を理解できるのがやっとな頭だよ!でも、大陸全土滅ぼすくらいは戦えるからプラマイゼロだよねっ!」な傍迷惑な存在なのだ。
お陰でどれだけ俺が苦労したことか。
「因みに、それが終わるまでは此方に連絡を出来ないよう細工した上、帰らないと宣言している」
「アーガイレウス様、帰ってくる気ないじゃないですか」
もちろんそのつもりだ。言わないけれど。
まあ、流石に嫁が見つかったら弟分に紹介くらいしなければいけないだろうし帰るつもりだが……これまでの分を含めて休暇は必要だと思うんだよ。
「それはともかく、ガダリアの件だが……リーノハイル、面倒事でしかないかもしれないが後任にお前を推すくらいには俺は信用してる。それを前提に話すぞ」
「大分重いですね……わかりました。命懸けですし、頼んだのも僕です。出来る限りのことはします」
「了解した。では話すぞ……まず、この案件の一番の問題は連絡がつかないことだろう?」
「ええ」
「それに関しては皇帝がいる時点で解決する。これから教える先に連絡を入れ、『タロウから連絡を頼まれたので、イリーちゃまに繋いでください』と頼め。その連絡先からだけは必ず信号を受けとるようにしているはずだ」
「イリーちゃ……けほ。ええと、はい、わかりました……その方には事情を説明した方がよろしいでしょうか」
「説明するのは自由だが、相手はまだ10歳だから考えて話せよ」
「え、10歳ってどういうことですか、まさか……イレルビーシャ皇帝は公式での未婚を宣言されていらっしゃる上に、実際に特定の男性との関係は流れておりませんが……身分違いのねつあい……隠し子ですか?!」
正にドン引き、といった風の声音である。
なんだ、そんなに不釣り合いか。
イリーは絶世の美女だもんな。ゴロツキの俺が隣にいれば色香に迷っての国取りを疑われるもんな。
まあ、それ以前の問題だが。
「……驚く気持ちはよぉくわかるがな、そのふざけた考えは3秒で破棄しないと次会った時痛い目を見るぞ」
こっちが血眼になって嫁を探しに出たって言うのにそんな爛れたピンクな話題があるわけないだろう。喧嘩売ってるのか。
それに、イリーは友達付き合いをするにはいいかもしれないが……恋愛関係は殆んどの人が無理だと思うぞ。
あの女、とんでもないドSだからな。
「その子の名前はマーロウ。俺が訳あって一時的に世話したガキなんだが……わかりやすく言えば、なんだ、ツバメというか……まあ、愛人のような」
12歳までは絶対に手を出さないように言い聞かせたから、多分まだ無事?だろうが……そういう関係になるのは時間の問題だろう。
リアル光源氏だ。
ただし、男女逆な挙げ句、調教が入っているが。
「はあああああああぁああぁ?!」
リーノハイルの絶叫が響く。
やはり、「黒鉄女帝」の艶聞は衝撃的なのだろう。先の通りに未婚を誓い、軍事に明るく、よくも悪くもはっきりとしていて公務に私情を一切挟まぬ様から彼女はさっぱりした性格だと思われるのだ。
いや、実際そうなのだ。
色恋さえ絡まなければ。
やるつもりは毛頭ないが、マーロウが政治的に利用されたら迷わずに民の命を捨てるのではないかと踏んでいる。だからこそ、彼女は徹底的なまでにあの子を隠すのだろうが。
「え、え、イレルビーシャ皇帝は今、御年……にじゅ」
「それ以上は言うな」
この世には、触れてはならないものもある。
「ああ、それと、マーロウから連絡をやれば確実に怒り狂うからそこはお前が上手くやれよ、リーノハイル」
そこまで大切にしている相手の情報が漏れてるって知ったら、俺も危ないかもしれないしな。
いや、今回は自業自得だろうし、それはないか。
「僕を殺す気ですか」
恨みがましい声がするが、気にしない。他にどうしようもないからなぁ……。それに、他人の不幸はなんとやらだ。
「このままの方が危ないだろう?」
「はあ、わかりました。では、レイファルガー殿の方はどうしましょうか」
「そっちはとりあえず、レイファルガーに俺が『事態を収束させない、又は、ゴサイとムスメの健康に一点の曇りでもあるなんてことがあったらお前を殺しにいく』とでも伝えてくれ。それは弟分にやらせろ」
「レイファルガー殿にサジュレン団長ですか……相変わらず彼にはえげつないですね」
レイファルガーは何度も殺されかけた結果、弟分には滅法弱いのだ。PTSDになっていると言える位には。
「アイツに気を遣う謂れはないからな。個人的にはリスクはあるが、緑毒を一度無効化させれば二度と復旧できない技術を発見したとか適当に使いにくい技術として発表しておき、実際のところはレイファルガーの墓まで持っていくでいいと思うんだが……」
どうせレイファルガーの技術は他の人間には再現不可だろうし。
無効化だけでも情報を開示すれば抗議に含まれる恐怖や不満も軽減すると思うのだ。
何より無効化したら、ミドリガメ飼えるしな!
