表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/65

相反

ここで下書きノートは途切れているようだ……


すなわち、ここからさきは紡いでいる僕にすら予測出来ないという事です。書くことがこんなにも楽しいなんて。


逆にいえば、下書きがなくなって追い込まれています。


クリスマスをわざとあけたのはリア充の演出です。クリスマス?そんなものはただの平日でしょう?天皇誕生日の方がよっぽどありがたい

Side in 和音


空母、母艦、そう言えば響きはいいが、そんな格好の良いものではなかった。全長およそ100m、高さは10mの円筒が転がっていただけだった。年時によって連れてこられた倉庫には金属でつくられた鉛色の円筒がある。突然だったせいで全員が水着に上着を羽織っただけだ。


いやシュール過ぎるだろ。何で円筒なんだ。飛行機とかいろいろあっただろう。鉄を鋳型に流し込んで、そのまま固めた様な造形に、私はただ驚いていた。年時が造形に拘らない筈がない。銀色が日光を反射していて眩しい。鉄を固めたような、と形容するには齟齬がある。鉄と呼ぶにはあまりにも磨かれていた。


「鏡だよ。か・が・み」


年時が自慢気にそう言った。だが、鏡はいいとして移動方法に見当が付かない。翼もなければ、何かブースターの様な噴出口も見当たらない。車輪も勿論ないし、窓もない。辛うじてティアが入れるくらいの大きさのこの母艦で何をするつもりなのだろうか。私には理解できない。


「で、これ何?」


室先が間髪入れずにすぐとなりの年時に話開ける。髪で耳の傷は隠れているものの、目に当てられている眼帯が私の罪を表していた。眼帯は、先ほど年時が用意した簡易的な黒の眼帯だ。でもそれは、私に自覚させるにはな材料となっていた。


狂気によって奪ってしまった、私の罪。それを私は忘れようとしていた。心の中では、ただただ罪悪感だけが巡る。黒く、粘ついたその逃避の材料に私は恐怖していた。また、ああして奪ってしまえば、それこそ私は崩壊するだろう。私はあの時に何故壊れなかったのか。それすらも私には分からなかった。


「何って、見りゃ分かるだろ。母艦だよ、母艦」


年時はそう言って、大袈裟に手を広げた。


「今から攻めに行くのは海の向こう側だぜ?流石にティアでひとっ飛びって訳にはいかねェ。行動時間もあるしな。原動力は一応電力なんだし、戦闘中に停止なんかされちゃ死ぬぜ?で、コイツの出番って訳よ」


満足気に語る年時を見ても私は何も思わなかった。ただ、私はまだ『半分しか世界は変わっていない』という現実に思考の大半を使っている。そして、その半分を得る為に使われた命と、代償と、罪を。


───自業自得。


私は狂気が怖かった。つまりは、私自身に恐怖を抱いていると言っても過言ではない。狂ってしまえば、見境なく人を殺めてしまう、不都合な事があれば排除しようとしてしまう。そんな私になってしまえば。アタシは弱すぎる。何も受け止められないし、何も背負えない。つまりは、狂気を知った私という人格でなければならない。何時でも狂ってしまえる私に成らなければ、現状を見るどころか、生きていく事ですら出来ないだろう。


「んでさー、これ、なんあの?うちがもっかい聞くけどさ、空飛ぶの?潜るの?」


「飛ぶに決まってんだろ。流石に水圧に耐えられるモン作るってのは難しいんだ」


「一体どうやってだ。翼も羽もないぞ」


ただの円筒にしか見えない、と何度も言ったが、まさにその通りなのだ。私は会話に介入して、その質問を投げかけた。飛べるかどうか。仮で飛ぶのだとすれば、加速装置の様なもので斜め上に飛び出せば空中を進める。落下の衝撃に耐えられるかどうかは定かではないが。私は、空を飛ぶ術を知っている。室咲のあの砂鉄で形成された翼、そして、私の紅葉桜。だが、あれが成せたのは精神状態あっての事だ。もしも今同じ事をしろと言われても、私には不可能だ。


誤りを正す為に、私は力を振るった。相手が間違っていたがら、私は飛べた。だが、私は『今』間違っている。生きることが誤りだとも思えてくる。罪人が集団に属している自体がおかしい。ましてやそのトップが罪人だなんてもっての他だ。他人を壊すまでならばいい。しかし、私は仲間と呼べるであろう彼を奪った。私は、その誤りを正したいと思っていた。


「んー……まぁ速度は出ねェだろうな。推進力というよりは浮力だし。まぁ入れって。見れば分かる」


年時はそう言って、懐からリモコンのようなものを取り出して軽く操作する。銀色の円筒の先端が開いた。大きさは大体ヒト1人分くらいだろうか。ちなみに、円筒の直径は10mだ。その円の中心部分がヒト1人分。大まかに言うと2m開いた。半径5mに1mの穴。つまりは、入り口までの高さが4mあった。


