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7 聖職者の腐敗(2)

 ラウラスの皇帝と黄の聖者クピディタースはわりかし仲が悪そうだったし、皇帝は息子を黄の大聖堂の者達に見捨てられたのだ。大義名分さえあれば、彼は教会への離反を決意するかもしれない。

 皇帝は、祐理とラズトラウトがすべての魔女を狩る日を待っているはずだ。であるなら、祐理達を力づくで排そうとしたり旅の邪魔をしようとする者の存在は、きっと望まないに違いない。

 帝国と名乗る以上、ラウラスは少なくともピトダーの中では強大な国家なのだろう。そんな国に反旗を翻されるとさすがに困るのか、顔色を変えたセルペンスは慌てて言い募った。


「ろ、六人の聖者様のうち、“狩人”の排除に賛成だったのは黄と青、そして白だ! 教会の総意というわけではない! もっと階級が低い者には、“狩人”を教会側に取り込むべきだという意見も見られていたぐらいだ……!」

「ふぅん。聖者様達は、下の者の意見を踏み躙ったのか」


 ラズトラウトは小さく呟く。その声に宿る感情は嘲笑とも軽蔑とも、あるいは失意とも取れた。

 黄の聖者クピディタース、ちゃっかりそっち側に回っていたらしい。やっぱりというかなんというか。少なくとも黄の大聖堂からは離反しといたほうがいいのではないだろうか。


「“狩人”の排除に否定的だったのは緑のみ。赤および(ひめさま)は中立だったが、賛成が三人ということで結論はそちらに傾いた。本来は青の聖者が動くはずだったが……お前達が黒の領域に入ったのが視えたために姫様に白羽の矢が立ったのだ。ゆえに我々は即座に兵を動かして出陣した」 

「領域は全部で七色に分かれてんだろ? なら紫の聖者ってのは……そっか、いなかったんだっけ」

「ああ。八代目の紫の聖者(ユースティティア)……レミナを人々が不当に処刑した時に神の怒りを買ったのか、彼女以降紫の聖者にふさわしい者は現れていないらしい。だから紫の聖者の席は、永久欠番なんだ」


 かつて紅き森に進軍する途中でラズトラウトに聞いた話を思い出しながら呟く。案の定、ラズトラウトは小さく頷いた。


「中立って言うわりには、この姫様は敵意しかなかった感じだよな?」


 下から漏れる嗚咽を無視して問う。セルペンスは言いづらそうに目を逸らしたものの、黙秘していてもテンペランティアの身が危ぶまれるだけだと思ったのかすぐに口を割った。


「姫様は……お前が教会の手の者に殺されようが、あるいは魔女に挑んで殺されようが、どちらでもよかったからだ。我々が何もせずとも、お前の旅はいずれかの魔女の手によって終わる。あるいは我々が動けば、お前は確実に異端の罪で裁かれる。姫様のお力があれば、お前など敵ではないはずだった」

「ま、先読みの力があるなら……」


 ふと、祐理の言葉はそこで途切れた。あることに気づいてしまったからだ。

 セルペンスは言った。祐理達が黒の領域に来たから、自分達が迎撃することにしたのだと。

 祐理達がここに来たのは、アンブロシアからのSOSがあったからだ。カティーシスによる蹂躙を止めてほしい、と。

 祐理達がキャプの村に転移した時点で、カティーシスはいくつかの村を潰していた。聖者達が祐理の来訪を感知できるなら、当然近くにいたカティーシスの暴虐にだって気づけるだろう。

 テンペランティアは知っていた。祐理達がこの道を通ることを知っていた。もしも、もしもテンペランティアの先読みの力が、ほんの数秒前というレベルではなく、近い未来のことも読み解けるなら。カティーシスによる殺戮を、彼女達は未遂の時点で止められたのではないだろうか。

