第60章『崩壊』
目の前にいる漆黒の魔王は、闇の速度で動き続ける、と言ってもわかりにくいだろうか。
要するに、姿が見えない。
黒い煙のようなものがあちらこちらに出現し、それ一つ一つが魔王なのであった。
何せ、早すぎて残像が見えている、ということであった。
「はっはっはっは! 余に勝とうものであるのであればこれくらいの技、見切ってみるがよい!」
「あれは煙化ですっ。紫色の煙に化けて物理攻撃を無効化する技ですっ。ただ、それを使ってる魔王の方も技は使えないのですが……」
「この煙に飲み込まれれば待っているのは死であるっ」
そう言って煙魔王は柱に突っ込んだ。
すると柱は跡形もなく消えてしまった。
続いて僕の方に突進してきた。
僕は瞬時に極龍を呼び出そうとしたものの、出てきてくれなかった。このままは死ぬ__その時だった。
「てぃやっ」
ハルリの光魔法が炸裂したのは。
「超高速で動けて当たれば消えてしまう最強の技の唯一の弱点は明るい光に触れると石化してしまうことですっ」
「残念。それももう克服した__!」
一瞬石になったものの、またすぐに煙に戻ってしまった。
魔王はさらなる段階に行った。
「これはまだまだ初級編! 次はいきなり上級編へと行くぞっ」
その瞬間、僕の方に紫色の光線が放たれた。その速度は光線であるのだから高速ならぬ光速であった。
無論、避けることなんぞ不可能。
が、タクの剣が魔王の首元に当たっていた。
お陰で首が落ちはしなかったものの、光線の方向は変わり、僕には当たらなかった。
そこまでは良かった。
外れた光線は魔王城を破壊し、スカイツリーよりも遥かに高い場所から落下した。
久しぶりの外はとても明るく眩しかったが、それは魔王のほうが眩しかったはず。
ならばこっちのほうが有利ではないか。
落下してくる魔王城は、欠片となり、人がちょうどひとり乗れるほどの大きさで降ってきた。
僕らはそれを踏み台に、落下を防いでいた。
徐々に上の欠片にのるのであった。
「ハッハッハッハ! 流石である! 久しぶりだが腕は鈍っていなかったぞ! 面白くなってきた! ではそろそろ本気モード、達人級といこうではないか!」
「望むところだぜ!」
その時だった。1人、ふつうにらっかしているものがいることにきがついたのは。
「__ハルリ__!」
ハルリの運動神経はかなり悪い。もちろん普通に考えたら恐ろしいが、こっちの世界ではその強さは通用しない。それだけでない。今日は晴れ。風一つ吹かないいい天気。
飛ぶことすらできなかった。




