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林田藩  作者: 林田力
番外:御館の乱
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御館の乱の終結

御館の乱は上杉景勝・兼続主従にとって最初の大きな試練であった。不利な状況を何度も乗り越えての大逆転であった。しかし、主人公側の勝利に酔うよりも、敗者の景虎・華姫夫妻の悲劇性がクローズアップされる。


武田勝頼と同盟したことで景勝方が優勢になった状況下で、仙桃院は景虎に降伏を説得する。内乱の元凶は景勝方が上杉謙信の遺言を捏造したことである。それを棚に上げて景虎に譲歩を迫る仙桃院の論理は不公正である。どうしても景虎に同情してしまう。


降伏を決意した景虎であったが、人質の証として差し出した嫡男の道満丸が殺害されてしまう。上田衆による春日山城本丸占拠から始まり、常に裏切られ続けた景虎の悲劇である。「もはや、人を信じぬく力は残っていない」との景虎の言葉が切ない。


景勝や兼続ら側近には道満丸を殺害する意図はなかった。しかし、景勝の家臣には禍根を絶つために景虎の降伏を拒否して、御館を総攻撃すべきと主張するものもいた。いずれにしても主君の思いに反して家臣が勝手に対立を煽った結果の悲劇である。それは景虎の「悲しい戦じゃったの」との言葉に集約されている。


しかし、ここでも兼続が出しゃばった。自害を決意した景虎の前に現れて「道満丸を殺害したのは景勝でも自分でもない」と言い訳する。たとえ兵が勝手に行ったことでも、全軍を統率する将の責任である。下手人を探し出すこともせずに言い訳する兼続は見苦しい。兼続の言い訳は相手の気持ちを無視した自己満足に過ぎない。兼続は景虎から最後には和解できたと認めてもらいたいだけである。虚偽の遺言や春日山城本丸の占拠など生前に欺かれ続けられただけでなく、死後も「最後は景虎も分かってくれた」と都合よく解釈されるならば、あまりにも景虎が哀れである。


景勝は「御館の乱の責任は自分にある」と言い切った。そして「自分に皆を納得させるだけの強さがあったら」と後悔する。史実では景虎自害の後も内乱は完全には治まらず、景勝の目の前には課題が山積みであった。そのような状況にもかかわらず、景勝は過去を振り返ることで主君としての器量を示した。


過去を大切にしない日本人は目の前の火を消すことばかりに熱心で、Ifを考えることを時間の無駄と捉える傾向がある。それは日本語に仮定法という豊かな表現が存在しないことが示している。しかし、人間は過去から学ぶ生き物である。過去を水に流してしまっては人間的な成長はあり得ない。


景勝は兼続を重用した。兼続は優れた軍師であり政治家でもあった。上杉家を導いていけるのは兼続しかいないと思われた。景勝派の家臣達も兼続を頼った。兼続は上杉家を見事にまとめ上げていった。景勝派の家臣達は兼続を「謙信公の再来」と呼ぶほどだった。


景勝は兼続を信頼して、その意見をよく聞いた。兼続の意見が上杉家の方針になることもあった。景勝は兼続を「わが腹心」と呼んだという。兼続は景勝を「謙信公に最も愛された御方」と呼び、尊敬していた。景勝と兼続の間には深い絆が生まれた。


兼続は景勝に「謙信公は天下を統一すべきお考えでした。謙信公は信長を倒そうとなさいました。謙信公の遺志を継ぎましょう。まずは、関東の北条氏政を討伐し、それから上洛いたしましょう」と言った。景勝は「うむ、そうしよう。父上の夢を実現しようではないか」と答えた。


景勝は謙信の夢である「日ノ本の統一」を目指して動き始めた。この方針には家臣の多くが賛成したが、実行力が伴わなかった。景勝は上杉家当主の座に就いたが、関東管領職を継ぐことになかった。上杉謙信のように関東遠征に乗り出すこともなかった。景勝は越後以外の領主達の支持を失っていた。御館の乱は上杉家を弱体化させた。


義に生きることは難しい。義を貫こうとすれば、どうしても損得勘定を度外視することになるからである。上杉家のために景勝や兼続が必死になっている姿を見ると、上杉家の未来が心配になってくるのだった。


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