 それなのに、彼女達はそれをしなかった。兵士を連れた、聖者と勇者というたいそうなご一行は、祐理達を潰すためだけにここで待っていた。近くでもっと明白な敵が猛威を振るっていたのに、だ。このざまで魔女に対する聖なる砦だなんて、一体どの口が言うのだろう。

 もしも、テンペランティアがカティーシスの撃退に一役買っていたら。黒の領域(ショハム)の民、少なくともキャプの村の人間と近隣の村の生き残りが持つ黒の聖職者達への信頼度は上昇しただろう。そういった正当な手段は用いないくせに、実際に動いた者を排しようとするその姿勢が馬鹿らしかった。


「まさか……民を見殺しにしたのか? カティーシスがユーリを殺すか、ユーリがカティーシスを撃退するのを待つために?」


 ラズトラウトは信じられないと言うようにわなないていた。テンペランティアはもちろん、セルペンスすら何も答えなかった。


「マジで終わってんな。そのせいで何人死んだと思ってんだよ。もっと他にすることあるだろうが」


 教会が祐理の死を願うのは勝手だ。こっちだって神殺しを望んでいるのだからお互いさまだろう。

 教会の人間に好かれたいなど思っていないし、頼る気だってさらさらなかった。けれどそこに、何の罪もない人々を巻き込むのは絶対におかしい。


「セルペンス。お前は……教会は、ユーリの力を誰より信じているんだな。ユーリはすべての魔女を狩れる可能性を秘めていると。だからユーリを殺したいし、魔女討伐の失敗を願っているけれど、同時に成功する場合も視野に入れているんだ」


 ラズトラウトは悲しげだった。これまで信じてきた神の使徒の堕落ぶりに、彼なりに思うところがあったのだろう。


「でも、どうして教会は“狩人”ユーリと共存の道を選ばなかった? “狩人”レクトルは神話に名を残す英雄だ。その再来としてユーリを教会側に引き入れて大々的に彼を支援すれば、教会はこれまでと変わらない栄光を約束されたはずだ。……こうなった今、それをユーリが受け入れるかは別だが」

「引き入れる、か。……そうだな。確かに、その選択肢はあった。だが、我々はそれをするわけにはいかなかったのだ。認めよう。確かに我々は、“狩人(おまえ)”には魔女を殺せる(・・・・)力があると考えていた」

「しぇ、せ、せりゅ……! だ……まる、黙るの……! それ……以上は……!」


 セルペンスは自嘲気味に笑う。それに気づき、テンペランティアは息も絶え絶えになりながら声を上げた。


「いいえ、姫様。……これは我ら黒の大聖堂が犯した罪でございます。新たな英雄を誕生させ、即座に失墜させた先人と同じ咎を、我らも背負うことになるとは……そう話した夜を忘れたとは言わせませぬ。ですがこうして“狩人”達に敗北を喫した今ならば、その悲劇を防ぐことができるのではないでしょうか」


 不意にセルペンスの纏う空気が変わった。流れる血はそのままに跪いて(こうべ)を垂れたセルペンスは、祐理達に向けて口を開く。


「姫様にはその潤沢な加護の力(ティフィラー)により、未来視の力が備わっています。これこそ姫様が、黒の聖者と呼ばれるゆえん。黒の聖者の資質を持つ者は、未来視か過去視……あるいははるか遠くを見通す眼を持つと言われておりますゆえ」


 それはまるで魔女が持つ固有魔術のようだった。祐理はわずかに眉をひそめる。それに構わずセルペンスは続けた。


「姫様には視えておりました。そこにおります黒き騎士の方……ラズトラウト殿が、あの愚かで哀れな魔女の首を()ね、その(レヴ)までもを両断してしまうさまが」

「なんだって? 僕はそんなことは、」

「たとえ今その気がなかったとしても、必ずやしてしまうのですよ。あの魔女は、人を煽るのに長けている。己の心臓を砕かせる(・・・・・・・・・)ためなら、奴はどんな非道にも手を染めます」

「は……?」 


 今、セルペンスはなんと言った?


