第29話 いいか、俺が守って女の子たちが後ろで見てるフォーメーションだ
砂漠に繰り出した俺、ファルメラ、アニタ。
「それにしても神様、おっきな盾だねー! 私が中に入っちゃいそう」
「アニタ十人分くらいの重さがあるからね」
「すごーい!」
アニタが担いでる斧も、アニタ三人分くらいの重さがあるよ。
「ですがリョウ様。重装備の戦士を装っているのならば、どうして鎧を全く身につけていないのですか?」
「鎧兜で顔が隠れちゃうからね……。それってやっぱこのイケメン顔には失礼だと思うんだ」
「すっごい盾と燃える槍を持ってて、後ろに普段着の神様だー!」
「ハハハ、我ながら凄いギャップだ」
三人で和気あいあいとしながら、砂漠をノシノシ歩く。
アニタは日傘を片手に、もう片手には斧。
日光にさえ当たらなければ、炎天下でも全然平気のようだ。
さっすがヴァンパイア。
あれ? ヴァンパイアってこんなに強靭だったっけ?
まあいいか。
この中で一番の軽装はファルメラだ。
姫騎士っぽい優美な姿に、輿には細い剣を下げている。
この剣、何かある度に俺がリメイクしたりして新しい素材をこっそり付け加えている。
ここに来る前に、アダマンタイトでコーティングしておいたぞ。
重さは倍くらいになってるはずだが、デーモンとなったファルメラは全く気付かない。
ということで、この三人、見た目は普通の人なのだが装備がいちいち頭がおかしい。
その本質に気付かないまま、アンドロスコルピオたちが釣られてくれないかなーと思うばかりだ。
昼間は出なかった。
ずーっと歩き続けて夜になった。
一切休まず、競歩かというくらいの速度で歩いているので、普通のキャラバンなら一週間くらいの道のりを踏破しているぞ。
「もうすぐ武装キャラバンのルートだ。この辺りで魔人の襲撃があればラッキーかなーと」
「あるものでしょうかね……?」
「アンドロスコルピオ側でも、人間の動向は探ってるんじゃないかと思うね。だって、資源が少ない砂漠だろう? 人間が外から持ってくる資材は喉から手が出るほど欲しいだろ」
「言われてみれば……」
まあ、俺の組織の連中みたいに、まともに食事すら必要ない連中である可能性もある。
だが、アンドロスコルピオはサソリの頭部から男の上半身が生えた魔人。
アルケニーは蜘蛛の頭部から女の上半身が生えた魔人だ。
「ものを食べてそうだよね。きっとそうだよ」
「それもそうですわね。では、敵を信じて待ちましょうか」
俺達が取り入ろうとしている人間もまた、俺等にとっては敵だけどね。
闇の中、とりあえずキャラバンの到着を待つ。
じっと待つ。
そうしたら、闇の中から幾つもの影が出現した。
音もなく砂を掻き、進んでくる者たちだ。
アンドロスコルピオ。
彼らは迷うことなくまっすぐ歩み、俺達の近くまでやって来た。
おや……?
気付かれてない……?
俺達が何の物音も立てず、ずっと突っ立ってるからか?
音で相手の動きを判断しているっぽいな。
「近づいてくる。人間どもの武装キャラバンだ」「捕らえるぞ」「獲物を我らの手に」
巨大なサソリの下半身と、鍛え上げられた人間の上半身。
そして棍棒やら槍やら、原始的な武器を手にしている。
本当に気付いてないっぽいなあ。
あっ。
アニタがなんだか笑い出しそうになってる。
我慢するんだ、我慢!
振り返ったら、ファルメラもなんか口を押さえている。
黙ってなきゃいけない時って、急に笑いたくなるもんなあ。
女子二人が笑いを必死に堪えている様だけで、俺はなんとも言えぬ充足感を覚えるのだが……。
ちなみに世の中には、女の子をくすぐるだけの叡智ゲームというものもあってだな……。
あれもまたいいものだ……。
しみじみ思い出に浸っていると、我慢の限界が来たアニタがブフーッと吹き出した。
「!?」「!?」「!?」「!?」「!?」「!?」「!?」「!?」「!?」「!?」「!?」「!?」「!?」「!?」
アンドロスコルピオたちが一斉にアニタに振り向く。
さぞやビックリしたことだろう。
「音も呼吸も、体温すら無かった場所にいきなり何者かが現れた!!」「なんだ!? なんだというのだ!」
これは奴らの気をそらさねばなるまい。
俺はそっとアンドロスコルピオの一人に顔を寄せると、耳の穴にフーっと息を吹きかけた。
「ウグワーッ!!」
驚愕のあまりサソリボディでひっくり返り、痙攣するアンドロスコルピオ!
どうやら耳は大変過敏な感覚器官だったらしい。
いきなりの耳フーは刺激的すぎたかな……?
もう動いていいと判断したファルメラは、スーッと息を吸い込んだ。
「わたくしたちは旅の戦士です! 魔人アンドロスコルピオ! ここで仕留めてみせますわーっ!!」
混乱する魔人たち。
だが、彼らも優れた戦士なのだ。
すぐに戦闘態勢になり、ファルメラやアニタ目掛けて武器を振り回す!
あるいはサソリのハサミが、尻尾が襲いかかる!
その間に、俺が割り込んだ。
「盾ガード!!」
カキーンっと全ての攻撃が跳ね返される。
「なにぃーっ!?」「音を吸収する何かが……ここにある……!!」
アンドロスコルピオたちは視力が弱く、音や振動、熱やニオイを辿って相手を捕捉するのだ。
なるほど、夜の世界で生きていくには最高の能力と言えよう。
だが、俺達全員、星明かり一つ無い完全な暗闇を見通す目を持っており、呼吸が不要で体温だって無いのだ。
さらにアダマンタイトの盾は、攻撃ばかりか音までも吸い込んでしまうらしい。
アンドロスコルピオの天敵みたいなものではないか。
「盾ガード! 後に……槍スラスト!」
俺は炎の槍をちくちくっと突いた。
見た目は長さ3m超の槍なのだが、俺がそもそも槍なんか扱ったことがないので、とてもヘボい突きになる。
さわさわっとアンドロスコルピオの体を撫でるにとどまった。
「ウグワーッ!?」「この攻撃、魔法を帯びているぞ!」「気をつけろ! 当たったら焼かれるぞ!!」
炎そのものを槍に成形しておいて本当に良かった!
俺、どうやら肉弾戦の才能がゼロみたい!!
「神様ー、私たち出よっか?」
「無理にわたくしたちを庇わなくてもいいのですよ?」
「そお? じゃあお願いしていいかな? あ、キャラバンが到着するまでは全滅させないようにね」
「まっかせて! えいやー!」
「善処しますわ! はあーっ!」
俺の影から飛び出してく二人。
強い強い。
「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」「ウグワーッ!?」
次々にアンドロスコルピオが打ち倒されていった。
まあ、さすがは魔人だけあって、一撃じゃ死なない。
ウグワーしながらも後退し、再生していく。
相手の数が多いから、なかなかトドメを刺しきれないな。
今回は、アンドロスコルピオの観察をメインにして、倒すのは次回にしたほうがいいかも知れない……。
ということろで……。
向こうからガラガラと馬車が走る音。
砂丘の彼方より、光が出現する。
武装キャラバンの到着だ。
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