須坂君の秋(中編)
律子はスチャラカなOLである。
今日は出島蘭子の誘いで仕事帰りにカラオケに繰り出した。
同行したのは律子の彼氏の藤崎と同僚の香と須坂津紀雄、そして何故か梶部係長。
「何だ、どこに行くんだ?」
梶部が嬉しそうに話に加わって来たので、律子達は渋々梶部が来るのを了承した。
「もう一人、合流する人がいるんです」
蘭子が悪戯っぽく笑う。
「誰? 蘭子ちゃんの彼?」
律子の空気読めない爆弾が早速炸裂した。香と藤崎が顔を引きつらせる。
須坂は別の意味で顔を引きつらせた。
(蘭子ちゃん……)
気が気ではない須坂である。蘭子はチラッと藤崎を見てから、
「平井次長のお嬢さんのめぐみさんですよ」
今度は律子が顔を引きつらせ、須坂がドキッとする。
(めぐみちゃんが来るのか)
さっき蘭子の事でオロオロした須坂だが、めぐみが来ると聞き、ヘラヘラしてしまう。
(バカ)
蘭子は顔で笑って心で怒った。
女子達が私服に着替えるのを待っていた須坂達は蘭子の服装に目を見張った。
ピンクのタンクトップに白のショートパンツ姿だったのだ。
香と律子も驚いていた。
(そういう事か)
勘のいい香は蘭子がめぐみに対抗したのだと悟った。
須坂は蘭子の脚が眩しいのか、一切見なかった。
(バカ)
蘭子はまた心の中で怒った。
「蘭子ちゃんがあんな服着るなんて驚いた」
藤崎が言ったので、
「私も着た方がいい?」
律子が尋ねた。
「りったんは普通のカッコでいいよ」
藤崎は苦笑いした。
梶部は食い入るように蘭子の脚を見て、彼女に引かれた。
カラオケ店に到着すると、すでにめぐみがロビーで待っていた。
「お久しぶりです」
めぐみが笑顔で挨拶すると、
(父親に似ていなくていい子だな)
梶部が嬉しそうに頷いた。律子は肉食獣のような目でめぐみを睨む。
(係長、実は女好きなのか?)
須坂は思った。
(蘭子さん、今日は随分露出の多い服ね)
同じような組み合わせの服を着ているめぐみは蘭子が自分に対抗しているとは思わない。
律子達は大きめの部屋に案内された。早速蘭子が人気アイドルグループの曲を入れる。
(蘭子ちゃん、いつもならロックなのに)
須坂は蘭子の選曲に戸惑っていた。
「私も」
めぐみが張り合うように別のアイドルグループの曲を入れた。
(負けないんだから!)
蘭子とめぐみはそれぞれ違うライバルを見ながら思った。
蘭子はめぐみを、めぐみは律子を。
香がふと気づくと、律子が飲んだくれていた。
(まずい……)
その後の展開を予測し、香は嫌な汗を掻いた。