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珍奇!強制シーメール化事件  作者: モッチー
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第17話:強田護の過去

pixiv版→https://www.pixiv.net/novel/series/7675147


ハーメルン版→https://syosetu.org/novel/266019/


小説家になろう版→https://ncode.syosetu.com/n5419hd/

強田は焦っていた。

長期戦を封じられたこの状況に。

「落ち着け強田」

「これが落ち着いていられるか!証拠動画付きで真実を説明してる暇が無いなんて聞いてねぇぞ!」

周囲に有る物に当たり散らす強田の姿は、どこか寂しげで痛々しかった。

夏芽は、そんな強田の痛々しさをチラ見しながら、物質生成能力で作った鏡越しに兵器推進善業に没収された隕石を視ていたが……

「いくらあいつらが馬鹿だからって、簡単に手の平を返すんじゃねぇ!あの糞石が!」

隕石の発光が更に強まった事を伝えて良いものか迷った。

「言わなくて良いの?」

「……言える状況に見えます?」

兵器推進善業から隕石を強奪しようとする強田を取り押さえる神楽。

「冷静になれ!何の作戦も無しに力押しで勝てる相手だと思っているのか!?」

「じゃあどうしろって言うんだよ!」

呆れるエレクトロン。

「……言えないな……これ……」

強田と神楽の口論が五月蠅過ぎたのか、誰も祭一族が仕掛けた盗聴器の存在に気付かなかった。


「この国で狩りが出来る時間は……もうあまり長くない」

強田と神楽の口論の内容からそう察した祭高明。

「と言う訳だ。だから、明日の狩りにはエメラードさんにも参加してもらうよ」

返答せずに無言で去ろうとするエメラードだったが、直ぐに文若が斧を突き付ける。

「お前、逃げるのか?」

しかし、エメラードは意にかえさない。

「どけ。こっちも時間が無いんだ」

「無視」

そこで、祭が少し大きな声で言い放つ。

「我々は兵器推進善業を敵に回す程善人じゃない!」

少しイライラしつつも振り返るエメラード。

「今更兵器推進善業が何だと言うんだ?元々、あいつらの無知がRisquemaximumをぶくぶく肥え太らせたんじゃないのか?」

だが、祭は気にせずに話を続ける。

「あれを野放しにすれば、第2第3のRisquemaximumが誕生するでしょうね」

エメラードは素っ気無く返答した。

「あんな小難しい物を扱うんだ、そこまで馬鹿じゃないだろ?」

「ところがどっこい……だとしたら?」

やはりここを去ってRisquemaximumを捜索するべきだと判断したエメラードは、素っ気無く捨て台詞を吐いた。

「爺になりたければ、その過小評価を控える事だ。坊や」

文若のイライラが募る中、祭は冷静に説明を続けた。

「今聞いた盗み聞き、何か雑音の様なモノが入ってたと思いませんか?」

「型が古いだけだろ?」

「先週買ったばかりですが?」

「店選びが悪い」