「カティーシスは死にたがりの魔女。アレが望むのは己の終焉と、人間……ひいては世界に対する復讐です。それは他者を巻き込んだ自殺という形でなければ成立しない」


 ゆえにアレは【災厄】を名乗り、無辜の民に死を振りまきます。あえて作った生存者に、魔女への憎悪という種を植えつけながら――――そう続けたセルペンスの瞳には、深い悲しみが宿っていた。


「アレが魔女に成ったのは、今からおよそ二百七十年前。そのときから、ずっとアレは自殺を行動原理にしていました」


 字幕は視えない。紫の言葉は聴こえない。けれどその言葉が信じられない。

 ああ、でも、予兆はあったじゃないか。彼女の話が事実なら、カティーシスが皆殺しをしないことの説明がつく。自身の(レヴ)がどこにあるかを声高らかに叫び、安寧告げる断罪の歌(ルイゼット)を前にしても歓喜に震え、何度も挑発的な言葉を投げかけた理由がわかる。わかってしまう。


「なんで……なんで、あいつは死にたがるんだ……?」


 だってそんなの、おかしいじゃないか。

 カティーシスは、本心から殺戮を望んでいるようだった。そんなカティーシスを殺そうとした者は大勢いた。死にたいなら、抵抗せずに彼らに身をゆだねればよかった。四捨五入して三百年間も、生き続ける必要なんてなかったのに。


「セル……それ以上は、やめなさい……!」

「アレが魔女に成ってから現在に至るまで、アレを満足させる器は存在しませんでした。賢く、己より強く、人望があり、清廉潔白で正義を重んじるような、まさに世界が望む“英雄”は。魔女という巨悪を打ち倒す英雄は、そういった者こそふさわしいのだとアレは考えているのでしょう」


 テンペランティアの制止も無視してセルペンスは続ける。祐理もラズトラウトも、もはや何も言えなかった。


「ですからアレは、半端な討伐者……あるいは復讐心を芽吹かせた復讐者も殺してしまった。アレは待っているのです。世界を絶望に陥れるにふさわしい、非の打ちどころのない英雄(いけにえ)が己の前に現れるのを。……それこそがラズトラウト殿でした。激闘の末、ラズトラウト殿はついカティーシスの(レヴ)を砕いてしまい――そして、“狩人”殿に自ら望んで封印されるのです」

「……なんだって? 僕が、封印?」

「そこから先の未来は、姫様のお力を持ってしてもまだ視えませんでした。しかし今後、強大な力を振るう“狩人”殿が魔女を誤って殺してしまわないとも限りません。……その時に、教会と“狩人”殿が協力関係にあったと思われては困るのです」


 祐理にとっての魔女狩りは、魔女を『魔女名鑑』に封印することだ。それをセルペンスが知っているということは、本当にテンペランティアは未来を視ることができるのだろう――――だが。


「ちょっと待てよ! なんで俺がラズさんを封印するんだ!?」

「ああ……やはりご存知なかったのですね。しかしそれも当然のこと。カティーシスが魔女と呼ばれるようになった時から現在に至るまで、魔女を殺した者はいなかったのですから。……いいえ、もしかしたらいたのかもしれませんが……その存在は、歴史の闇に消されたことでしょう」


 テンペランティアの顔は真っ青だった。それは祐理に命を握られている恐怖もあるのだろうが、一向に口を閉じないセルペンスが次に何を言いだすのか怯えているからのようにも見える。

 けれどセルペンスが告げたのは「アブローグ王国という国を知っていますか」という、これまでの流れを無視するようなものだった。


「信仰の中心地にして黒の大聖堂がある、アブローグ教国の前身だろう? 二百年以上前に滅んで、新しくその地に教国ができたと聞いているが。今は黒の大聖堂と民間の議会が統べる共和制国家になっていたはずだ」


