第6話:才能差が生んだ悲劇
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兵器や軍隊の地位と必要性の向上を目論む兵器推進善業が送り込んだ叩務を逮捕した魔法少女達。
だが、強田は色々とモヤモヤしていた。まあ、シーメールに変えられて魔法少女として怪獣と戦っている時点でイライラしているが。
確かに叩に対して複雑な感情を懐いてはいるが、もっと気になる事が沢山有った。
1つは、Risquemaximumの存在。
強田は、スクリーン越しにRisquemaximumを観ただけで、魔法少女管理委員会制圧部隊の撃破を選んでしまう程ビビった。
強過ぎる糞外道を目指していた筈の強田が、素直に負けを認めて逃げたのだ。
悔しかった……それ以上に、惨めだった……
「くそ!何なんだアイツは!?この俺を逃げさせるなんて……アイツがいる限り、俺は『我が道を行く』が出来ねぇ……だが……勝てるのか?今の俺に……」
もう1つは……
「何を荒れてるんだお前?」
ライラ達を人質に取った叩達の許へ向かった時に出会った……新たなる魔法少女の存在。
強田は新入りなので魔法少女管理委員会の詳しい事は知らない。
でも、少なくとも一緒に銃口を向けられた魔法少女達の中にはいなかった。食堂で見た魔法少女とも違う。
ただ、叩達と戦っていたのを視る限りでは、この魔法少女が敵である可能性は低い。
「見た事が無い顔だね?もしかして新入り」
そこへライラがやって来て、
「そうだ。お前が呑気に産休をやっている間に入った」
ライラが強田に自己紹介を促す。
「あー、強田護だ」
産休明けの魔法少女は、自己紹介する強田の態度から強田の魔法少女に成る前の性別を正しく悟った。
「君、かつて男だろ?」
「かつてじゃねぇ!今も男だ!……って!解るのか!?こんな格好をさせられているのに!」
「激しいノリツッコミをありがとう。僕は福山翔太。僕も魔法少女に成る前は男性だったんだよー」
「あっそ」
一旦素っ気ない態度をとる強田だったが、翔太とライラの会話に異様な矛盾を感じて驚いた。
「って、おかしいぞお前?お前は男だろ?何で男が産休貰ってんだよ?」
「おかしいかい?」
「おかしいだろ!?産休で、普通女だろ!?」
「ひどいね君。それじゃまるで、僕が女じゃないって言ってる様なもんじゃん」
そんな強田と翔太の会話を観て、ライラが溜息を吐いた。
「強田……知らなかったとは言え、福山にここまで絡むとは……ご愁傷様だよ本当に」
(またろくでもないタイプの奴かー!?)
「で!……説明してもらおうか!福山翔太は何者だ!?」
「僕は福山翔太。僕も魔法少女に成る前は男性だったんだよー」
「そうじゃない。強田は、お前の過去を知りたいって言ってるんだ」
「……過去ねぇ……」
翔太が嫌そうな顔をした気がした強田は気が引けた。
「話したくねぇのか?だったら後で―――」
でも、翔太が意を決して爆弾発言をした。
「僕はね、恋人だった男性に殺された事が遭ったんだ」
強田は驚いた。
「殺された!?言葉のあやだよな!?」
ライラが残念そうに首を横に振った。
「事実だ。現にその男性、殺人未遂容疑で逮捕されている」
「で、病院に運ばれて、そこで血液検査をして、魔法少女に変えられたって訳か?」
「そ。でも、魔法少女に成った事を後悔していない。だって、その恋人だった男性の子供を出産する事が出来たんだもん♪」
強田は、改めて異様な矛盾に首を傾げた。
「お前は男なんだろ?なのになんで出産をしたんだ」
ライラが溜息を吐いた。
「確かに……最も重要な部分を話してなかったな?」
「なんか……嫌な予感しかしねぇんだけど……」
「福山は……性同一性障害ではないのに過剰男性愛者なんだ」
「で、せっかく魔法少女に成れたんだから、他の女性の生殖器をコピーして移殖して、要らなくなった竿と玉は切除したんだー♪」
強田の目がハイライトを失いながら点になった。
「ワー。マホウショウジョノチョウノウリョクッテスッゴーイ!(棒)」
(またろくでもないタイプの奴かー!?)
強田は、翔太を殺しかけた男に会いに刑務所にやって来た。
ライラの話によると、この男の名は「阿倉景虎」。
翔太の幼馴染であった阿倉は、ある目論見を理由にフェンシングに打ち込むようになった。が、男性でありながら阿倉に愛欲していた翔太も、釣られる様にフェンシングを始めたのだ。
それが、この殺人未遂事件の本当の始まりだった。
動機を一言で例えると……嫉妬だった。
(またこのパターンかよ!?)