「確かに。でも、変な電波まで拾ってしまったとしたら」

エメラードは頭を抱えかけた。

「そこまで馬鹿なのか!?兵器推進善業!」

「じゃなきゃ、通常兵器だけで巨大怪獣を斃そうだなんて言いだしませんよ。兵器推進善業」

そして……

「と、言う訳で、明日の狩りにはエメラードさんにも参加してもらうよ」

苦々しいと思いつつ、一応了承した。

「あの馬鹿共に現実を魅せてやる!」


エレクトロンは、最近の強田を視てふと思った。

「最近の強田ってさ、全くヤンキーらしい事してないね?口では強過ぎる糞外道ヤンキーを目指してるーって言ってるけど」

夏芽はこの質問が強田の機嫌を更に悪化させるのではないかと不安になったが、神楽はある意味この質問に納得した。

「確かに」

強田は観念したかの様に過去を語り始めた。

「俺が初めてヤンキーを目指そうと思った切っ掛けは……」

「語るんだ?」

「親父の嘘に逆ギレしたからさ」

「嘘?」

「俺の親……離婚してさ、そのまま親父の家に預けられて、『母はお前を見捨てて出て行った』って教えられた。だが、俺は子供心にそれが嘘だと解ったね」

「どうして嘘だと解る?」

「俺の親父が超お金持ちだからさ。しかも超名家。だからさ、お袋は俺が金の事で苦労しない様に身を引いた」

「そう思う事で、自分は母親に見捨てられてないと思い込もうと?」

「いや、実際にお袋に逢った事が有ってな、だが、お袋の奴、金の事でめっちゃ苦労してた。だから、お袋は泣いてた」

予想外の重さに訊いた事を後悔する夏芽。

本当なら親権を取り戻したかった強田の母親。だが、自分のワガママを押し通し過ぎれば強田が金に困って不幸になると判断し、強田の幸せの為に自ら身を引いた強田の母親。

だが、強田の母親の話にはまだ続きがあった。

「ま、元々親父はお袋を捨てる心算だったらしいがな」

「まだ何か有るのか!?」

「俺のお袋、単なる親父の愛人でよ、親父は正妻ってもんがありながら、遊びでお袋と付き合って出来たのが、俺って訳よ」

あまりの壮絶さに、神楽がゆっくりと頭を垂れながら右手で顔を覆った。

「……それでよく母親同様に父親の家から追い出されなかったな?」

強田が父親から追い出されなかった理由。それもまた馬鹿げた物であった。

「親父の家や親族がこれまた古い考えでねぇ、誰の腹から産まれようと、跡継ぎ候補は男性でなければならない。だから追い出されなくて済んだんだと」

夏芽はもうやめて欲しい気分だった。

「もうやめてぇー!」

だが、神楽はこの話に納得がいかない。

「名家の跡継ぎに成りえる男子だから……だが、私が知る限りでは、強田と言う苗字の名家を知らんが……」

それに対し、強田はあっけらかんと答えた。

「それ、俺のお袋の旧姓」

「はあぁ!?」

「いやだから、親父の苗字じゃなくてお袋の苗字を使ってるの。だから……」

そこまで話して、過去のある出来事を思い出して少し後悔する。

「俺が警察沙汰になって、警察に呼び出されるのはお袋の方で、お袋は泣きながら怒って、俺は無理矢理親父の家に帰らされてたっけ……となると、お袋を苦しめてたのは、親父じゃなくて俺の方……なのか?」

