天職
…話すべきだろうか。
「いえいえ、特に何も無いですよ。」
「そうですか、何か悩んでいる様に見えたのですが。話したら役に立てるかは分かりませんが、気が楽になるかもしれませんよ?」
「そーそー」
私は話すべきかかなり悩んだが、3人にも彼女にも関係があるので、相談する事にした。
「実は、今朝元々勤めていた学校の同僚から電話がありまして。「学校に戻ってきて、また教師の仕事をしないか」と聞かれまして…」
「いい話じゃないですか?もしかして生徒さんからの不満でクビになったから戻りたくないとかですか?」
「それは私達の勘違いだったみたいで。」
「勘違いというと?」
「実際は生徒達が不満を言っていた訳ではなく、親達が勝手に子供達が不満だって事にして学校側に抗議していたらしいです。なので寧ろ子供達は好意的で、今回私に戻る話が来たのも子供達が学校側と親に抗議してくれたからだそうなんです。だから今は不安とかはないんですけど」
「でしたら、特に何も問題はないのでは?…もしかしてこの子達の事ですか?」
「そうなんです。私はここでのんびり過ごす日常が好きです、何よりこの子達がようやく鉛筆を持てるようになったのに離れるのも嫌だなと思いまして。けどやっぱり私は教師としての何気ない日常、触れ合い、仕事も好きで選べなくて」
「なんだ、それなら簡単な話じゃないですか。」
「え?」
「私達の事は気にせず戻ればいいですよ。ミニトマトは責任をもって美味しく食べておきますから。ねー」
「「「ねー」」」
「それに、教え子達が待ってるんですから。教師なら応えてあげないと」
彼女がそう言うと3人もうんうんと頷いてくれた。
「…ありがとうございます。ようやく決心がつきました。私は学校に戻ります。」
「きっとそれがいいですよ。私達も応援してます」
「「「がんばって」」」
「ふふ、3人もありがとう」
――引っ越し準備。
「来る時の方が大変だった気がするな。ま、来る時に持ってこようとしてたものは全部無くなったけど」
この家とも、一本松とも、この景色とももうお別れか…思い返せば長く感じるが実際はまだ1ヶ月位しか経ってないのか。不思議なものだ。
帰る為にバス停で待っていると、彼女とあの子達が見送りに来てくれた。
「こんにちは」
「こんにちは、この挨拶をするのももう最後だね」
私がそう言うと3人は寂しそうに
「これ、川で見つけてきた綺麗な石。あげる」
「私は山で見つけた宝物」
「前お姉ちゃんと見つけた綺麗な花あげる」
それぞれ綺麗な石、綺麗な木の枝、綺麗な花を私に渡してくれた。すると彼女が
「私からは渡せるものが無いので私の名前を。」
と言って私の耳に近付き、こっそりと教えてくれた。
「私の名前は――です」
――「お…さん。お…ゃ…さん。お客さん」
「あ、はい」
いつの間にか眠っていたのか目的の終点のバス停についていた。
「すいません、ありがとうございます」
そうか、いつの間にかもう夜になっていたのか…
「月が綺麗だな…」
何か大切な事を教えてもらった気がするが思い出せない――
「みんなおはよう。今日の授業を始めるよ、席に座って座って」
彼女やあの子達の顔、会話や思い出はあまり思い出せない。
だが彼女達には教師として大切な事を教えてもらった。その事は決して忘れはしない。
今日も私は教師として教壇に立つ
やっぱり教師は天職だ。私にとっては――
〜fin〜
教えと学びこれにて完結です。
私は観測者に比べるとかなり短くなっていますが、自分としては満足度はこちらの方が高いなと思ってます。
次の連載は設定等はもう考えているのでまとまり次第書き、投稿しようと思います。
少し期間が空くかもしれませんが待っていてくだされば嬉しいです。
では、またどこかで




