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笑って、異世界だよ?  作者: Sueños de Esperanza.
エリセリア主権国
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英雄たちの夢

掲示板には、枯れた庭のように紙切れが張り付いていた。

人々の声、笑い声、泥だらけのブーツの足音がギルドの壁にぶつかって反響している。

冒険者たちは、まるで命が永遠であるかのように、祝ったり、言い争ったり、飲み明かしたりしていた。

だがエリザベスにとって、それらの音はすべて、水の中に沈んだように遠かった。


目の前には、無数の無謀な依頼の中に、一つだけ手が届きそうなものがあった。


オーク討伐:2体討伐

報酬:銀貨2枚

注意:初心者の単独行動は非推奨


彼女は、糸に引かれるように手を伸ばした。

だがその時、もう一つの手が、同じ依頼を取ろうとしていた。


「ごめん、先に取ろうとした?」

少年が、少し照れたように笑った。


小さなパーティーだった。三人。

リーダーらしい少年剣士、ずる賢そうな顔の短剣使い、そして大切そうに杖を抱く若い女神官。


エリザベスは、ほとんど彼らを見なかった。

ただ、遠い絵画を眺めるように、冷たく視線を流しただけだった。


彼らから放たれる活力、希望、眩しい無知――

それはあまりにも眩しく、そしてあまりにも遠いものだった。


「この依頼もらう?」

剣士の少年が優しく声をかける。

「オークは一人じゃ危ないよ。よかったら一緒に行かない?」


エリザベスは答えなかった。

一言も。

ただ、ゆっくりと紙を引き抜き、自分のものにした。


少年たちは戸惑ったが、それ以上何も言わなかった。


彼女は無言でカウンターへ向かった。


受付嬢――獣人の耳を持つ彼女は、すでに何も驚かなかった。

ただ、静かに視線を落とし、依頼書の束の陰で、秘密の報告書を書き始めた。


エリザベスは依頼書を無言で差し出した。


「オーク討伐……了解しました。」

受付嬢は低く呟き、録音石を起動させた。


エリザベスは指を石に触れた。

淡い光が石を包み、契約が完了したことを告げた。


受付嬢は小さく頷き、また無言で書き続けた。

まるで、特別なことなど何も起きていないかのように。


エリザベスはそのまま立ち去ろうとした――

その時。


聞こえた。


神官少女の、かすれた声。


誰に向けたわけでもない。

まるで、祈りが壊れたような、ひび割れた呟きだった。


「彼女は……この世界に存在してはいけない……」


仲間たちは驚き、神官少女を見た。


彼女はエリザベスを見つめていた。

震える指で、杖を握り締めながら。


この世界では、教えられてきた。

どんな存在にも、神々から授かった「根」が宿る。

それは信仰を持とうが持つまいが、誰もが死後にたどり着く道標だと。


だが、エリザベスには――何もなかった。


光も、影も、祈りもない。

そこにあるのは、ただ空虚な闇だけ。


「あなたは……一体……」


少女の呟きは、震えながらも耳に届いた。


だがエリザベスは振り向かなかった。


無表情で歩き去る。

その背に、誰もが目を奪われた。


黒い布が、死者の心臓のように、微かに脈動していた。

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