高校生になってもフェンシングを続けていた2人だが、その差は歴然となってしまった。
翔太は顧問にエペやサーブルに適していると称されたのに対し、肝心の阿倉は……
面会室に到着した強田。
阿倉を視た第一印象は……危険。
ちょっとした事で直ぐに逆恨みしそうな……そんな目をしている気がしていた。
「お前……福山って野郎を―――」
阿倉は予想通りの反応をした。
「アイツのせいだ!アイツのせいで、俺の人生は滅茶苦茶になったんだよ!」
(解り易い逆恨みだなぁー)
阿倉と言う男……最初からフェンシングに触れるべき人間ではなかった。と言うより、武器を持って良い人間ですらなかった。
阿倉がフェンシングを始めたのは、「最も簡単に金メダルを手に入れられる方法」と言う安易な考えだった。
無論、その程度で金メダルが手に入る程現実は甘くない。
強田は、刑務所の許可を得て、阿倉にフェンシングの試合を挑んだ。
(あいつ等の権力って……こんなに凄かったのか……)
阿倉は逮捕される直前までフェンシングに打ち込んだ男。対する強田は翔太にルールを教わっただけの素人。
本来なら、阿倉の圧勝で終わる筈だ。だが……
「では、よろしくお願い―――」
阿倉は、開始早々いきなり攻撃してきた。
強田は面食らったが、不意打ちを躱している内に、阿倉からポイントを奪った事になってしまっていた。
(弱っ!相手の攻撃をくらった後の事まで考えてねぇ!これなら、そこら辺のガキのチャンバラの方がまだ手強いぞ?)
阿倉は、ただデタラメに不意打ちを連発するばかりの攻撃一辺倒で、防御や回避を疎かにし過ぎていた。
高校でフェンシング部に入部するまで、試合開始から自分の攻撃が当たるまでの時間を極力短くする事ばかり心血を注いでいたその結果である。
一応、剣を左手に持つなどの工夫はみられるが、まったく意味を成していなかった。
当時の顧問もその点を見抜いていたのか、このままでは基礎卒業すら難しいと告げた事さえあったと言う。
しかし、根っからの自己中心的な逆恨み体質な阿倉に、顧問の叱咤激励は届かなかった。
寧ろ、どんどん遠い所に行ってしまう翔太ばかり優遇され、阿倉自身が劣遇される事態を不公平だと解釈してしまった。
対する翔太は、ある時期から、試合開始から自分の攻撃が当たるまでの時間の短縮と言う点では阿倉に到底勝てないと悟り、胴ではなく腕を狙う様になっていった。その結果、相手の手の動きをちゃんと観察できる様になったのだ。
そして……事件は起こった。
切っ掛けは、翔太がオリンピックにスカウトされた事。
過剰男性愛者である翔太は、阿倉から離れるのを拒む様に断ったが、この時既に翔太との差が劇的に広がっていた阿倉から見たら、翔太がオリンピックに往くタイミングを計っている様にしか見えなかった。
阿倉は我慢の限界だった。
(で、殺そうとして檻の中って訳か?解り易い下っ端人生だな?)
強田は、八つ当たりするかの様にウナキとトカゲを同時に兼ね備える巨大怪獣に殴る蹴るの暴行を加えていた。
「だー!お前じゃねぇ!」
「私達……必要?」
魔法少女達が強田の圧倒的な強さに呆然とする中、翔太は異様な危うさを感じていた。
「お前みたいな奴を何億回殺してもな、強さの証明にはならねぇんだよ!」
その時、強田の頭部を強烈な冷風が襲った。
「頭冷やしなよ」
「何するんだ!?この変態!」
翔太がムッとする。
「他人の自由に土足で上がるなつうの。それに」
巨大怪獣は既に光の粒子へと姿を変えた。
「既に戦いは終わってる。オーバーキルは良い趣味とは思えないね」
自分が怒りに完全に支配されていた事に気付いた強田は、自分を恥じる様に訊ねた。
「……すまねぇ……現実に逆恨みしてた。努力の意味が解らなくなってよ……」
それを聞いた翔太が悲し気な顔をした。
「逢っちゃったんだね?景虎に」
強田は……力無く首を縦に振るのが精一杯であった。
強田は焦っていた。
力の差を魅せ付けるRisquemaximumに。
現実に敗けて目論見を破綻させた阿倉景虎に。
そして、強過ぎる糞外道から遠ざかっていく自分自身に。
魔法少女・強田護の未来はどっちだ?
因みに、
福山翔太が出産した双子の父親は阿倉景虎である。
阿倉に嫉妬されて重体を負わされた翔太であったが、魔法少女として復活して性転換を果たした翔太は、しばらく魔法少女として巨大怪獣と戦ったのち、再び阿倉の許を訪れ、阿倉に妊娠させられたのである。
ライラは言う。
「ここまで馬鹿な魔法少女は、世界広しと言ってもお前だけだぞ?」




