この世界はバラ色じゃない (4)
エリザベスは反射的に反応した。
バンディットが錆びた剣を振り上げた瞬間、彼女は本能で自分のマチェーテを構えた。
金属同士がぶつかり合う音が夜に響き、小さな火花が暗闇を一瞬照らす。
その音…先ほどの口笛…
彼らの居場所を完全に明かしてしまっていた。
バンディットは笑った。
戦士としてではなく、相手を敬う者としてでもない。
それは、獲物を見つけた捕食者のような、壊れた玩具を見つけたような、
汚らわしい楽しみを見出した者の笑みだった。
一言も発さず、彼は足を振り上げ、腹部に強烈な蹴りを放ってきた。
―グッ…!
一瞬、息が止まり、体が揺れる。
だが、彼女は倒れなかった。
一歩も退かなかった。
痛み?
もちろんあった。
だが、それ以上に――胸の奥に燃える怒りの方が強かった。
そして、「生きたい」という、抑えきれない意志があった。
「っ…クソ野郎…」
歯を食いしばりながら、怒りを込めて吐き捨てる。
彼女は戦士ではない。
高尚な戦い方を学んだわけでもない。
名誉ある決闘など、無縁だった。
彼女は――
ただ、生き延びる者だった。
エリザベスは腕に力を込めて、全身の力でバンディットにぶつかった。
相手の剣を横に弾き飛ばすように押し、膝を少し折って勢いを溜めた。
そして、躊躇なく――
バンディットの急所へ、渾身の蹴りを叩き込む。
「グッ……!!」
バンディットは呻きながら崩れ落ち、手から武器が滑り落ちた。
それが、彼の終わりだった。
「地獄の業火で――
永遠に焼かれて苦しめばいいッ!」
彼女はマチェーテを振り上げ、迷いなく振り下ろした。
一度、二度、三度――
漆黒の刃が鮮血を浴びながら、無防備な肉体を切り裂く。
止まらなかった。
止められなかった。
一瞬でも迷えば――
次に死ぬのは、自分だから。
だが、その瞬間――現実が彼女を引き戻した。
「……銃声?」
遠くから、銃の発砲音と金属が打ち合う激しい音が響く。
彼女は素早く顔を上げた。
「エル・ソルダード……?」
そこには、彼女の召喚がバンディットのリーダーと対峙していた。
だが、リーダーの姿は――異様だった。
仲間の死体を肉の盾のように使い、大剣で身を守りながら迫ってくる。
その顔には、恐怖も焦りもない。
むしろ、楽しんでいるような、狂気に満ちた笑みを浮かべていた。
それは人間の顔ではない。
それは――
悪魔の顔だった。




