23話 絶えることを許さず
GWなので最終日ですが、投稿すると決めました。
今後も世の中が連休に入れば、ゲリラ投稿するかもしれません。
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《瘴気吸収、変換を実行。対象【オビト ロクロウ】を蘇生します》
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(………………あがぁぁぁぁッ!!)
全身を含め、身体の内側も激しく灼かれる感覚で、否が応でも目覚めさせられる。
(はぁ...はぁ...また、終わらなかった...)
しばらくの間のたうち回り、真空の刃で中身を酷くかき混ぜられたのにも関わらず、完治している身体を体感し、再び起こったこの現象を恨めしく思う。
(俺なんか...生きてたって...)
救うと言った少女はみすみす死なせ、その師匠には愛弟子を手に掛けさせてしまったという重い自責の念に囚われ、小さく蹲っていると、
「……かふっ..」
(はっ)
ミルシャが小さく咳き込んだ。
(ミルシャッ!おいっ!ミルシャッ!!)
「....ぁ...ぁ..」
(生きてる...まだ!......けど)
ものすごくか細いが、呼吸をしている...。
まだ死んでいない、瀕死だが生きている事に喜びが溢れる...が、今この状態から治療する術を持たず、風前の灯であるのを眺めるしかできなかった。
(俺にできること...何か...)
「チッ〉
(はっ..!)
不意に背後から舌打ちの音が鳴り、すぐに振り返ると自分を冷たく見下ろす、異形と化したアーディがいた。
(く..くそ..)
持っていた剣は、最初に意識が途切れた際に手から放してしまっていたようで、大樹の根本で無造作に放置されており、アーディと相対そうにも一方的な展開が目に見えていた。
「…………〉
(...ッ..ッ..!!………?)
覚悟を決め、生身で相手の剣を受け止めようと防御の構えを取ったのだが、アーディからの攻撃はいつまで経ってもされず、当の本人は先程から動かず、ただ見下ろしながら立っているだけだった。
(な..なんだよ...何がしたいんだよッ!!)
「…………〉
アーディは変わらず棒立ちしてるのみで、その行動の意図は全く読めなかった。
「………〉
するとアーディがおもむろに左腕を上げた。
(……?)
自身に何か起きる訳でもなく、しーんとした時間が流れる。
そして、
「ぐぶっ」
(え...?)
ミルシャがいる方向から水気を含み、ガラついた咳が聞こえてくる。
恐る恐る振り返ると、
(あぁ...あぁぁ..)
ミルシャの喉には綺麗と言ってしまえるほどの切れ込みが入っており、今までの流血によって溢れ出るはずの血液は少なく、喉元の側面に一筋の赤い線ができているのみだった。
(これじゃ...これじゃもう...)
ミルシャの灯火は今、アーディが発動した風魔法によって吹き消されてしまった。
「…………〉
(―ッ!?おいッ、やめろ!やめろってッ!!)
ミルシャの身体に音もなく切創ができていく。
「…………〉
(やめろッ!!あんたの弟子だろッ!!)
アーディはただ淡々とミルシャへ向かって風魔法を浴びせて続けていた。
(この野郎ッ!!)
「……〉
(うぐっ...)
「………〉
(もうやめてくれぇ!!)
感情のままにアーディへ突撃しても、斬り払われ、ミルシャへの無意味な攻撃は延々続けられていた。
(...ッ!ちくしょう!!)
アーディからの攻撃を庇うように、ミルシャを自らの腕の中へと抱え込む。
「………〉
(くそッ...!これ以上あんたは、こんな事やっちゃならないだろ!!)
「………〉
(ぐっ..)
アーディは何も言わない。
ただ無機質に攻撃を続けるのみ。
「………〉
(身体が...強張ってきた...)
目に見えぬ真空の刃を背中に撃たれ続け、己の活動限界が近づいていくのを感じる。
(そ..ろそろ..意識..が...)
これまで二度体験してきた意識の途絶。
(ぅ...)
今、その三度目を迎え、目の前は暗闇に染まった。
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《瘴気吸収、変換を実行。対象【オビト ロクロウ】を蘇生します》
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(………………がぁぁぁぁぁッ!!)
身体の灼ける感覚と共に、意識はすぐに覚醒する。
「………〉
(はぁ...はぁ...うぐっ)
アーディは魔法を使うのをやめ、右手に持っていた細身の剣で斬り刻むような乱暴な攻撃に変えた。
(ぐっ...ま..た..)
四度目の意識の途絶を悟る。
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《瘴気吸収、変換を実行。対象【オビト ロクロウ】を蘇生します》
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(………………ぐぅぅぅぅぅッ!!)
「……〉
(が...)
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《瘴気吸収、変換を実行。対象【オビト ロクロウ】を蘇生します》
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(………………がぁぁぁぁぁ!!)
「……〉
(...ぅ..)
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《瘴気吸収、変換を実行。対象【オビト ロクロウ】を蘇生します》
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(…………うがぁぁぁぁ!!)
「…ギィッ!!ギィッ!!〉
(ぐくっ...)
乱暴な振り方の中に刺突も混じえて、何度も何度もアーディは攻撃を続けた。
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《瘴気吸収、変換を実行。対象【オビト ロクロウ】を蘇生します》
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「フーッ...!フーッ...!〉
(はぁ...はぁ...)
途中から数えるのも辞めてしまう程に意識の途絶を繰り返し、否が応でも理解する。
(俺...死なないじゃなくて、死ねないな...これ)
この異世界へ飛ばされてくるにあたって、人間からデュラハンというアンデットへ変わり、寿命はどうなのだろうかと少し考えもしたのだが、様子を見るにおそらく不死なのだろう。
途中から覚醒する度に蒼い炎がチラつき、この現象が焚べる者の力であることを察し、女神から死ぬ事を許されていないと悟る。
「...チッ〉
(まだ..やるか...?)
アーディからの攻撃を食らい続け、いい加減身体を灼かれる感覚にも慣れてしまい、ミルシャを庇うか傷つけ続けるかの意地の張り合いは自分にとって、かなり有利な消耗戦となっていた。
(さぁ...どうす―げほっ―...え?)
突然、腕の中から息を吹き返すような咳が聞こえる。
見ればミルシャが普通に呼吸を始めて、血色も元の状態へと戻っていた。
(嘘だ...ミルシャッ...!!)
何故、生き返ったのか今はどうでもいい、失ったと思っていた仲間の無事を喜び、安堵が込み上げてくる。
(良かった...良かった...!!)
「……チッ〉
(うおぉっ)
腕の中にいる少女の息吹を噛み締めていると、突如大風が吹きつけ、ミルシャと共に広場の門まで飛ばされる。
(……見逃す...のか..?)
「……チッ〉
舌打ちを鳴らし、アーディは大樹内部への扉の前へ戻っていった。
(…悔しいが...撤退だ。体勢を整えないと)
ルエルタへの電撃作戦は失敗に終わり、未だ意識が戻らぬミルシャを背負い、クエルタム氏族の村へと敗走することにした。