 セルペンスの言葉の意味を図りかねているのだろう、ラズトラウトは硬質な声で答える。しかしセルペンスは肯定するのみで、さらに話を広げていった。


「ええ、その通りです。……今から二百七十年前、アブローグは周辺国との戦争……そして魔女の蹂躙に悩まされていました。時の王は暗君で、民は常に祖国への不満を抱えていたと言います。しかしその状況を打破できれば、王の威光が示される。ですから王は聖職者達とともに、策をめぐらせたのです。英雄を仕立て上げ、魔女を倒してもらおうと」

「ああ……セル、なんてこと……どうしてそれを、言ってしまうのですか……!」

「結果選ばれたのは、まだ若いながらもあらゆる戦で最も成果を上げていた傭兵と、次代の聖者候補と謳われる二人の聖職者のうちの一人だった、うら若い修道女です」


 傭兵には富と名誉、修道女には聖者の地位。それぞれ約束された未来があり、それを築くにふさわしい実績があった。

 この二人なら魔女を倒せると周囲は胸を撫で下ろしただろうし、きっと本人達もそう思っていたに違いない。だが、それとこれに一体なんの繋がりがある?


「修道女には目に見えた瑕疵はなく、そこに魔女を倒した英雄という箔が加われば、彼女が聖者に選ばれるのは明白でした。傭兵は貧しい生まれでしたが人望も実力もあり、魔女を倒せばそれまで出自が阻んでいた出世も叶いました。魔女討伐の旅は、国が平和を、若者達が栄光を掴む希望に満ち溢れたものだったのです。……それは、表向きのものに過ぎませんでしたが」


 セルペンスは言う。

 卑しい身分ながらも力と名声を誇るその傭兵は、敵国の兵士だけではなく、正規の王国軍に属する騎士や、聖堂が持つ戦力である聖戦士から憎まれていた。祖国に勝利を運びもてはやされる彼は水面下で強く嫉妬されていて、密かにその死を望まれていた。だから彼は、“英雄”に選ばれた。

 その修道女は、もう一人の聖者候補を担ぎ上げる一派から目の敵にされていた。彼女が聖者の選定の前に死んでしまうか、あるいは聖者の代替わりが行われるときに彼女を都から遠ざけたいと、常々考えていた者達がいた。だから彼女は、“英雄”に選ばれた。

 この二人が魔女を倒せばいい。けれど途中で死ねばもっといい。祐理は思わず身をすくませる。それはなんて残酷な旅路だろう。誰もが彼らを利用するだけ利用しようとするくせに、帰還なんて望んでいなかっただなんて。


「結果、この二人の行軍は成功しました。魔女にとどめを刺したのは傭兵です。二人は英雄として、国に帰還しました」

「……ちょっと待てよ。これは二百七十年前の話だって言ったよな? 魔女は死んだ、だけどカティーシスが魔女になったのは……!」

「ええ、その通り。魔女の(レヴ)を砕いた者は、魔女になるのです。ですから魔女を殺してしまえるほどの力がある者と、教会が通じるわけにはいかなかった」


 祐理の悲痛な声に、セルペンスは諦めたような眼差しを向ける。

 そうか。だからカティーシスを殺したラズトラウトは、祐理に封印されるのだ。彼は自分が魔女に変貌したと知り、狂気に侵される前に封印を望むに違いない。


「当時このショハムに君臨していた【殺戮の魔女】を殺した英雄(カティーシス)は、自身こそが新たな魔女となって祖国の地を踏みました――ですが人間は魔女(かれ)を拒み、糾弾しました。修道女もまた、魔女と通じていた罪で処刑されました。すべては彼らを英雄に仕立て上げた者の思惑通りです」