「つまり、調書でも母親の旧姓を使ってた……いや、今も現在進行形で使っているか」

「……ああ」

とここで、エレクトロンが妙な疑問を浮かべた。

「となるとぉー、こいつの本当の名前は何なんだ?」

それに対し、強田はあっけらかんと答えた。

「忘れた」

一同は驚きを隠せなかった。

「忘れたァー!?」

が、強田はその事に後悔は無かった。

「確かに男を辞める心算は一欠けらも無いよ!でも、だからってあんな家いらねぇし、貰ったところで面倒だ……あ」

「どうかしました?」

「そう言う意味では、俺をこんな姿に作り変えた嘘吐き検事と糞石に感謝の念を捧げた方が良いのかもな?」

「余程父親が嫌いなんだな?お前」


強田の過去語りは、邪悪な殺気によって中断された。

「どうやら……兵器推進善業は、この場所の事を知っていたみたいですね?」

「つけられたか?予想外の展開が多かったとは言え、迂闊だった」

「まあ良いよ。こんなとこに往かされる事が決定した段階で、色々と鬱憤が溜まってたし」

「……本当なら、俺がこの馬鹿共のアジトに乗り込んで、あの糞石をぶんどる予定……だったんだがな!」

強田の叫び声を合図に、4人の魔法少女が一斉に四方に飛び散った。

この行為は、強田達が発信機を仕掛けられた事に気付いていないと思っていた(実際に本当に気付いていない)兵器推進善業の油断と動揺を誘った。

「散った!?気付いていたと言うのか!?構わん!撃て!撃てぇー!」

兵器推進善業側の指揮官の叫びに失笑する神楽。

「馬鹿者……1番焦ってはいけない人物が焦るとは、笑止千万!」

神楽がばら蒔いた大量の札は、地面に触れた途端に無数の蔦となって兵器推進善業の兵士達を次々と絡め捕った。

「何だこれは!?おい!誰かこれを切ってくれ!」

だが、神楽の追い打ちはここからだった。

「いやいや、強田の隕石の発光に関する推測が事実なら、君達はまだまだおしおきが必要だ!」

無数の蔦に絡め捕られた兵器推進善業の兵士達に対し、神楽が別の札を投げつけた。その札は、兵士に触れた途端、高圧電流となって兵士達を更に苦しめた。

「ギャアアァーーーーー!」

「痺れるぅーーーーー!」

それに対し、これだけやって1人の死者を出していない事に感心する神楽。

「おやおや。君達は意外と丈夫なんだね?兵器推進善業も随分と仕込んだものだ」

一方、夏芽を攻撃している兵士達の戦況も絶望的であった。

既に何千発の銃弾を浴びせた筈なのに、その全てがバリアに跳ね返されて夏芽の身体に届いていない。

「嘘だ……嘘だ!この銃弾が、どれだけの数の巨大怪獣をこの国から追い出したか……それが効かないなんてぇー!」

夏芽がこの言葉に愕然とする。

そしてそれは、兵器推進善業が不都合な真実の隠蔽がどれ程重いのかを物語っていた。

「つまり、貴方方は何も知らないって事なんですね?気の毒に」

そうこうしている内に、兵士達が使用しているマシンガンやグレネードランチャーが弾切れになったので、弾倉を交換しようとしたが、

「させません!」

夏芽の周りを飛び回る複数の鏡から一斉にビームを放って兵士達の視界を遮った。

「ぐおぉ!?眩しい!?」

その隙に、夏芽が瞬間移動を応用した転送術を使って兵士達の銃火器を次々と没収する。

「は!?無い!?何時の間に!」

「こんな物に頼ってる様では、何時まで経っても巨大怪獣には勝てませんよ!」

更に、エレクトロンが敵対する兵士達を弄ぶ様に華麗に銃撃を全てギリギリで回避する。

「下手糞だねぇ君達?勘が鈍いんじゃないの!?」

と言ってる間に兵士達の隙間をすり抜けて背後に回り込む形になった。

「次はこっちの番かな?」

エレクトロンが手にした本を読んだ途端、無数の鳥とオオトカゲが一斉に兵士達を襲った。

「うわぁ!?何だこいつら!?助けてくれぇー!?」

だが、元凶のエレクトロンは気にせずにどこかへ行こうとする。

「お生憎様。今の私は気が立っていてね……あれ?この場合は、ご愁傷様の方が正しいのか?」

この3人でさえ絶望的なのに、強田と戦っている兵士達の戦況が1番絶望的であった。

「うおぉりやあぁー!」

右アッパーだけで戦車を転倒させ、歯向かって銃殺しようものなら、念力で投げ飛ばされて大玉の材料にされた。

