⛪慈悲の炎 ― イルミラ教会
白木と石でできたその寺院は、拠点の北中央にひっそりと、だが温もりを湛えてそびえていた。慈悲の女神イルミラを祀るこの教会は、決して裕福でも荘厳でもなかったが、人々の痛みを癒す灯火として確かな存在感を放っていた。
エリザベスは擦り切れたリネンの担架に横たえられた。茶色の法衣を纏った二人の司祭が静かな足取りで現れた。一人は琥珀の宝玉をはめ込んだ光る木製の杖を持ち、もう一人は銀の鈴を手にしていた。
彼らは脇腹の傷の周囲に、香り高い細かい粉を使って線香のように儀式の線を描き始めた。そして、より年配の司祭が杖を掲げ、穏やかで調和のとれた調子で、基本の癒しの詠唱を唱えた。
「慈悲の胸に灯る炎よ、
裂かれし肉を封じ、痛みを溶かせ。
貴婦人の温もり、川のように流れ、
傷つきし魂を、再び道へ導け」
宝玉は最初に橙色、次に柔らかな白に輝いた。淡い光がエリザベスの身体を包み込み、傷はゆっくりと閉じていき、深い切り傷の代わりに薄く赤い線が残された。痛みはほとんど消えたが、完全に癒えたわけではなかった。何かが――完全な回復を拒んでいるように感じられた。
「容体は安定した。タリア姉妹に引き継ごう」と、灰色の髭の司祭が額の汗を拭いながら言った。
「いつものように」と若い方が答え、静かにその場を去った。
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数分後、姉妹タリアが部屋に入ってきた。落ち着いた目を持ち、髪を端正に編んだ若い修道女だった。手にはぬるま湯と清潔な布を入れた木の器を持っていた。
彼女は無意識のエリザベスに静かに近づき、慣れた手つきで汗と血を拭い始めた。
だが、腹部の傷を洗うために彼女の服をめくったとき、動きが止まった。
「……これは、何?」
布地に触れ、その感触を指先で確かめた。それは重く、光沢のある鮮やかな色彩、花や鳥、そして抽象的な線の刺繍が施されていた。絹でもなく、リネンでも羊毛でもない。このエリセリアでは見たことのない織物だった。貴族たちも、外国の商人も、秘境の部族でさえ着ていないものだ。
「儀式服? 未知の信仰のもの……?」
清拭を続けながら、司祭たちが行う儀式の一環として、彼女はエリザベスの胸に指を当てた。生まれながらに神に祝福された者には、そこに微かな温もり――魂の反応が感じられるはずだった。
しかし、何もなかった。
弱い反応でも、かすかな痕跡でもない。ただの「無」。
タリアの心臓が小さく跳ねた。眉をひそめ、再度同じ行動を繰り返した。
それでも、何もなかった。
数秒、彼女は動けずにいた。空気の中に、沈黙が重くのしかかった。
「……疲労のせいね」自分に言い聞かせるように、「傷が深くて、霊的なつながりが弱くなってるのよ。ええ、きっとそう」
少し優しい手つきで残りの身体を清め、軽い毛布で覆った後、別の布で額に水を含ませて冷やした。
だが、その違和感は彼女の中に根を下ろしていた。確証はなくとも、タリア姉妹にはわかってしまった。この少女は他の誰とも違う存在なのだと。
そして、琥珀色のステンドグラスから差し込む陽の光と香の煙が漂う静かな部屋で、異世界から来た一人の少女は、まだ知らぬうちに、この世界の「常識」に最初の亀裂を生み出していたのだった。