 作られた英雄達。彼らは一部の権力者にとって邪魔者だった。だから彼らは魔女に殺されてほしかった。

 けれど万が一、彼らが魔女討伐を成し遂げてしまったら。その時は、彼らを魔女として断罪してしまえばいい。どちらに転んでも、邪魔な奴らはいなくなる。


「新たな魔女は、あっさりと人に捕まりました。彼にとって人とは守るべき者。まさか礫を投げられるなど、思いもしなかったのでしょう。……しかし人にとって、魔女は憎むべき者。彼への悪感情を持つ者による扇動も相まって、偉業を成したはずの英雄は一夜にして失墜したのです」


 魔女に為ったばかりのカティーシスは、今の彼のような存在ではなかったはずだ。それでも、これまで【殺戮の魔女】から受けた苦痛や現王政の不満の刷け口となるように、ありとあらゆる悪意が彼に集中した。死なない魔女は、それらをぶつけるのに最適だっただろう。

 素知らぬ顔で魔女を身代わりにした者達のやり方に反吐が出た。だってそれは、ロゴスのやり方とよく似ていたから。


「狂ってる……!」


 祐理は最初、カティーシスを狂った魔女だと思った。それはきっと正しいはずだ。けれど本当に狂っていたのは誰だったのだろう。


「まさか……あの時のリヤンの歌って……」


 フィーンヒール大公国の宿で聞いた、よくわからない歌が蘇る。

 リヤンは言っていた。これはカティーシスの歌だ、と。だから魔女(カティーシス)に挑んだ者が、魔女(かれ)に敗れる歌だと思った。しかし違ったのだ。本当は、魔女に挑んだカティーシスが、魔女に勝利してしまう歌だった。

 あの歌は史実をそのまま歌ったものなのだろう。先代の魔女、【殺戮の魔女】の返り血に塗れたカティーシスが事実に気づき、そのまま堕ちる歌。自分も【殺戮の魔女】と同じモノになって、いつか自分を殺して魔女の役を肩代わりしてくれる英雄が現れるのを待ち焦がれる歌。それがあの歌が持つ真実の意味だったに違いない。


「【災厄の魔女】の弱点が鈴と車輪だというのは、ショハムの生まれであれば子供でも知っていることです。しかしその由来を知る者は、民草にはいないでしょう。カティーシスが祖国(アブローグ)を滅ぼした際、彼が魔女に為り、心身ともに魔女へと成り果てた経緯は闇へ葬られ……それを覚えている者は一部の聖職者のみになりましたから。けれど蓋を開けてみれば、とても簡単な話なのです。人の手に落ちていた時、ずっとずっと彼は見世物として――車輪を用いた刑に処されていたという、それだけなのですよ……」


 ショハムにおける当時の娯楽でもっとも人気だったのは、祭りの日に行われる歌や踊りか罪人の処刑で。ショハムに存在した当時の死刑執行人は、処刑のはじまりを告げる合図でもあった鈴のついた錫杖を手にしていて。だから、だから【災厄の魔女】は鈴の音に怯え、車輪を見て逃げ出していく。

 そう語るセルペンスは、先祖が犯したおぞましい罪に震えているようだった。だからきっと、彼女はまだまとも(・・・)なのだろう。

 魔女は死なない。死なない魔女を捕らえておけば、人々は永遠に血生臭い娯楽を観ることができる。一方で死なない魔女は、死にも等しい苦痛にずっと耐え続けなければいけない。何度も何度も何度も。果たしてそれは、正常な人間が耐えられるモノなのだろうか?

 祐理が聖女に捧げる鉄車輪(ブレーキングホイール)を出した時、錯乱したカティーシスは「殺して」と言っていた。二の句が継げない様子だったし、それまでの血気盛んな様子から、「殺してやる」と言いたいのだと思ったが、それはきっと祐理の勘違いだったのだ。彼が本当に言いたかったのは「殺してくれ」だったに違いない。


 ――――手にしていた安寧告げる断罪の歌(ルイゼット)が、抱えた『審問大全』が、一気に重く感じられた。

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