血の供物の死の舞 (3)
エリザベスとオークは、まるで新鮮な血のような深紅の輝きを放っていた。その輝きは脈打つように明滅し、周囲のすべての光を吸い込んでいるかのようだった。まるでこの迷宮そのものが、この死闘の決着の時を感じ取っているようだった。
オークの体は、無惨な傷に歪められながらもなお立っていた。片足を失い、もはや自らの体重すら支えきれない状態。それでも、その目は狂気に染まり、赤く輝いていた。荒い呼吸は獣そのもの、まるで殺意と怒りだけで動いているようだった。
エリザベスは荒い息を吐いていた。
――Uff... uff... ¡Me bañaré con tu sangre...!
その声はもはや彼女のものではなかった。どこか獣じみて、喉の奥から絞り出すような、狂気の混じった声だった。
舞によって与えられた神の加護は、もはや祝福ではなく、彼女の意識すら侵し始めていた。理性は遠のき、ただ破壊と殺意だけが残った。
「グルルル……」
彼女は人間のそれとは思えぬ唸り声を上げた。それはまるで獲物に近づく猛獣の咆哮。数秒の沈黙の後、彼女は迷いなく突進した。筋肉は怒張し、足取りはまさに野生の獣。勢いよくぶつかった衝撃で、ついにオークは地面に倒れた。
エリザベスは素早くその上に飛び乗る。右腕を突き出し、手を槍のように変形させ、鋭い爪はまるで槍の穂先。全身の筋肉を一気に緊張させ、胸元めがけて突き立てた。
肉が裂け、血が噴き出し、筋繊維を割って彼女の腕は奥へと進む。ついには、温かくてぬめる命の塊に触れた。それは敵の心臓だった。
――¡SERÁS SACRIFICIO PARA LOS DIOSES! ¡AHORA MUERE!
エリザベスの叫びは、まるで生贄の儀式を執り行う神官のようだった。
死を悟ったオークは、最後の力を振り絞り、両手でエリザベスの頭を掴んだ。すべての力を込めて、まるでスイカを潰すかのように、彼女の頭を押し潰そうとした。
だが、彼女はそれを無視した。肉が潰れそうな痛みにも関わらず、神の加護は彼女の体を守っていた。筋肉は悲鳴を上げながらも、圧力に耐え続けた。
そしてついに――
オークの心臓が最後の鼓動を打ち、沈黙した。
彼の手は力を失い、ずるりと落ちる。
エリザベスは息を切らしながら、血塗れの右手を高く掲げた。その手には、まだ温かい敵の心臓が握られていた。迷宮の石造りの天井へと、捧げるように。
その心臓は微かに輝き始め、そして静かに光の粒となって消えていった。
それは、受け入れられたのだ。
この世界の神々ではない。
彼女がかつていた世界――遥か遠い、忘れられた神々への供物として。
彼女の体は地に崩れ落ちた。全身が震え、戦いの終わりを告げていた。血まみれの顔には、オークの手形が赤黒く残っていたが、彼女は生きていた。
勝利は、エリザベスのものだった。




