第二部 第179話 魔王災害
白い群れが崩れていた。
法則。
観測。
執行。
全部。
士郎と翔の前では。
意味を失っていた。
観測外者達は止まらない。
数百。
いや。
もっと。
白い空間の奥から。
次々に現れる。
空間そのものが。
防衛へ切り替わっていた。
頭の奥へ。
無数の声が流れ込む。
『侵食拡大確認』
『執行者損耗』
『観測外者損耗』
『対象危険度再更新』
初めてだった。
そこに。
明確な焦りが混ざっている。
『排除不能』
『単独迎撃放棄』
『中心封鎖準備』
笑うものの顔が引き攣る。
『あー……』
少し間。
『外界、完全にパニック起こしてる』
セレナの目が止まる。
白を見る。
静かな声。
「あり得ません」
少し間。
侵食を見る。
「観測外者が」
短い。
「恐怖している」
士郎は鼻を鳴らした。
前を見る。
そこには。
無数の白。
外界上位存在。
観測外者。
執行者。
全部。
殺意。
違う。
恐怖混じりの排除だった。
士郎が少し笑う。
低く。
「雑魚増やして意味あんのか?」
踏み込む。
轟音。
重力が落ちる。
白い群れ。
法則。
空間。
全部。
真正面から押し潰される。
崩壊。
抵抗にならない。
同時だった。
翔が煙を吐く。
静かな目。
群れを見る。
違う。
もっと奥。
繋がっている。
観測。
意思。
生命。
一本じゃない。
無数。
右手が。
僅かに動く。
次の瞬間。
世界が静かになった。
白い群れ。
観測外者達。
執行者達。
半分。
違う。
大半が。
唐突に崩れる。
観測が消える。
意思が消える。
敵意が死ぬ。
笑うものが固まった。
『……待って』
少し間。
顔が引き攣る。
『もう戦争になってないんだけど!?』
沈黙。
頭の奥へ。
初めて。
震える声が響いた。
『——緊急指定』
『対象再定義』
少し間。
恐怖。
拒絶。
そして。
諦め。
『侵食源および同行個体』
『災害認定』
少し間。
『接触禁止』
『全観測外者へ通達』
さらに。
僅かな沈黙。
初めて。
明確な分類が与えられる。
『怪物群指定』
『最優先危険対象』
白い空間が。
初めて。
二人から逃げるように裂けた。
道が開く。
奥。
さらに深い場所。
中心。
そこへ続く。
誰も。
もう。
近づこうとしない。
笑うものが呆然と呟く。
『……自由とか以前に』
少し間。
本気で引いた顔。
『君達、災害じゃん』
第五章『魔王侵食編』・完




