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───

「目ェ埋めてねェと不便だろ」


年時が声をかけてくる。俺は平手打ちされた頬を擦りながら振り返える。


「……んだそれ」


「ほら」


投げて何かを寄越してきた。球の形をした眼球だった。ありがたい。むしろ、義足を作ってしまうのだからそれくらい作れて当然かとも思う。なんせ、塩水に傷口を入れるのは痛い。ものすごくいたい。しみるし。眼球の色は、俺の本来の眼球の色とはかけ離れた黄色だった。一体なにがしたかったんだ。その義眼をありがたく受け取ることにして、目を普段の正位置に向けてから、開いた空洞にはめ込む。ごろごろと中で転がると思ったが、案外うまくいったらしい。ぴったりと俺の瞳孔に収まった。瞼がちゃんと働くか心配したが、それも問題ないらしい。


「サンキュ…さすがに耳はねぇか。文句は言わないさ。それにしてもまぁ良く眼球なんて作れたな。サンプルも無かっただろうに」


「サンプルは作るもんだぜェ?お前はデカいし、別に東軍の兵士でもよかったから好都合だった」


耳に引っかかるような表現を年時はした。要するに、この眼球のサンプルは兵士からとったという事だ。死体をモデルにされたのは気にいらないが、それでも十分に機能する。


「誰がサンプル取る為に殺したんだ?」


返事を想定して問いを投げる。


「おいおい。殺人っつーもんはなんだかんだ言って普通は出来ねェんだぜ?安々と人を殺せるのは異常者である能力所持者だけだ。真希は足なかったし。訓練で急だったしよ?弾薬も無限じゃあねェとなると年日もナシだ。消去法で、あとは分かるな?」


「テ、メェ……」


俺が眠っている間に和音が殺しをしていただと?あんなにも不安定な和音を狂わせて眼球を抉ったのか?俺は一体どれくらいの間眠っていたのか実際、知らない。聞いてもいなかった。いくら作業の早い年時でも、俺の義眼と真希の義足を作るには時間がかかったはずだ。サンプルと取り続ける為に何度も和音は殺人をしていたのか、と俺は実感した。怒りが込み上げてくる。必死に抑えようとしたが、抑えられる訳もなかった。和音は磨り減りすぎていた。それこそ、壊れてしまいそうなくらいに。


───そうだ。殺してしまえよ。


脳内に響いた。欲求、欲望の狂った体現。意識を反らそうと抗った。


「かかかっ、まァ待てよ。これでも考えてるんだ。何にも聞かずに事を済ますってのは悪い事じゃねェの?絶対正義さんよォ?」


意識を反らすのに十分な返事を年時はした。絶対正義。俺の持っている異常だった。俺が正しく、何の行動をとっても正しいとされる。俺の持つ歪んだ異常。約束が持ってしまった異常は深層心理に住み着いていたのだ。


「……一体それを何処で聞いた」


「そりゃァ?自分の作品の完全ハッキングは無理でしたけどォ?録音機能が生きてたんでェ?正しいんだろォ?」


「わかった。理由を聞かせてもらおうか」


狂気に染まっていた自身を知られている事に対しては何も思わなかったが、サティとの思い出がそのまま持論に発展していた事を再度理解する。今はその過去を知られる事の方が恐ろしい。殺人を娯楽とする事の罪。明らかな異常。その異常から逃げた俺は、知らぬ間に異常を手に入れていた。異常の中で育ったのだから、その中での正常はここでは異常となる。……同じ血が流れているから、同じ事をする可能性があることを示し、俺自身が人の叫び声、悲鳴を求めてしまう可能性があるということ。俺は正義でないといけなかった。だから、俺はそれを自覚する訳にはいかなかった。

───いいじゃないか。もう狂って仕舞えよ。和音も狂ってるんだ。狂気には狂気をぶつければいい。


ダメだっつってんのがわかんねぇのか馬鹿野郎。


「っと、お前にゃ話した事無かったんだっけか。俺は繋ぐ事に関して才能を発揮するんだよ」


「急に何言ってやがる」


「いいから聞けって。矛盾だって繋いじまうんだ。俺の生まれながらにして持った力だ。能力なんて『異常』じゃねェ。俺が俺であるかぎりに付き纏う力。『騙す』お前らとは違って『そういう現象』を使えるんだよな」


「だから、どうしたってんだ」


「俺は繋ぐ事が出来ても、繋ぎ止めること(・・・・・・・)は出来ねェんだ」


「……それって能力の一環なんじゃねぇの?俺の体質だと思ってたこれも能力だったんだが」


「じゃ、無能は俺だけか。能力ならオンオフ出来るだろ。常時発動と限定発動は違うからな。んで、俺は繋ぎ止める事を、力に頼らずに俺自身の力で維持しようと思ったんだ。その結果として弾き出されたのが、共有だよ」


「で、一体なにを共有しろと?」


チッチッチッ、と舌を鳴らしながら年時は俺の耳を指差した。


「恐怖の対象だ」


次回予告


大丈夫やって。ちゃんと剃ってあるし。いや、うん。剃られた


やっぱお前死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!

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