「学もない一個人の判断では何とも言えないからな……専門家に頼んでおけ。そうだな、今ならハリベルグ宰相ならゆす……いや、協力依頼だせるんじゃないか?マリアレイナ陛下の失踪はこちらの落ち度ではあるが上手く使っとけ」
「あの冷血な宰相閣下をそんな便利に使える訳がないでしょう……門前払いですよ」
「それがそうでもないぞ。あれはな、ガダリアを本当の女だと思って惚れ込んでるからな……マリアレイナ陛下一筋でその気がないガダリアにもいい牽制になるし、罰にもなる。それでも駄目ならジェフリートの名前を出しておけ」
「それ絶対に止めた方がいいですよ、って僕は言ったことにしておきますね」
「結局、お前も共犯者だからな。お互い、精々長生き出来ることを祈っておこうか」
「……もう、今ですら精神的負荷で死にそうですよ。帰ってきてくださいよ、副団長」
「それを俺は10年耐えた。帰らないぞ、副団長」
「はあ……アーガイレウス様も十分、人じゃありませんよ」
「そうか。じゃあ、これからお前も人外の仲間入りなのか」
「……」
「……」
「不毛なことを考えるのは止めましょうか。今回も助かりました。では、また……」
リーノハイルの言葉と同時に通信魔法石の光がふっと消えて、通信も途絶える。
また、の後ろに帰ってきますよね的な圧力を感じてしまったのは俺だけだろうか。
そして「また」とか不吉なことを言うな。もう連絡するな。
どっと疲れた気分になりながら、道具をしまい、隠密の魔方陣を打ち消す。
その途端に、壁が半分焼け残っており姿が見えにくい空き地の元の景色に戻り、木々のざわめきも鮮やかに蘇る。
隠密の魔方陣は外から認識出来なくなる代わりに、こちらも同じように陣の外側が認識できなくなる。
突然周囲の刺激が伝わるようになるため五感全てが一気に覚醒するような奇妙な感覚に捕らわれる。毎度のことであるが、何度やっても慣れない。
今までは目を開けていても魔方陣の輝きの内側にあるものしか認識出来ず、見えないと言うよりはあるものも意識に上がらないようになっていた。
外はいつの間にか暗くなり、深い藍色に染まっていた。
もう晩御飯の時間を過ぎてしまっているではないか……!
