098:村の復興から始めます
「孤児院? 確かに難民街にあるけど……なるほどそういうことよね。でも良いのかな? 勝手に別の用事にあの場所を使ったりして……後でリーファってエルフに叱られないかな?」
孤児院の子供達を村人として受け入れる際に、その判断を精霊樹の結界に委ねた事を私は思い出していた。一応の用心として考えた事を、システムが上手く空気を読んでくれて連携をさせてくれたのだった。
精霊樹の村に移って以降も孤児院の男の子達のグループは、自警団と連携して、難民街で行き場のない孤児の保護を行っている。この仕組みのお陰で、この件については完全に私の手を離れているのだ。
「だ、大丈夫だと思います。リーファ様がここを離れる時に、もし自分の戻るのが遅くなった時に、誰か外の大人に頼る必要が出来るかもしれない。その時には、この結界を越えられる者ならある程度の信頼を寄せても大丈夫だからと、仰っていました。だから……」
精霊樹がどの様な基準で人物の判断を行っているのか、その点は気にはなったが、最終的な見極めの保険としてなら有用なのは間違いなかった。
「わかったよ、最初の見極めは自分達で行うにしても、短時間の付き合いで重要な事柄を打ち明ける必要があるかもしれないから助かるよ」
(もっとも、悪意を持っていなくても人によって立ち位置が違ってくれば、それが善意の判断でもこちらにとっては、不利益となる可能性もあるかもしれないけど)
精霊樹の判断を過信できないのには、人の世の中には単純な善性と悪性では、計れない事をゲーム時代のユーザーの行動や、データベースの情報から私なりの理解があったからだ。
「とにかく、皆の決意はわかったよ……協力して貰えるなら、色々と出来ることがありそうね」
私の言葉に会議に参加している者達が、全員頷いた。
「なら、まずは……システム管理AIの力で村の復興から始めます」
私は決意を込めて、そう宣言したのだった。
◻ ◼ ◻
「さて、一旦、更地にした方が良いよね……本当なら、元々の村の住人の意見を聞きたいところだけど、魔物に占領された場所は焼却が基本のようだし、勝手にやらせてもらおう……管理地になると便利ね」
当初は、【収納】と【浄化】を駆使して使えそうな素材を再利用しての、最低限の復興支援を考えていた。
だがハウジングメニューから、今ある村の建物等は簡単に解体する事が出来てしまった。
こうなってしまうと、そのままの勢いで綺麗に更地になった村を、私が新たな村として生まれ変わらせてしまうのに、躊躇がなくなってしまった。
色々と手間が掛かっていれば、その分、もっと思い悩んだかもしれなかったが、安易に出来てしまう以上、思い悩んでも仕方ない。なら、せめて意味のあるものにしようと私は割り切って考えた。
「エルフと獣人族が、自分達で使うつもりでこの村を解放したという体裁にしたいので……この辺が良さそうね、宿泊施設として利用できそう」
それは、土壁と植物の蔦に覆われた2階建ての建物で、2階部分に4部屋の宿泊場所があり、1階は受付兼酒場に利用できそうなカウンターのある、まるで田舎のギルド支部のような建物だった。
もし港湾都市とのルートを解放できれば、この村の立地から考えて重要な中継拠点となるだろうと思われた。その為には、先ず最初に宿泊施設を作る必要があった。
「まるで地面から生えてきたみたいに見えなくもないし。これなら精霊魔法で作ったとでも言えば通用しそう……」
外壁が土壁で出来ていて、それを補強でもするように、まるで骨格のような木の太い枝と、そこから伸びた蔦に覆われたファンタジー感が満載の建物だった。
「建物内部も即興で作った感が満載の多少雑な感じが、余計にリアルね」
建物内部をふよふよと見て回りながら各所の確認を行う。
「見た目以上に強度も申し分ないんじゃねえか?」
後ろでコンコンと建物の壁を叩いているガルフが、満足そうにそう声をかけてきた。
「しかし……これをワシらが精霊魔法で作った事にするというのは……先々色々と面倒な事になりそうだな」
サザン族長の心配はもっともだと思う。簡単に建物が建てられると知られれば、色々と要求される可能性もあるだろう。
「制限があるって言えばなんとかなるんじゃないかな? 滅多に使えないとか、森がある前提とかね……そういう事にするなら、後は外壁よ井戸ぐらいにして、解体した素材を積み上げとく感じにしようかな……後は、あれだな」
私は村の隅の方に飛んでいき、幾つかの小さな石碑を立てていった。その石碑にはそれぞれに名前が刻まれていた。その石碑の下にはこの村の為に亡くなった者達の遺骨が火葬され埋葬されているのだ。
「埋葬するのが、縁も所縁もない私達でごめんなさい。約束は出来ないけど、可能なら元の村人達を何れは呼び戻せるように頑張るから」
1度滅んだ村に戻りたがる村人がいるのか疑問だったが、声をかけるくらいはやってみたいと思っていた。
「ビスタ~、ここに、おはなうえてもいい?」
突然、ミーナが綺麗で整然としているが、殺風景なこの場所を見て、そう尋ねてきたのだった。




