この世界はバラ色じゃない (5)
銃声が金属にぶつかり、肉を貫く音が雨のように響いていた。
盗賊団のリーダー、コルガンはゆっくりと前進していた。
まるで墓石のような巨大な剣を盾代わりに構え、もう片方の手には仲間の死体を持ち、それで弾丸を「飲み込ませる」ようにしていた。
空気は血の鉄臭さ、焼けた火薬の匂い、そして死体の腐臭で満たされていた。
それは五感を焼き尽くすような、現実離れした光景だった。
エリザベスはコルガンの手下たちを倒したあと、もはや立っていられなかった。
膝から崩れ落ち、荒い息を吐きながら胃の奥に押し込めていたものを吐き出した。
——ブェェ…… ゲホッ… ブェェ……
何度も嘔吐を繰り返し、やがて濃い唾液と胆汁しか出なくなった。
肩が痙攣し、怒りや陶酔、アドレナリンは薄れつつあった。
その代わりに、圧し掛かるような重さが残った。
命を奪ったという現実の重さだった。
彼らは下衆だった。正義だったかもしれない。
だが、彼女の心は戦いに慣れていなかった。
道徳、倫理、思いやりを教え込まれた世界で育った彼女にとって、
たとえ正当防衛であろうと、「殺す」という行為は心に深い傷を残す。
理解している部分もある。
でも、心のどこかが確実に壊れていくのを感じていた。
それでも彼女は袖で唇を拭い、立ち上がった。
手は小刻みに震えていた。
それでも、目を逸らすことはできなかった。
そこにいたのは、「エル・ソルダード(El Soldado)」。
彼女のカードであり、彼女の創造物。彼女の守護者。
カービン銃をしまい、今はマチェーテを使っていた。
その動きは実に確かなものだった。
天賦の才を持つ戦士でもなければ、神に祝福された戦士でもない。
だが、その一撃一撃には経験という名の重みがあった。
コルガンは片手で大剣を軽々と振り回していた。
枝や幹、根をもろともに切り裂き、森は破壊されていく。
その暴力の前に、自然さえも涙を流しているようだった。
それでも「エル・ソルダード」は一歩も退かず、指先や手首、胸元を狙っていた。
その斬撃には洗練された技術こそなかったが、
まるで木を切り、枝を払う農作業のように正確で、
一太刀一太刀が命を奪いかねない危険さを秘めていた。
エリザベスはその様子を黙って見つめていた。
震える体、心の葛藤の中でも、彼女の目だけは現実から離れなかった。
——……
おとぎ話など、ここには存在しない。
光があれば、必ず影もある。
善があれば、悪も存在する。
コルガンは楽しそうに笑いながら戦っていた。
だが時折、視線をエリザベスへと向けていた。
決して正々堂々とした決闘など望んでいない。
むしろ、「エル・ソルダード」が隙を見せるよう、彼女を利用しようとしていた。
彼にとってエリザベスは、ただの「駒」。
壊すための道具であり、楽しみのための「モノ」。
エリザベスはマチェーテを強く握りしめた。
その手から伝わる震えが止まることはなかったが、
彼女は理解していた。
――決戦の時が、迫っている。




