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須坂君の秋(前編)

お借りしたお題は「目には目を」です。ちょっと強引ですがお許しを。


そして、青峰輝楽さまのご要望にお応えしまして平井次長が活躍します(次回)。


栖坂月先生のお話にインスパイアされてしまいました。

 律子はスチャラカなOLである。


 彼女は制服がきつくなり、蒼ざめていた。


「無節操に食べまくるからよ」


 同僚の香が半目で言う。律子はどう聞こえたのか、


「いやあ、それほどでも」


 まるで某幼稚園児のリアクションである。


「律子先輩って、痩せ過ぎだからちょうどいいんじゃないですか?」


 出島蘭子がクスッと笑う。すると律子は、


「ぽっこりお腹はともかく、着られる服がない上にお金もないと来たもんだ、なのよ」


 涙目で迫ったので、蘭子は思わず顔を引きつらせた。


 そんな女子達の会話に入りたそうにしているのは須坂津紀雄。蘭子と少しずつ接近中の三年目社員。


「どうした、須坂? 元気がないな」


 梶部係長が声をかけた。最近血色がいい係長に、


「いい事ありましたか?」


と訊きたい須坂だが、梶部が女性と歩いているのを見てしまったので言えない。


(あれは奥さんじゃないよな)


 そういう勘は優れているのだ。


「そんな事はないですよ」


 須坂は苦笑いをして応じた。梶部はニヤリとして、


「恋をしろ。そのままだと只枯れちまうぞ」


 上機嫌で自分の席に行ってしまった。


(やっぱり不倫してるのかな、係長は?)


 須坂は梶部を見ながら移動したので、


「いた」


 蘭子と鉢合わせしてしまった。


「ごめん、蘭子ちゃん」


 尻餅を突いてしまった蘭子に慌てて手を差し出す。


「すみません」


 蘭子が自分の手を握って立ち上がったので、須坂の顔が赤くなった。


「私がボンヤリしていたのが悪いんです」


 蘭子は言葉に棘がなくなったと須坂は思った。以前なら、


「危ないじゃないですか!」


 怒鳴られていたはずだ。


(もしかして蘭子ちゃん、僕に気があったりして……)


 須坂はニヘラッとして席に着いた。


「須坂君、蘭子ちゃんとぶつかって嬉しそうだよ」


 律子が香に囁いた。香は肩を竦めて、


「貴女、彼が蘭子ちゃんに気があるのを知らないの?」


 言ってからあっとなる。律子は目を見開き、須坂に近づこうとした。


「ダメよ、本人に訊いたりしたら!」


 香は素早く律子を引き止めた。


「私もそこまでバカじゃないわよ」


 ウィンクして言う律子だが、


(そこまでバカだと思ったから引き止めたんだよ!)


 香は心の中で叫んだ。


 蘭子が須坂にきつい言葉を使わなくなったのは平井次長の愛娘のめぐみのせいである。


 須坂がめぐみをニヤついて見ているのに気づき、自分の気持ちがわかったのだ。


(私は須坂さんが好き。だからめぐみさんには負けない)


 『目には目を歯には歯を』を実践しようと思う蘭子である。

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