第69話 とうとう寺院の主が出てきたが時既に遅し
わいわいと外に出たリョウ&フレンズ一行。
巡回の兵士がこれを見つけて、
「真夜中に見慣れぬ集団が!?」
と慌てて駆け寄ってくるが、これを俺は腕を伸ばして素早く「アパラチャノモゲータ!」とゾンビ化。
「ウグワーッ!?」
「いっちょう上がりだぞ」
「リョウ様の、生きている人間を問答無用でゾンビ化する術……。敵からしたら恐ろしすぎますわね」
「弱いただの人間だと抵抗もできないからね。しかもゾンビになると一律スペックになるので弱くなるし」
本当は使いたくない技ではあるのだ!
だが手っ取り早く相手を永久に無力化できるからね。
俺はゼクウに気付かれぬよう、立てる音は最小限で螺旋スロープを上がっていく。
『因子の乱れを観測。我々は見られています』
「アザレアは俺を怪しんでいたからな。キョンシー以外にも監視をつけていた可能性はある」
「随分と慎重な方がいましたのね?」
「ああ。ギフト持ちたちのなかでも頭脳役みたいな女の子だ。後は、因子の乱れということは……。特殊な手段で俺達を監視している? ヘルガーディアン的に解釈はどう?」
『我々が視認できない場所から見ています。尋常な方法ではありません』
「じゃあテシウスだな。人の良い彼の事だ。アザレアに言われて不承不承という感じで見てたんだろうが、まさかその懸念が的中して、きっと驚いているだろう」
「師父は人間たちと随分親しくなったのですね?」
「ああ。あくまでギフト持ちたちだけだがな。寺院の責任者なんかは姿すら現さない。さあて、神聖粒子砲に到着だ」
スロープの最上階。
天井のレンズと、それを取り巻く大量の金属端子。
あれ?
今まさに因子が集まって行ってない?
あれあれえー?
おかしいぞー?
神聖粒子砲が動き出してる……!
「異なる魔力を持ったギフト持ち……。報告は受けていたが、まさか曲者とはな……」
スロープの行き止まりから、ぞろぞろ人が現れる。
おや、これは何やら、偉そうな奴がいる。
とにかく高齢なことは分かる老人で、オレンジ色のローブを羽織っていた。
シワの間から、鋭い目が俺を見据える。
「我ら人の業に過ぎぬ魔法では、貴様の魔力が揺らいでいる様しか見えぬ。だがテシウス、お前ならば見えるだろう」
「あ、はい……」
行き止まりの壁がぐるりと回って、テシウスが現れた。
非常に申し訳なさそう。
なお、俺は向こうが色々行っている最中に、ヘルガーディアンに指示を出している。
「神聖粒子砲分析して。可能な限り。だめそうならぶっ壊すから」
『既に分析を開始していますよ』
「さっすが」
ヘルガーディアンのアクションは科学なので、因子を感知するテシウスの目では分からないし、人間たちの魔力感知魔法でも分からないのだ!
うーん、世界的なシステムの穴みたいなのを突いてるな。
「彼を中心に、因子が揺らいでいます。そうか……。あの時は不思議な力に気を取られて思い至らなかったけれど、これは……人が発する因子ではありえません! ねじくれ、凝縮された因子が彼の中に渦巻いています。いえ、オルトさんだけではなく、横の女性たちからも……!」
「あの時は牛が喋ったから、全員気が動転して俺を追求するどころじゃなかっただろ」
ハッとする寺院の連中。
「そう言えば、牛がただの土の塊になって、中に空洞が空いていたから我々も正気に返ったんだった」「もしやその横にいる、何の因子も発していない鎧姿が牛の中身だったと言うのか!?」
『その通りです皆さん。寺院の知識をたくさん教えてくれてありがとうございます。感謝します弱き人々よ。牛が喋るわけないじゃないですかプップカプー』
「わ、我々の知識が盗まれていた!?」「卑怯な!」「賢い牛のフリをするなんて……!」「しかも煽ってきた!」
『皆さんが、私に質問されたことを全てペラペラ話して下さったからです。文献なども夜間に読破しましたし、地下で栽培されている作物のサンプルも採取してあります。寺院内の人間関係や僧正が秘密にしているアングラな趣味まで把握しました』
「な、な、なんだと!? 最も危険なのはあの鎧姿ではないか! ええい、やれ! 粒子砲、内部照射! これは人の体に害を及ばさぬ! 貴様ら人ではない者たちだけを殺す力よ!!」
寺院の偉い人が、なかなか洒落にならない命令を下した。
俺はここで少しも慌てず、
「ゾンビやゾンビ、こっちにおいで」
「ウボアー」
「肉の盾展開!」
「ウグワーッ!?」
「あっ、兵士がバラバラにされておぞましい盾に再構成された!」「こ、こいつは化け物……!」
『私は、神聖粒子砲が光因子成分の抽出のみで発動する場合、それへの完全な耐性を持ちます』
『わしもじゃー!』
ここにラッシュまで飛び込んできて、大混戦の様相を呈してきた。
神聖粒子砲が吹き抜けとスロープ目掛けて、光のシャワーを浴びせかける!
だが、そこに仁王立ちしたヘルガーディアンが光を浴びつつ、解析を続けている。
『照射状況の貴重なサンプル、助かります』
「誰か! 誰かあの鎧の男を止めよ!! やつは神聖粒子砲を調べ尽くしてしまうぞ!」
「任せろ、大僧正!」
飛び出してきたのは、糸だ。
ということは、ローデスか!
飛び回るラッシュと、体内の武器を取り出してピコピコ踊るヘッドレスが粒子砲の光を大きく遮るが、この二人ではローデスに反応しきれない。
俺は肉の盾をファルメラとオトハに貸した後、ローデスに対抗すべく飛び上がった。
「うおおーっ!! ……!?」
「好きにはさせないぞ、ローデス!」
俺が腕を振り上げたところに、ヘッドレスが体内から取り出した炎の槍を投げてくる。
あっ、炎に触れたからダメージ受けてぴょんぴょん飛び回ってら。
悪いねヘッドレス。
炎の槍が、ローデスの大剣とぶつかりあい、切先はヘルガーディアンに届かない。
「この……槍……!!」
空中で交差する瞬間、ローデスの目が俺を射抜いた。
「リョウか!? あんた、リョウなのか!? じゃあ、エルミジャッドにでかい腕を生やして、最後にめちゃくちゃにしたのは……。チビどもが、みんなをぐちゃぐちゃにした人がいるって言ってたのは……」
「うむ、俺だ」
俺は顔を瞬時に作り変えて、馴染みのイケメン特撮俳優のガワになった。
声色ももとに戻す。
「なんで……なんでだよ……!!」
よし!
ローデスの精神が揺らいだ!
今のうちに解析しちまえ、ヘルガーディアン!
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