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龍神の花嫁 八俣遠呂智編(ヤマタノオロチ)  作者: 霜月 如(リハビリ中)
1章 夏休み クローンオロチ
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0 プロローグ


日本の天津神(あまつかみ)たちが住まう高天ヶ原(たかまがはら)


まだ人間から龍神に成り立ての瑞樹千尋(みずきちひろ)は、正式な認可を貰うために、高天ヶ原(たかまがはら)まで就任のあいさつに御参りしていた。


高天ヶ原(たかまがはら)主宰(しゅさい)神である、天照大御神(あまてらすおおみかみ)様にお目通りを願い、認可を頂ければ晴れて龍神として認められるのだが……


お歴々の古神達が並ぶ、御前で挨拶とか……滅茶苦茶(めちゃくちゃ)緊張する。



「この都度、瑞樹(みずき)神佑地(しんゆうち)を継ぐ事になりました。瑞樹千尋(みずきちひろ)と申します」


僕が頭を下げたまま答えると、天照(あまてらす)様の隣におわする銀髪の神様が巻物を広げ、僕のプロフィールを読み上げ始めた


瑞樹千尋(みずきちひろ)、16歳、独身。元々は男子学生であったが、瑞樹(みずき)の元龍神により雌の龍にされ、今回世代交代をした模様。無類の猫好きであり、猫耳の雌が好きとありますが……雌龍にされてからは、猫耳の雄でもイケル模様」


ヤメテー、人の性癖を読み上げないで!!


だいたい、その情報必要なの!?


泣くぞ、コンニャロメ!! 古神達の前で、公開処刑かよ!!



僕は涙目になりながらも、グッとこらえると、更に続けて読み上げられる。



「現在は、元龍神と婚約関係にあり、女学生として通っている学園を卒業するまで、祝言を延期している模様。先祖は…………ん!? あの淤加美神(おかみのかみ)ではないか!!」


そこまで読み上げられた後、僕の中から淤加美(おかみ)様が出て来て


「左様! 千尋(ちひろ)(わらわ)の子孫じゃ」



淤加美(おかみ)様のその言葉に、古神達から(どよめ)きが起こった。



「なんと、あの淤加美(おかみ)殿の……」


「それなら納得ですわ……」


「これは瑞樹(みずき)を治める龍神として、認めても良いのでは?」



どの神も、就任を認める声が上がるが……1柱だけ異議を唱えたものが居た。


「果たして、そうですかな? このような元人間の小者に、神佑地(しんゆうち)の管理を与えるなんて、我は反対です」


そう言って前に出る男の神様。



僕はそっと淤加美(おかみ)様へ念話を飛ばして


淤加美(おかみ)様、あちらの御方は?』


『あれは、天忍穂耳(あめのおしほみみ)(のみこと)天照(あまてらす)殿の(せがれ)じゃ』


天照(あまてらす)様の息子さんか……と言う事は、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)のお父さんって事に成るのか……



「このような、猫耳ケモナー好きな、元人間の成り上がり者に、どれほどの力がありましょう」


そう天忍穂耳(あめのおしほみみ)様が古神達に訴えると――――――


「確かに、淤加美(おかみ)神の力は知っているが、その子孫が必ずも強いとは限らんな……」


「あの若でケモナーとか……酔狂(すいきょう)な」


「元人間に、神佑地(しんゆうち)を治める程の力があるとは思えませぬ……」


反対意見も出始めた。


というか、猫耳フェチは関係ないよね?



「では、瑞樹千尋(みずきちひろ)に力を示してもらおうではないか!! 勝速日(かつはやひ)と言われる我から、1本とって見よ!」


マジか……天照(あまてらす)様の息子に勝てるわけ無いじゃん


そこに、淤加美(おかみ)様から念話が来る。


『チャンスじゃ千尋(ちひろ)よ。向こうは、御主が元人間と言う事で、侮っておる。それに勝つ必要はない。1本取れば良いのじゃ』


『簡単に言ってくれますね』


『出来なければ、地獄の特訓じゃぞ』


うぁ、それは勘弁願いたい。



「では、瑞樹千尋(みずきちひろ)よ。武器は何を所望する。弓か? 剣か? それとも槍か? 高天ヶ原(たかまがはら)にある神器は、どんな種類でもあるぞ」


「ならば、お水を1杯いただきたいです」


「緊張で喉が渇いたか? 水はくれてやる。だが、早く武器を選べ」


「武器は要りません。水だけで十分です」


「ふっ、舐められたものよ。ならば我も神器ではなく、普通の鉄剣でよい」



なんか、(はか)らずとも。神器ではなく、普通の鉄剣にさせることが出来た。


これなら、勝てなくも1本取ることは出来そう



天照(あまてらす)様の御前で、金の器にいれられた水を渡され、天忍穂耳(あめのおしほみみ)様と向き合う


「では! 二人とも始めよ!!」


銀髪の男神がそう合図を掛けると、天忍穂耳(あめのおしほみみ)様が


「水がこぼれる前に、飲んでしまった方が、良いのではないか?」


「御忠告ありがとうございます。でも、このままで良いのです」


「ふっ、まあいい。そちらが来ぬなら、こちらから行くぞ!!」



天忍穂耳(あめのおしほみみ)様が、その言葉を言いきると、僕の視界から消える。


さすが、先代旧事本紀で書かれている勝速日(かつはやひ)