このままではシイラを健康的な子どもに育てあげる計画が破綻する。健康は一日三食、栄養バランスと規則正しい生活が基本なのに。
しかも、今回の粥の材料手に入れてないし。
なんだろう、牛乳粥みたいに甘い粥でいいだろうか。前の街でやたらと名産品のドライフルーツ買わされたせいで果物だけはあるのだ。
でも、それだと野菜が……ジキの葉はあるだろうけれど、二食連続はちょっとなぁ。今から山に探しに出るのも時間がかかりすぎる。
ああ、それ以前にまだ胃腸が整ってるとも限らないのか。参ったな……とりあえず、は先ほど考えた粥でいいか。シイラが甘い粥は無理な派閥だったら即時に詰むが。
そこまで考えてからシイラを探そうとして、違和感に気が付く。
陣を解いて暫くは虫の音どころか風のそよぐ音さえ大きく聞こえるので気が付かなかったのだが、静かすぎる。
魔素の流れも魔除けの結界以外に感じない。
どう考えても、シイラが、いないのだ。
このすぐ近くでシイラには待つように言っておいてあり、言いつけを守る気があるならあの性格ではそうそう遠くに行くとは思えない。
けれど、それは俺を頼ろうとしていた場合の話で。
何かしらの奇跡が重なったらしく、たったの一晩で側に寄ってもらえる程度にはなったが、出会ったときの様子から考えて人間不信になっているのは容易にわかる。
仲良くなれた訳ではなく、俺のことを怪しいと感じていて逃げるタイミングを窺っていたのだろうか。
日が暮れたせいか風が冷たい。初秋の風が身に染みてやたらと寒く感じる。
考えてみれば自分のような風体の男がそうそう簡単に信用されるはずもないというのはわかっているのだが、どうにも違和感が拭えない。
単純なことではあるが、あの小さな女の子はもう自分の内側に位置していたのだ。
だから、逃げたという一番高い可能性を除外したがっている。
「シイラ、シイラ」
野太い自分の声で出来るだけ優しく呼び掛けて真白な女の子の影を探す。獣人事情は知らないが、あの様子では一人で生きていくのは不可能だろう。あそこまで弱ってしまっていては、生きる術を知っていようと知っていまいと生き残るのは絶望的だ。
それでも俺を目下最大の危険だと認識していたなら逃げてしまうだろうが。
まだ目での確認はしていないと僅かな望みをかけて、彼女を待たせていた辺りを見るが、何もなかった。
夜営の準備をしたはずの瓦礫を避けて作った空間には何一つ残っていない。
兎の耳を生やした痩せっぽっちの女の子も、夜のために拵えた熱魔法石の簡易竈やその他の荷も消えている。
繰り返したくなるほど、何一つ残っていない。
おかしい。
荷物まで無い。
普通の盗みであれば当然のことだが、120㎝もない痩せ細って魔素量も極端に少ない女の子があの重量の物を動かすことができるはずがないのに。
彼女が誰かと共謀して俺から身ぐるみを剥ごうとしたならまだ許せる。シイラを懐に入れたのは自分の責任だ。被害もたかが知れているし、この程度で騙されたからといってあんな傷だらけの女の子に怒りを覚えるほど人間をやめているつもりもない。
寄せて積み上げたはずの瓦礫が崩れていると、闇夜の中でもわかる一角が目にとまった。シイラが端に寄っても怪我をしないように積み上げたものが何もなしに崩れる訳がない。
嫌な予感がして灯りをつければ、半ば予想していた通り、見たくもないものが浮かび上がる。
地面に残っていたのは複数の足跡。
自身の靴と未だに素足のシイラの小さな足、見知らぬ大きな成人男性と思われるいくつもの靴の跡。
そして、男達の足跡は集落の外に向かって続いていくのに、シイラの足跡は一旦濃くなった場所から急に途切れていた。
ここまで見れば何が起きたか、誰でも、嫌でも、わかる。
ここは現代日本とは異なり靴は高級な消耗品に分類される。その靴を揃えて持っている数人組がこの食料はともかく貧しいことが明らかな集落に住んでいるはずもない。どれほどよく見積もっても、身を持ち崩した傭兵のパーティの犯行だ。