「………どうやって入る気だ」


年時をふと見ると、額に冷や汗を滲ませていた。後ろで年日の「あれれー?おっかしぃなぁ……」という独り言も聞こえる。結論、中に入れない。何のための空母だ一体。


「そ、その、肩車で?」


「いや、4mだぞ。俺とテメェでも足りねぇよ」


はぁ、と室咲が溜め息を吐いて、後頭部を億劫そうに掻いた。室咲はその後少し間を開けて舌打ちをし、


「どっから期待を入れる気だ?なんなら、俺が全員中に入れてやらんこともない。それで、あのクソ悪魔は動くのか?」


「はっ、よろしくお願いしようかねェ変態さんよォ。俺のプログラムを書き換えやがって。整備してねェって言えば嘘になる。ただし、機体の内部は触ってねェ」


私は二人の言っている意味が理解出来なかった。その言い方には少し疑問を覚える、意味は分かるが、その話をする理由がわからなかった。思考を巡らせる事はしない。


「なら、いいんだ。なんせ、俺は一度空を飛んだんだ」


正気か、と私は思う。室咲の意図を把握した。私と同じ事をしようとしている。室咲が狂っていた時に起こした現象を、何もない普通の状態で成そうとしていた。機体の遠隔操作。そう言ってしまえば可能に見えるが、謂わば『脳波を遠くにいる機体に気付かれるほどにまで強める』必要があった。常に脳波はモニタリングされているらしいが、距離が離れれば離れるほど、強く念じる必要はある。


私はそれを信念によってそれを成した。室咲は、狂気によってそれを成した。つまりは、室咲が機体を呼ぶには狂気に触れなくてはならなかった。


「ゃ、めて……」


小さく声が漏れた。気付くと私は室咲の服の裾を強く握っていた。怖い、ただ純粋に怖かった。また、繰り替えしてしまいそうで、私は狂気を恐れていた。室咲の在り方そのものが狂っていたから、狂ってしまえばそれに準じてしまう。絶対正義、とそういった。自身を肯定する為に、他者を否定する。室咲は首を横に振った。


「怖いよな。俺も怖いさ。だけどな、俺は無能だから、頼る他ない」


「違う……貴様は無能なんかじゃ」


「無能だよ。俺は自分しか騙せなかったんだ」


握った手を振り払われる。途端に不安にかられた。拒絶でないことを理解していても、自分から離れていく室咲を感じた。同じ場所に立ったのに、同じモノに触れたのに、私は恐れて、彼は立ち向かうのか。


「来いよクソ悪魔」


砂鉄を纏った悪魔が倉庫の屋根を叩く。室咲が嗤った。口端が吊り上がっている。ニヤニヤと、生理的嫌悪感w覚えるような笑みへと表情を変化させていく。


「………ひぃっ」


声を出すつもりはなかったのに、喉の奥から溢れ出てきた。怖い。怖いのか?狂気が、いままであんなに触れていたのに、殺したいという程にまで好んでいたのに。弱い、私は弱かった。その為に、狂気の泥を被り、己を守ってきた。狂気の泥は確かに私を狂わせて、私を殺していった。


「違う……違うッ!」


払う。思考を掻き消す。恐れろ。狂気は怖いものだ。私は狂気が怖いから、私はそのことを考えたくない。考えられないと思い込め。


「「はははっ………あははははははははっ!!!!」


声が室咲と重なった。私の声と室咲の声がユニゾンしながら不協和音を奏でる。私は奏者だった。私は和音だった。だが、狂うことを主とした和ねは必要とすらしなかった。


「そんなものが無くたって変わる!私は凡人だ。天才に歯向かおうなどと思ったことが既におかしい!!だが、私は変えたかった。黙ってみていることなんて出来なかった。私は変えることが出来たさ。私は不器用なあまりに全てを変えてしまったがな!!ほら……見るが良い。狂う必要のなかった室咲が狂っている!足を失う必要のなかった真希が足を失くしている!感覚器官を失う必要のなかった綾火が五感を奪われつつある!」


私は叫んでいた。自分への言葉なのか、訴えなのかは分からない。ただ、持っていた感情が発露している事はわかる。ただそうにも正す箇所がなかった所為で、私はその感情を抑えることが出来なかった。


「ほら!どこも間違っちゃいないだろう!?私は正しいことをしてきたからな!方法が違えど私は正しい。世界を変えるというよりも正していると形容すべきじゃあないか?だからこうして世界の半分を手にした!」


「俺は正義だ!どこまでも正しくて、俺のすることすべてが許される!なんたって正義だからな!正義は間違えない!」


室咲が絶叫する。狂気を体現したかのようなその思想に私は答えようとする。笑みがこぼれた。私は否定出来ない。正義は間違えない。ただ、少将ばかりのすれ違いを感じていた。───そのものが正義なのか、正義の執行者か。違えど目的は同じだった。最高の統率者は明確な敵である。そんな言葉をふと思い出す。型の違う私たちが一緒でいられる最大の理由だ。天井から埃が落ちてくる。単調な打撃音と一緒に嗤い声が聞こえる錯覚。


「兄ちゃん、ちゃんと見て。兄ちゃんの罪だよ。大丈夫、年日も背負ってるから。二人で持っちゃえば辛さは半減だよ」


「ごめんな……ごめんな……」


白い二人が抱き合っていた。磨り減っていた。休養が不足していたのだろうか。


「感情がない……から。機械仕掛けやったからうちはデウスやったんや…こんなん……嘘や」


「嘘だよ姉さん。姉さんに感情がなかったら私は愛されてないです。大丈夫です。私が代わってあげます」


赤い二人が抱き合っていた。磨り減っていた。休養が不足していたのだろうか。


「「さぁ堕ちろクソ悪魔ァ!!」


私たち二人だけは、相反していた。

次回予告


本当に私は、変えたかったのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