097:村の方針会議
「管理ってやっぱりそういうことよね……」
使えるんじゃないかとの予想どうり、ハウジングメニューは使用可能のようだった。
「あの結界領域だけだと思ってたんだけど……この力、何処まで現実世界に影響を及ぼすんだろう?」
何を基準にしているのか、管理の範囲は村の柵がある少し周辺辺りに限定はされているようだ。
「適度に微妙なラインを突いてくるよね、【システム管理AI】……空気読みすぎ」
もし住んでいた村の人達に、何処までが村ですか? と尋ねる事が出来たら9割は納得するんじゃないかと思われた。
「幾つか設置できる物が増えてる……村の人数だけじゃなくてコア吸収でも増えるんだね……幾つかの種類の防壁がある……これ設置したら逃げ出した村人達も安心して戻ってこれる? オークやゴブリン程度なら防げそうだけど。う~ん、あんまり派手なことをすると、都市ミザレの領主とかが絡んできちゃうかなあ」
「ビスタ~、いくよ~」
村の入り口でミーナが、手を振って呼んでいる。私達は今後の話し合いの為に一旦、精霊樹の村へ戻る事にしたのだ。
「ごめん~、すぐいくから~」
私はふよふよと村の入り口に設置された石門に向かったのだった。
◻ ◼ ◻
精霊樹の村に設置した集会所は、普段は主に、精霊樹の村の方針等を決めるのに使用される場所なのだが、今日は新たな問題、主に対外的な方針についての話し合いが持たれている。
この場にはミーナを初め、まだ幼いマナを除くクランメンバーとアスカ、孤児院の代表としてエミリ、そして、獣人族やエルフの戦えるメンバーが集まっていた。
今回の議題は精霊樹の村の行く末を左右する事になりそうなので、出来るだけ多くの者にも聞いて貰おうと思っていたのだけど、獣人族もエルフも基本的にリーダーの決めた方針を受け入れるとの事なので、ある程度、人数は絞られたのだ。
只、外での活動に参加してもらう可能性のある者には、出来るだけ多く参加して欲しいと、私が要望したので、戦えるメンバーに話し合いの内容だけでも聞いて貰う事になった。
「問題は何ができるのかというよりも、何処までやるかって事さね」
私がデリム村に対しても、精霊樹の村と同程度の管理能力を得た事を報告すると、サリーナさんが、開口一番そう言い切った。
「そうですね……ビスタさんの話を聞く限り、その気になれば、デリム村は崩壊する以前よりも復興してしまうでしょうね。――ですが、短時間にそれだけの事が出来る力があると分かれば、都市ミザレから何らかの介入があるかもしれません」
セナが考え込むようにそう言った。今回、結界内で好きにやっていたこの力を、対外にどう説明するかということが、一番の問題になりそうだった。
「問題は、私の姿が特定の者にしか見えないという事なのよね……かといって謎の人物の不思議な奇跡ですって説明する訳にもいかないだろうし。そうなると誰かが私の代わりにって事に」
姿が見えればいっそのこと割り切って、偉大な力を持つ精霊として力を振るうという選択肢も取り得たのだが――
ミーナとアスカが何故か期待したような表情で、私を見ていた。私はすぐさま否定の意味を込めて首を横に振った。
まだ子供の二人にこのような役目を負わせる気は、全く無かった。
「その事だが、ワシはエルフが矢面に立っても良いと考えている」
サザン族長が重々しい口調でそう告げると――
「ああ、俺達、獣人族もその点では協力できそうだぜ」
ガルフがさも当然とでもいう調子で同意した。
「二人ともそんなに簡単に、決めてしまって良いの? 確かに、自分達の新しい暮らしを守る為に、強くなるという共通の目的の為に、力を貸してはいるけど……これはあくまでも私の個人的な行動だよ?」
現状、強くなる為の道筋は見えてきている。安全策を取るなら私のコアを探しながら、出来るだけ目立たないように最適な狩り場を模索するという方針もあるのだ……いや、魔族の強さが見えない以上、その選択がベターのような気がしている。
「まあ、自分達の事だけを考えてりゃ、このまま隠れてるのが無難なんだろうぜ……だがそうやって暮らしていて世界樹の森は守れたか? 俺達は今やれそうな、思い付く限りの事をやるべきじゃないか……そんな気がしてならねえのさ」
ガルフに同意するようにサリーナさんや、他の獣人族やエルフ達もそれぞれで賛成の意見が大勢を占めているようだ。
「この戦いには外部の協力者が、必要だとワシは思う。例えば勇者殿との連携を模索するのも1つの手段だろう」
サザン族長やエルフは、勇者に助けられたお陰で命拾いをしている。その為、その力に対する信奉が高いのかも知れない。
「わかったよ……皆が協力してくれるなら、先ずは外部の協力者探しから初めようか……まあ、交際範囲の狭い私達だから、まず自警団なんだけど……団長は信頼できそうだから打ち明けたいところだけど、自警団事務所では心配かなあ。出来れば少人数で話せる場所だよね」
難民街は、人がどんどん集まっており、自警団も人の出入りが多い場所だ。
「あのう、それなら孤児院を使って頂くのはどうでしょうか?」
今まで、話を静かに聞いていたエミリが、突然、意を決したような表情でそう言い出したのだった。