――――「まあ、それはともかく有り難う。で、どこで魔素が動いたんだ?」
――――「一ばんは、ガイルさまの腰のふくろからです」
陣を敷いて通信を始める前にしたシイラとの会話を思い出す。
よく考えずとも、一番があるならそれ以降があって当然なのだ。
会話を急いで切り上げた後もシイラは物言いたそうな顔をしていたではないか。
彼女はあの時から確定的ではなくとも異変を感じていた。しかし、危険を感じていたとして出会ったばかりの他人――それも立場が上の者――に確信も持てない事を話の流れに逆らって話すことができようか。これは彼女の声を十分に聞かなかった自分の責任だ。
その上、あれほど結界を張るから安全だとほざいておいて、隠密の陣に警告が届く回路を組み込まなかった挙げ句、意図を持ってやってくる人間の意識を逸らす仕掛けは一切していなかったのだから笑い話にもならない。
一つ一つ明確な自分に対する怒りが積もっていくのと同時に、まだ見ぬ足跡の持ち主に対する怒りが湧いてくる。
シイラの小さな足跡が自分の居た方向に向かっているを改めて見れば、合意なしに連れ去られたことも、最後に誰に助けを求めたのかもわかる。
求められたなら、迎えに行ってもいいだろう。
この理不尽で死が近い世界だという認識がいつからこんなに弱くなっていたのか。
自力で身を守ることができない子どもを育てることを決めたのにこんなくだらない失態を犯したのだということを強く胸に刻む。
もうここからは失敗などしない。
まずは迎えに行くことから始めよう。
彼女を取り戻したのなら、その時は二度と油断しない。
しっかりと魔術と体術を叩き込んで弟分にも負けないくらい強い子にするぞ!
アーガイレウス
主人公の本名。元山田太郎な本人としては恥ずかしいくらい大仰らしい。
リーノハイル・キエル
主人公の元部下。でも今もあんまり変わらない。子犬系な見た目しているわりに強か。
ジェフリート・サジュレン
変換で差呪連になりかけた主人公の弟分。丁寧に喋りニコニコしている天使な金髪碧眼の美青年だけど馬鹿。刷り込みで主人公の言うこと聞いてれば悪いことにはならないと思っている。歩く天災。
エルヒム・イジャール
第二師団長らしい阿呆。赤銅の肌に藍の髪。脳筋。ジェフリートが羽頭だからある意味双璧。団長と団長が尊敬している主人公を尊敬している。でも尊敬の意味は知らない。
タオファウス連合国、ヤネージュ共和国
多分自治領の集合体な国。一部は馬鹿。今後の出演予定はない。
フィデリンガル・ガダリア
白皙の肌に黒髪の麗しき女装魔術師団長。別にオカマじゃない。思い人マリアレイナが百合な人だと勘違いして恋が暴走した。今は男と言い出せなくて心底困っている。高レベルの女子力保持者。
マリアレイナ女王
銀髪桃色アイな清楚系美人。どっかの女王。あまりにも潔癖過ぎてなんか百合疑惑立ってしまった15歳で戴冠してしまった少女。最近はフィーお姉様、つまりはガダリアが素敵すぎて性別なんて…でも、跡継ぎは…とか思っている。
イレルビーシャ皇帝
絶世の美女。ぼんっ!!きゅっ!!ぼんっ!!の体現者。色香の塊。紫の御髪と金の瞳がナイス。見た目に似合わずさっぱりした性格と見せかけて、そのまんまねっとり。現在はマーロウという少年を囲って溺愛しつつ調教してる。なんかエロそうだから出てこなそう。
レイファルガー
節操のない研究者。でも古語で「奇跡の天才」って意味のレイファルガーって名乗っている時点で色々察するべき。ジェフリート怖い。主人公怖いけど嫌い。
マーロウ
10さいです。イリーちゃまのおっとです。
※舌足らずな意味を考えてはいけない。
ハリベルグ宰相
美形。優秀。マリアレイナの国の宰相。なんかガダリアに惚れている。でも、男とは知らない。15歳年下の美少女から猛烈にアッタク受けてるから、そのうち真実を知って悩んでる間に落とされそうな30歳。