第25話 一瞬だけ空から世界を睥睨するぞ
「ではリョウ様。こちらへ」
「なんだなんだ」
ステージの中心に導かれる俺だ。
そして、なんか狭いスペースに俺とカグツチがぎゅうぎゅう入る。
「狭い、狭いよ」
「我慢してください。ここは一人用で、バルログもこのような人間態にならねば使えぬ装置なのです」
「な、なんだってー!」
「かと言って、リョウ様お一人で打ち上げられても何も分からないでしょう。ここは我が説明役として同行すべきなのです」
「打ち上げ? 今打ち上げって言った!? ちょっと詳しく説明してもらっても」
「ゴー!!」
バカーンッ!!
マグマが間欠泉のように吹き出した!
空高く打ち上げられる俺とカグツチ!
「ウグワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!? なんじゃこりゃーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
「こうして翼では到達できぬ遥か上空から、世界の様子を見るわけです。ご覧あれ。我らバルログが、人間どもの国を攻め、領域を拡張していた理由です。この山が落とされても、一時退避して態勢を立て直せる土地が必要だったのですよ」
「なんで打ち上げられてから説明するんだ!? 事前に説明してくれたら良かったじゃないか! うおおおおまだまだ上がる! まだ上がる!」
「雲のある高さまで到達します。間違えると世界の外まで飛ばされますよ。愚かなバルログが一体、要領を間違えて二度と戻ってきませんでした」
「あぶなーい!! そんなもんに俺を乗せるんじゃなーい!!」
「ご覧あれ。ここからならファールディアはユグラース大陸の一部が見えます」
「一部!?」
俺は周囲を見回して理解した。
地平線と水平線が見える。
それが丸い。
この世界は、惑星なのだ。
そして俺がいるらしい、ユグラース大陸とやらは広い。
途切れること無く続く陸地が、地平線まで続いている。
まず、ボルカノ山から近いのは砂漠だ。
ピラミッドのような建物が幾つもあり、そのうちの一つがドン引きするくらいデカい。
さらに先に見えるのはステップ地帯か?
赤と緑が混じった土地が広がっている。
その一部に、都市が見えた。
さらに別方向にはヒマラヤか!? というくらい高い山々があり、山の半ばに寺院のようなものがある。
でかい寺院だ。
「あれはなあに」
「砂漠はアンドロスコルピオとアルケニーたちの住処です。かの者たちは炎への強い耐性を持ち、我らが攻め入るには分が悪い。砂で炎も消されてしまい、彼奴らは砂嵐を利用して近づいてきます」
「ほうほう、なかなか厄介と……」
「かの土地の人間どもは高度な国家を築き、アンドロスコルピオたちと戦っております。我らが攻めていた国とは強さの次元が違います」
「なんだって。人間も強いのがいるの?」
「おります。だからこそ、魔王オルトファースは人より出た戦士により、魂を砕かれたのです」
「ほえー、こんな強い力を持っていた魔王がなあ。それよりも強い人間とはなあ……」
恐らく、何か、この能力の攻略法があるに違いない。
あまりに強大な力に慢心した俺の前世は、そこを突かれて滅ぼされたと見た。
「砂漠の向こうはステップ地帯のようだが、あれは?」
「かの地には、人間としては恐るべき強さを誇る遊牧民の帝国があります」
「ほほー」
「亜竜を飼いならし、それを足にして大地を、低空を支配しております」
「馬じゃないんだ!? それは苦戦しそうだなあ……。じゃあ向こうの寺院とか」
「あれなるは、失われた神の力を再現することに成功した、人間どもの一派です。神造兵器なるものが存在し、これらは我らバルログをも容易に滅ぼします」
「ひえーっ!! バルログを仲間にしたら楽勝かと思ったら、この外は圧倒的に強いんじゃないか!! たまげたなあ」
その他、ステップの彼方にある湖には水魔たちの領域があり、山脈の方は寺院と隣り合わせに氷魔たちの城が存在していて、このどれもが極めて強力だと言う。
海は海で、シンカイの素になったような化け物がうようよいるらしい。
つまり、俺が降り立った場所はまさにスタート地点。
チュートリアル会場だったのだ!
カザン帝国、無茶苦茶弱かったんだなあ……。
ずっとバルログの脅威に晒されて、守りに入りまくってたから発展しなかったとか?
「おっ、そろそろ下降に入ります。飛行の準備を」
「オッケー」
俺とカグツチで、まったりと降りていった。
どんだけ高く飛んだんだ。
降りきるまでに10分以上掛かったぞ。
下ではファルメラとラッシュがポカーンとしながら見上げている。
他のバルログが、やんややんやと騒ぎながら出迎えてくれた。
「みんな、世界ヤバいぞ。俺達が今までぶいぶい言わせてきた世界なんか弱いもんだ」
「そうだったのですか!? というか、わたくし、リョウ様が打ち上げられてからあまりの事にずっと思考停止していましたわ」
「俺もびっくりしたもんな。気持ちは分かる」
『ほわあああ、世界は広かったのですな!? 何が起こっているのか……』
「そうだな、何ていうか……。たまたま俺が降臨した場所が一番弱い世界で、そこにカザン帝国とボルカノバーグが蓋をしてた。で、外の世界はお互い争いあって、めちゃくちゃ進化してたみたいな感じだな」
『ひえええ、わしは一瞬で蹴散らされてしまいそうですぞ』
「気をつけろよラッシュ。付き合い長い仲間が死んだら俺も凹むからな。リサイクルできなさそうなやられ方しそうじゃん」
戦々恐々とする俺達なのだった。
何せ、外の世界がどれだけ強力なのかが分からないからね。
未知というのは怖い。
ここは慎重に動きながら、作戦を練っていかねばな……。
「リョウ様、慎重すぎでは……? 我をも一蹴するほどの強さ。あれは普通に外の世界でも通用するかと……」
「通用しなかったら困るだろー! ちょっとな、人間世界に潜り込んで、もう少し情報収集した方がいい気がする」
「さいですか。ですが、圧倒的な力を持ちながらもその慎重さ。以前の魔王よりも、恐らくあなたの方がずっと強く、恐ろしい……。一切の慢心が無い強者ですから」
「凄く褒めてくれるじゃん!」
俺はちょっといい気分になるのだった。
それはそうと、次にどこに行き、どう行動するか。
この作戦会議が必要だろう。
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