歯向かった兵士達で作った大玉をペシペシと叩くと、

「いってらっしゃーい」

大玉に前蹴りを浴びせてまだ残ってる兵士達に方へと蹴飛ばした。

兵士達はどうしたら良いのか判らず、右往左往している内に大玉にぶつかり転倒する。

「ストラーイク。俺、ボウリングの才能が有るのかもな?」


こうして、兵器推進善業が送り込んだ兵士達があらかた片付いたかに思われたが、

「うっ!?」

強田が突然、苦しみだしながら蹲り、身体が僅かに発光し始めた。

「強田さん!?いったいどうしたんですか!?」

そして、強田は嫌な予感がした。

「そう言う事か……この国から出て行こうとしているのは……あの糞石だけじゃないって事か……」

神楽も嫌な予感がしたが、あえて訊ねてその嫌な予感を払拭しようとした。

「何を言っている?あの隕石がこの国から出て行こうとしているだけじゃないのか?」

が、神楽の期待に応えられない強田は、残念そうに首を横に振った。

「どうやら違うらしい……あの糞石共……この国そのものを完全に見捨てる気だ……こんな国如きに俺達みたいな人間を消費するのも……バカバカしいんだとよ……」

「そんな……」

夏芽は絶句した。


そこへ、1台の高級車が複数のパトカーを率いてやって来た。

「今度は何だ?」

神楽が予想外の展開に唖然とする中、パトカーの中らから叩が出て来た。

「アイツ!何で!?」

「この国にとって、兵器愛好家馬鹿共は味方って事だろ?」

そして、叩が拡声器越しに叫んだ。

「飛鳥井護!今直ぐ出頭しなさい!繰り返す!出頭しなさい!」

言われた魔法少女側は、飛鳥井護が何者か……と言うより、叩の声が音割れしている事の方が気になっていた。

「あの人うるさいぃー!」

「それに凄い音割れ!あの拡声器があの大声を拾いきれてない!」

「アイツ、メガホンの使い方を完全に間違えてる。と言うか、今時、凶悪犯相手でもあんな事しないぞ?」

「逆に何言ってるのか解んねぇよ!」

だが、叩の音割れは止まらない。

「繰り返す!飛鳥井護!今直ぐ出頭しなさい!」

「だから!声が大き過ぎて逆に何言ってるのか解んねぇつうの!」

そんな中、高級車から1人の老人が出て来た。

それを見た強田と神楽は驚いた。

「……あの方が、何であんなところに?」

「何でこんな時に、あの糞爺が?」

だが、そのシリアスを叩の音割れが台無しにする。

「繰り返す!飛鳥井護!今直ぐ出頭しなさい!」

「てめぇは黙ってろ!」

老人もそう思ったのか、叩の肩を叩いてから前に躍り出た。

それに対し、叩が深々と立礼をし、それを見た強田が悪態を吐いた。

「そんな事をして貰える身分かよ!」

が、神楽が強田の悪態を否定した。

「いや、飛鳥井家は公家の家格の1つである羽林家に連なる一家で、元伯爵家だ」

その質問に首を傾げる夏芽。

「それって、日本国内の話ですよね?」

「……兵器推進善業が調べたんだろ?あの様子じゃ、叩務の様な輩が、まだまだ日本国内に蠢いてる可能性があるぞ?」

その間、考え込んでいた強田が、観念したかの様に叫んだ。

「参った!」

一同の視線が強田に集中した。

「待て待て、撃つんじゃねぇ撃つんじゃねぇ」

強田の行動に一旦は驚く魔法少女勢であったが、直ぐに強田のテレパシーを受け取り、不安そうに無言で事の成り行きを見守った。

「久しいな……糞爺」

「あれだけ我が儘を許したんだ、そろそろ戻って来い」

「ケッ!てめぇらも人手不足かよ」

強田と老人の会話に割って入る叩。

「まさか……貴様が飛鳥井家の血族だったとはな……」

叩が強田の腹を蹴って左頬を殴った。

「我が祖国である日本から戦争を奪って貧困と退化のどん底に叩き堕とした貴様、本当なら殺してやりたい所だが、飛鳥井家の温情のお陰でこの程度で済んだ事をありがたく思え」

叩の殴打をわざと喰らってうずくまるフリをした強田を警官達が捕縛する。

しかし、その隙に複数のテントと機材ごと神楽達が瞬間移動で逃走した。

「あっ!?」

叩達が困惑する中、老人は強田を無言で見下ろし、強田が老人を無言で見上げた。

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