目次 次へ 1/26 プロローグ ※本作は毎日更新予定です 夜風が囁く都会の片隅で、私はひとり佇んでいた。 温もりを思い出そうとしても、指先には何も触れなかった。 親の声も、家の匂いも、笑い合う友の姿も、すべて霧のように消えていった。 あてもなく彷徨う日々のなかで、私は何度も自分を否定した。 「生きる価値なんてない」――そう思っていた。 けれど、あの人に出逢ってしまった。 その瞬間、欠けていたパズルの一片が、音もなくはまり込む感覚に包まれた。 私は、ただその漆黒の瞳を見つめていた。