サボテンと記憶の果実
足が集落から離れるにつれ、時もまた流れていた。最初は木々の間から顔を覗かせていた太陽が、今では頭上で強く輝いている。たぶん午後の一時ごろだろう。時計もなく、影で正確な時刻を測ることもできないけれど、私の体がそれを知っていた。あの世界では、その時間帯にはすでに灼熱の暑さだったはずだ。アスファルトが焼け、空気には煙と金属の味がし、全てが都市という名のオーブンのように感じられただろう。
でもここでは…太陽は優しかった。その光は温かくて、残酷ではなかった。風は新鮮な葉、湿った土、そして命の香りを運んでくる。道にゴミはなく、車の騒音もなければ、電気の絶え間ない唸り声もない。ただ自然だけ。知らない鳥の鳴き声、土を踏みしめるブーツの音、そしてようやく穏やかに流れ始めた私の思考。
そんな時だった。あの聞き慣れた音が幻想を破った。
…お腹の音。
そうだった。宿で少し食べただけだった。その前は…ほとんど何も。体がついに、数日間無視されていた飢えを主張し始めたのだ。
でも、私には解決策があった。常識外れかもしれないけれど、この人生において「普通」とは何なのだろう。私はマフラーの間からカードを探った。指先が数枚をなぞり、ある一枚の前で止まる。「El Nopal」ーー自然と笑みがこぼれた。
—Al nopal lo van a ver, nomás cuando tiene tunas. ¡El nopal!(ノパルは実をつけて初めて注目される。それがノパルよ!)
呪文のような、そして同時に馬鹿げたような言葉が、私の口から自然に出てきた。
目の前の空気が揺らぎ、地面がかすかに震え始める。見る間に、それは育っていった。まるで時間が早送りされたように。風と魔法に歪んだような巨大なノパル(ウチワサボテン)が、数秒で出現した。その肉厚な茎は太陽の下で輝き、そして何よりーー深紅の実、「トゥナ(tuna)」が無数に実っていた。
私は、まるで駄菓子屋の前に立つ子供のような目でそれを見た。躊躇なく近づき、トゲを無視して実をもぎ取る。いくつかの棘が指に刺さったけど、気にならなかった。爪と歯でトゥナの皮を剥き、小さい頃祖母の家でそうしていたように、そのまま口に入れた。
…その瞬間、時が止まった。
甘い。その味はーーまさに、あの時のままだった。
果汁が唇を伝い、そして私はほんの一瞬、再びメキシコにいた。古びた家の裏庭、プラスチックの椅子に座る祖母が「ミハ、気をつけて食べなさい。種がいっぱいよ」と言っていた、あの記憶。
私は一口を飲み込み、こみ上げる涙を、次の一口で押し戻した。
まるでその記憶にしがみつくように。咀嚼することで現実に繋ぎ止められるように。この世界に「私」を許してもらうには、知っている味で満たされるしかないような、そんな感覚だった。
お腹が満たされ、喉の渇きも癒え、心も少し落ち着いた頃、私は服の裾で口をぬぐい、また歩き出した。
その時は知らなかった。このノパルがその後も成長を続け、その実が他の町の市場に並び、商人の荷車に載せられ、誰にもその出処がわからないまま広まっていくことを。下手に触れば血を流すが、優しく扱えば甘美な味をくれるその実は、やがて賢者や料理人、詩人たちの間で語られることになる。
でも、それはまだ知らない未来の話。
今はただ、私と道と、そして未知への一歩だけ。