名は(てい)(あらわ)すとは、良く言ったものだ。実際、その速さは尋常じゃない。



あっという間に、間合いを詰められ、剣を薙ごうとしているが


どんなに速かろうと、攻撃の瞬間は重心をのせる為、足が止まる。


そして、僕が元人間と侮っていることも、相まって、余計に隙が出来るのを見逃さない。



僕は、手にある金の器から水を操り、細く強い水刃を創る。


その水の細剣を使い、天忍穂耳(あめのおしほみみ)様の踏み込んで来る突進のエネルギーも利用し、カウンターで鉄剣を切り飛ばす。



キン! と乾いた金属の音を立てて、刃が地面に落ち、鉄剣は真横に切り飛ばされたのだ。



その様子を見て、銀髪の神様が声を上げ


「そこまで!! 勝者、瑞樹千尋(みずきちひろ)!!」



古神達の中から歓声の声が上がる。



僕は、天忍穂耳(あめのおしほみみ)様に


「手加減をしていただき、ありがとうございました。お使いの武器が鉄剣ではなく、神剣であったのならば、飛んでいたのは僕の首だったと思います」


そう言って、深々とお辞儀をする。



ここで、プライドを傷つけ、恨みを買うのは得策ではないからだ。


実際に、神器ではなく鉄剣を使うなどして、加減してもらったしね。



「確かに、元人間と侮りすぎた。良い国津神(くにつかみ)になるがいい」


天忍穂耳(あめのおしほみみ)様はそう言って、僕の肩を叩いて笑ってくれた。さすが器も大きい


「ありがとうございます。精一杯頑張ります」



「他に異議を唱える者は居らぬな? では、姉上締めくくりを……」


銀髪の男神が、天照(あまてらす)様に締め括りを求めると


「うむ、ここに、国津神(くにつかみ)として、瑞樹千尋(みずきちひろ)瑞樹(みずき)神佑地(しんゆうち)を治める様、申し付ける」


(つつし)んでお受けいたします」



こうして、正式に龍水神の国津神(くにつかみ)として、瑞樹(みずき)神佑地(しんゆうち)に籍を置くことになったのだ。



だが、龍好きの天照(あまてらす)様が……


「ところで、千尋(ちひろ)よ。お主……(わらわ)眷族(けんぞく)に成らぬか?」


「はい? 眷族(けんぞく)ですか?」


(わらわ)は、鶏の神使(しんし)やら龍の神使(しんし)を沢山抱えておってのぅ。千尋(ちひろ)……お主も眷族(けんぞく)に成ってみぬか?」


「まだ婚約者と祝言も上げていませんし……直ぐにお返事は……」


「なんと! 断る気かえ!? 嫌じゃ! 嫌じゃ! 嫌じゃ!」


え~、どうしろと?



「姉上!? 皆の者!! 姉上がご乱心だ!! 取り押さえよ!!」

銀髪の神様がそう声を上げる


「こら離さぬか月読(つくよみ)!! 千尋(ちひろ)(わらわ)眷族(けんぞく)に出来ぬなら、岩戸(いわと)(こも)ってやるぞ!!」



天照(あまてらす)様、どうかご容赦を……」


そう言った大男の神様に担がれて、天照(あまてらす)様は奥へ連れていかれた。


なんか凄い事に成ってるな……



月読(つくよみ)と呼ばれていた、銀髪の神様が戻ってきて


瑞樹千尋(みずきちひろ)よ、姉上を抑えている今のうちに、地上へ帰るがよい」


「は、はぁ……分かりました」


瑞樹(みずき)の地を頼んだぞと言われ、解散になったのだが――――――


……なんちゅー、グダグダな就任式だ。


なんかこう……就任の証とか……そう言うの無いのかな?



僕は、月読(つくよみ)様に言われた通り、寂しく瑞樹神社(みずきじんじゃ)へ帰る事になる。



こうして、元人間の成り上がり龍神として、神様と認められたが、果たしてやって行けるのか?



それは、この先のお話で、語られることである。



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